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物体もじ。
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ロックマンシリーズ詰め合わせ

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07/携帯電話 (ロックマンエグゼ・炎山→熱斗)



 首輪のようだと、実は思ったものだ。



 そして、実際それは自分にとっては一面すごく正しい考えであって、だから、ずっとその印象を拭えないまま、これまで自分は生きてきたのだろう、と炎山は思う。

 だから、そう……彼についても、そんなふうに考えてしまうのだろうか。


 こんなものは、彼には相応しくないのに。



「……出ない」



 ぽつりとつぶやく声をブルースは聞いているだろうが、賢明にも反応はしない。

 正解だ。今は、何か迂闊なことを言われたら理不尽な八つ当たりさえしてしまいそうな気がしている。


 無感動に流れる自動音声を聞いていることが不快で、ボタンを押してぷつりと切った。

 椅子に背を預けてため息をつく。



『ただ今、お繋ぎできません』



 腹が立つほどに滑らかな音声の意味するところは、つまり「話し中」。

 どれだけ科学技術が発達しようとも、音声伝達機能……つまるところ、電話というシステムの根本的な部分は変わらない。

 時に嬉しく、時に信じられないほどに許しがたい、ホットライン。


 多人数通話なるものも実用化されて久しいが、それでもPET同士がオート電話の最中で、彼らにその気がなければ、そこに割り込んでいくことは不可能のまま。


 もちろん、彼にそんなつもりがないことは分かっている。

 話し相手は恐らく同じ小学校の幼馴染みか、クラスメイトか。他愛もないお喋りをしているというそれだけのことだろう。

 それに文句を言う権利も、理由も、あるはずないのに、思ってしまう自分は、ずいぶんと傲慢な人間なのだな、と思う。



「俺が……勝手なだけなんだ……」



 ふと、気づいたとき。


 自分が、彼のPETのアドレスを、いつでもどこでも彼に連絡を取る手段を持っていると気づいたとき。どれだけ嬉しかっただろう。

 もし、彼の声が聞きたいならば。彼の顔が見たいならば。

 例え電波に変換されたデータであっても、いつでもそれが叶うのだと気づいて、どれだけの幸福を感じただろう。

 何の気もなしに彼の連絡先を入手していたかつての自分を力の限り褒め称えたいと思ったものだ。


 それが、今や。それが、重くて、切なくて、たまらない。


 いつでも連絡を取ることは出来る。

 けれど、それが、「叶わなかった」なら?

 自分はそれを望み、彼へと電波を飛ばすのに、彼がそれを受け取ってくれなかったならば。

 悪意でも自分への隔意でもなく、ただ単にタイミングが合わない、それですら自分は身を焦がすほどの苦痛を感じてしまう。


 最後には、彼を憎らしくさえ思ってしまう。


 わかっている。彼は何も悪くない。おかしいのは、自分なのだ。PETは首輪ではない。繋がれているべき理由なんて、彼にはない。

 いつでも繋げるというのはただの権利であって、それに必ず応える義務は相手にはないし、そう主張する資格だって、きっと自分にはない。


 そう、最初に、自分がそう思ってしまっていたから、こんな傲慢な我が侭が浮かんでくるんだろうと、炎山は思う。


 首輪ではない。いつでも繋げるというのは、誰かを縛り付けるようなものではない。

 だから、彼は自由だし、



 炎山だって、自由だ。



「…………いっそ、本当に首輪だってかまわない」



 彼を繋ぐなんて、大それた望みが叶わなかったとしても。

 彼が、自分を繋いでくれれば、それでもいいとすら、今は思うのに。


 ナビは沈黙を守ったまま、赤いPETが手の中で大人しくもてあそばれている。じっと視線を注いで、終いには可笑しくなった。


 たかだか商品のひとつに、どうしてこうも振り回されてしまうのか。

 彼と繋がる手段だから。

 彼と繋がる生命線だから。

 こんな感情をぶつけられては、道具に過ぎないPETも、その中で自分を助けてくれるパートナーも、困るだけだろうに。


 因果な性分であり、過去だと、苦く嘆息する。


 ちらりと見上げた時計は、先ほどボタンを押してから、ほんの30度ほど長い針を動かしていた。



 もういいだろうか、と考えて。




 もう一度、炎山は通話ボタンを押してみた。