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SLAMDUNK 7×14 作品

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たとえばの話-連載2-









俺と三井サンに足りないものって、コミュニケーションだと思うんだ。




いきなり宮城は切り出した。
だからもっと話をしようよ、と。二人で昼休みの屋上へと向かう。
いっぱいしゃべろうね、と宮城はやる気だ。
コイツと全国制覇を誓ってからも、やっぱり俺たちには微妙な雰囲気がある。
何を話して良いか分からないというのが正直なところで。
好きな音楽とか、好きな映画とか、好きな人とか。
そういう話を宮城とするのって、おかしくないか?
しかも二人で。
ここは強調しておくトコだと思う。
二人で、だ!
確かに同じ部活の先輩・後輩だし、ガード同士だし、話すことはいいことだ。
お互いの性格が分かれば、プレイ中も役立つことがあるだろう。

アンタの癖とか、知っときたくて。

宮城はそう言うが、コート上の癖と、普段の癖と、何の関係が…?
ポイントガードもできる俺は(自画自賛)、そこら辺のことは分かってるつもりなんだけど。
やっぱり、理解しがたい。

食堂で買ってきたパンと、揚げたてのカラアゲとポテトを持って、貯水塔の影の下へと座り込む。
ここは入口からだと見えにくいから、俺の結構お気に入りの場所だ。
何も言う前にあっさりとその場所を選んだ宮城に、嬉しい気分になった。
なあ。思うに、俺たちって案外似てるんじゃないかな。

「ほんと、二人になると急に静かになるんだもんね」
パンの袋を開けながら、言葉の意味が分からなくて顔を上げると、呆れたような顔をしている宮城と目が合った。
「教室では普通に話するんでしょ?」
普通、の定義がよく分からないけれど。
「まあ、話すよ」
「前の席のヤツと、仲いいの?」
「聞いてくる意味がわかんねー」
だから何だ、オマエは俺の交友関係を気にする母親かっての。
「ゴメン、今のは確かにオレがおかしかった。アンタの友達のコト勘ぐったって、始まらないもんね」
「はあ? 何言ってんのオマエ。大丈夫か?」
はー、と長いため息の後、宮城は言った。
「正直、自分でも分かんないス。ただ、アンタのこともっと知りたいと、思っちまうんスよ」
うわっ、恥ずかしい!
なんだソレ! めっちゃ恥ずかしい!!
「や、やめろよ宮城。なんかキモチワリーぞっっ」
耳まで熱を持ってしまったのが、自分でも分かった。頭の芯が、がーんがーんと疼いている。
「自覚はあるよ。オレは今、相当キモチワルイ状態なんだよ。アンタと仲良くなって、アンタとバスケをして、アンタと全国に行くんだ。そんでもって、アンタと同じ大学にいって、また二人でコンビ組んで、アンタと…」
「うわああぁぁぁ―――――!!!!!」
最後まで聞いていられなくて、絶叫した。
コイツ、狂ってる! イカレてるよ、完全に!!
「なんでこの俺がテメーごときと大学まで一緒に行かなきゃなんねーんだよっ。身の程を知れっ、分をわきまえろっっ」
頼むから…。最後のほうは小声になってしまう。と、宮城が吹き出した。
「ぷっ、冗談に決まってんじゃン! ひひ、なんで、アンタとそこまで…。ぎゃはは、あんまり笑わせないでよ」
なに…?
「もう、真っ赤になっちまって、ありえねー! そんなに恥ずかしがって、必死なんだもん。あはははははは、腹がイテェ」
冗談…? から、かわ、れた、??
ぶちっと。何かが切れる音がした。
「……いい度胸じゃねーかよ、宮城ィ……」
もう一回歯を折られたいみたいだな。望みどおりにしてやるよ。

しかし、からかわれた怒りは瞬間に飛んで消えた。
掴みかかった宮城が、さっきまでが嘘みたいに穏やかな目をしていたからだ。
細めた目で、こそばそうに笑う口元が、良かった、と呟く。
「初めて、アンタとまともに話した気がする」
そんなこと無い、と言いかけて止めた。
確かに、宮城とバカ話するのなんて、初めてかもしれない。

だって俺らって、気まずかったよな?
殴り合って、病院送りになって、バスケからお前を遠ざけたんだ。
背は低いけど、確かな実力を持った期待の1年生。
そんな宮城が目障りだったから。
できなくなっちまえばいいと思った、バスケなんて。
そんな風に散々振り回して、引っ掻き回した俺に、宮城は声をかけてくれた。お前たちは受け入れてくれた。
謝って済む問題ではないことは分かってる。自分がどれだけバスケ部に迷惑をかけたのかも、理解している。
だからこそ、きっかけが掴めなかった。どうしていいか分かんなくてさ。
俺とオマエの距離を、縮めようとはしてなかった。
そのうち何とかなるだろうって、後回しにして。
ま、パスも通るし、しばらくはいいだろうって思って。
けれど宮城は、最初からきっかけを用意してくれていた。
俺の、ため…?

「三井サン」

宮城が俺を呼ぶ独特のイントネーションに、少し慣れてきた。
あれから俺たちの距離、縮まったと思っていいんだよな?



「飯くわねーと、昼休みが終わっちまうぜ。俺は昼寝もしたいんだから」
きょとんとした宮城だったが、すぐにいつもの生意気な後輩の顔で言った。
「昼寝なんかして授業に遅れたら、卒業がまずいんじゃないですか?」
パンを口に詰め込みながら、宮城に目線を送る。
「オマエが起こしてくれんだろ。これからも、俺が遅れないように」
困ったような顔をしたアイツは、やれやれ、と肩をすくめた。
「話は、時間かけてゆっくりでいいんじゃね?」
そう言ってやると、参った、と宮城は言った。
勝った、と俺は言う。




屋上でのお昼休みは、俺たちの日課になった。



















作品名:SLAMDUNK 7×14 作品 作家名:鎖霧