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ところにより吹雪になるでしょう

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大学生/冬/水谷1



 購買へと続く長い廊下を、あの頃気に入っていたカーディガンのポケットに手を突っ込んで歩いていた。かかとを潰した上履きが脱げ、ばつが悪く振り返ったその先、廊下の切れ端で軽く手を振っている。小走りしながら駆け寄ってきた栄口が、こんなに寒いのに冷えたいちご牛乳を買おうとしているオレをいつものように笑う。
「冷え性のくせにそんなのばっか飲んで」
 せめてもっと暖かいものを、と提案する栄口に従って別の自動販売機からココアを選んだ。
「それうまいの?」
「オレは好き〜」
 あまりにも手に持った缶をまじまじと見つめてくるのでオレは既に口の付けたココアを差し出し、「飲む?」と聞いた。一瞬ためらった栄口だけどどんな味か惹かれるらしく、軽く礼を述べた後それを一口飲んだ。
「甘い」
 栄口はオレの好きな食べ物全部にそういう反応を返す。この前は最近お気に入りの曲にですら「甘ったるい」と笑われ、それに続けて「でもオレも好き」って言ったんだった。オレはつい嬉しくなって、特に気に入っているサビの部分を軽く歌ってしまったら、隣で栄口は目を細めていた。許す笑顔に勘違いをしてはいけないと夏に嫌というほど思い知らされたのに、オレの気持ちはいつだって浮ついている。
 隣にいられるのはあとどれくらいなんだろう。栄口の希望進学先はオレと同じじゃないけれど、大体が自分のそれと離れていなかった。ひとつだけある遠い所に行ってしまわない限り、大学生になってもまだ大丈夫なのかもしれない。高校生のときと同じようにこっちからしつこく連絡を取ってさえいればおそらく。でもオレの求めているものと栄口が寄せている感情は違いすぎているから、やり切れない思いをすることは確定済みだった。
 もう少しであの曲が入ったアルバムが出る。そしたら約束していたとおり一番先に栄口へ貸そう。