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ところにより吹雪になるでしょう

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大学生/冬/栄口



 開けた扉の隙間へ白い粉がどさどさと広さを求め押し入ってきた。ドアがいつもより重いような気がしたのは多分このせいだ。数十センチから見える景色は白とグレーしかなく、栄口はそこからひょっこりと顔を出し、辺りを見回してすぐ後悔した。
 確かに昨日の天気予報は雪が降ることを告げていたが、ここまでのスケールだとは聞いていない。去年は少し、今年もちらほらと降っていたから、埼玉生まれ埼玉育ちの自分にとっても雪なんてもう珍しいものではないとたかをくくっていたらこのザマだ。軽く膝の下まで白いものに埋め尽くされている光景にたじろぎ、足が前に進まない。
 埼玉では見たことがないでかい雪の粒が街の色をすべて消すように降りしきっている。向かいのアパートの屋根に降り積もった雪がドカドカというけたましい音と共に塀の中へ滑り落ちてきた。
 栄口はとりあえず冷静になるために扉を閉めた。学校へ行けるんだろうか、というか家から出られるんだろうか。去年が暖冬だったせいもあって、突然現れた雪国の冬にどう立ち向かっていけばいいのか怯むが、狭い玄関で呆然としている間にも時間は過ぎてしまう。今日自転車で出かけるのは自殺行為だろうとビニール傘を手に取り、ジャケットの襟をきつく閉めて外に出た。誰がつけたのかわからないが、ずいぶん深い足跡が積もった雪を踏みしだき道路まで伸びている。栄口もまたその足跡をたどりながらよろよろと脚を伸ばす。
(……長靴が欲しい)
 人生二十年、こんなにも強く長靴を欲したことはなかった。足跡が途切れたところで、雪の塊がアパートと道路を隔て縁石のようにどこまでも連なっている。それをよいしょと飛び越え、ようやく道路までたどり着くとスニーカーとひざ下がすっかり雪まみれになっていた。
 はぁ、とこぼれたため息に栄口は学校の方角を見渡す。見慣れた景色なのに、家も道路も街路樹も一様に白で覆い尽くされ、まるで違う町に来てしまったようだった。吐く息は白いが周りはもっと白い。差したビニール傘に雪が降り積もってあっという間に重くなり、栄口が柄を傾けると雪は傾斜に逆らうことなくずるずると滑っていった。これだけ積もっているからてっきりすごく寒いと身構えていたが、やわらかな湿度が辺りを覆っているせいか思ったよりそうでもなかった。少なくとも刺すような冷気がたちこめる冬の埼玉の朝よりは全然マシだった。