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物体もじ。
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ロックマンシリーズ詰め合わせ

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05/雨 (ロックマンエグゼ・炎熱)



 しとしとしと、という擬音を思いついたのは、一体いつの時代の人間なのだろう。

 まあ、言われれば納得出来るくらいにぴったりの表現だと言うのは確かなのだけれど。



「止まね〜……」

「止まないな」



 梅雨だし。


 窓の外を見ては眉をしかめる熱斗に対し、湯気の立つカップから昇る香りを楽しむ炎山は、涼しい顔で応える。

 いっそ傘も破らんばかりにざあざあと降れば熱斗の好みに合うのかもしれないけれど、そんなスコールのような雨は、ニホンでは余程に南に行かなければ望めないだろう。


 炎山としては、別に雨は嫌いではない。雨が降るからこそ見込める経済効果というのも存在しているわけだし。

 そんなことを言えば、「これだからいつでもリムジン移動の副社長は〜」と嫌味を言われてしまうのは数分前にすでに立証済みだから、もう言わないことにしたけれど。


 そんなことは置いておくにしても、こうやって、雨の日に二人、屋根の下でゆっくりと過ごすというのは、なかなかに贅沢な時間の費(つか)い方だと思う。

 それでも、不機嫌そうに窓の外を睨みつける少年には、歩き回るのに不便だとしか思われないようで、それも彼らしいと薄く笑みを浮かべる。

 
 天気のせいか時間のせいか、それとも落ち着いた店構えのためなのか、他に客のいない喫茶店で雨宿り。テーブルに載るのはコーヒーとココアの白いカップに小さな皿に盛られた香ばしい焼き菓子。

 こんな雰囲気も炎山は好きなのだけれど、基本的にじっとしていられない性分の熱斗にとっては、少しばかり退屈かもしれない。

 窓の外を見てばかりの彼に、少しばかり笑みにコーヒーのような苦さを混ざらせて、さて、と考える。


 会話の途切れた空間に、どこかで聞き覚えのあるやさしい音楽が、かすかに流れた。



「……Rainy days never say goodbye……」

「―――え? なに、炎山何か言った?」

「Used to say I like Chopin Love me now and again」

「………………嫌がらせかよ……?」

「今流れている曲だ」

「はい?」



 口ずさむ英語の歌詞。軽く指を立てて示せば、しばし大人しく耳を傾けて、結局熱斗は首を振る。



「知んねー。ってか、外国の歌だろ?」

「一応この国の歌手もカバーしていたはずだが」

「え〜?」

「まあ、古いものだからお前が知らなくても不思議はないが……確か邦訳の方はかなりの人気だったはずだ。原曲よりも、な」



 やさしいメロディと、単純な歌詞。どうして覚えているのかと言えば、恐らく、そのタイトルが少しばかり変わっていたからだろう。



「雨音はショパンの調べ……か」



 何故だろうと思い、原詩を検索して、さらに首をひねった記憶がある。翻訳というものを全面的に信用はしなくなったのは、確かこの歌がきっかけではなかっただろうか。

 まあ、芸術、なんてものが関わっているからなのだ、というのも早々に理解したけれど。


 今、脳裏に浮かぶのは、ヒットしたという邦訳のほうではなく、原詩のほう。多くの国々で、さまざまに訳されたごくごくシンプルな言葉たち。

 何やら難しい顔をして、斜め上を見上げている熱斗を見て、口唇に乗せてみる。



「Rainy days growing in your eyes
Tell me where's my way」

「炎山?」



 外は、雨。君の瞳に映りゆくのは―――

 ねえ、教えて。僕はどうしたらいいのか。



「気にするな。独り言だ」

「気になるに決まってんだろ。何だよ?」

「知りたいのか?」

「おう!」



 ちょうど終わって、次の曲に入るBGM。

 店内に他に客はおらず、店の主人も大人しい子ども二人に注意など払ってはいないだろう。

 雨に煙るガラスの向こうになら、まあ、構いはしない。


 にこりと笑って右手で引き寄せ、耳元に軽く口唇で触れた。



「んなっ」

「つまり、こういうことだ」



 雨ばかり見ていないで。

 つまり、こちらを―――