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ところにより吹雪になるでしょう

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大学生/冬/水谷2


 駅員はぐるりと遠くを指し、この住所はあちらのほうです、と教えてくれた。歩いても行けるがバスで行ったほうがいい、その言葉が意味することを駅から出た瞬間知る。
 街の色という色を打ち消さんとばかりに降りしきる白い粒に、水谷は本当に栄口を見つけられるか不安になった。折りしも夜の気配がその白を青く染めつつある。
 腰ほどの高さに降り積もった雪壁が細い路地を作り、水谷をバスターミナルまで誘導する。目を凝らして確認した時刻表のスカスカ具合にまた気持ちが怯む。
(ほ、ほんとにここって人住んでんのか?)
 バスを待つ間に熱意が冷えてしまいそうで、とにかく水谷は歩き出した。大学の方向に向かって進み、途中人やコンビニで道を聞けばいい。
 勢いに任せて動いたはいいものの思っていたより雪はすさまじかった。どの屋根もこんもりと厚く覆われ、白の落とす影で街が灰色ががっている。このへんは道路が白く舗装されているんだなと驚いていたが、コンビニ前のスプリンクラーが温水を撒いているのを見たとき、初めてそれが踏みしめられた雪だということに気づいた。溶けて泥にまみれたあたりの境界は曖昧だがどう見ても五センチはある。いくらなんでもこれは気が滅入らないだろうか、水谷は二年もここにいる栄口のことが心配になった。
 電車に乗る前に電話を一回、メールを一通、ここに着いてから再び電話を一回したのだが未だ栄口から応答はない。昔の自分ならそれで挫けてしまっていただろうけど、今は確かめたいことがあるから強くなれる。無視されているなら尚更その理由を知りたい。
 コンビニの店員がこの住所はすぐ裏であることを教えてくれたから傘は買わず、その代わりに暖かいココアをレジへ出した。それを飲みながら水谷はふと思う。ものすごく遠いと諦めていた距離だったのに、いざ行こうと決意したら電車に揺られて数時間経過するだけだった。一日二十四時間に二年分の七百三十日をかけるときっととんでもない数字になる。二人を隔てていた距離と長い間悩んでいた時間を今日のたった数時間を照らし合わせるととても不釣合いで不思議な感覚がした。