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caramel

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第二章第1話




廊下でその姿を見つけた時は少し笑ってしまった。
只でさえ小さい体を小さくちぢこめているから。
腹でも痛いのか?と軽い気持ちで声をかけた。
聞こえなかったのか、反応のないその子供の顔を斜め後ろからそっと覗き込むと、言葉が一瞬消えた。

なんて切なくて、なんて悲しくて・・・

それはいつもの彼らしくなく、でもきっとこの子供はそれをずっと必死で隠してきたのだろう。
俺は気付かないフリをして声をかけた。
気付いてもらえるように肩に手を置いて。

「うわっ!!」

案の定、驚いた声をあげた。
だが、俺の顔もたいがい隠し事が出来ないのだろう。
大丈夫か?と答えると、申し訳なさそうに平気と返ってきた。
そして寝不足と言った。

それは俺にとってもありがたかった。
『いつも通り』が出来るから。
そしてその『いつも通り』を俺は続けた。
だが、その続け方を俺は間違ってしまった。

「そんなの優しさじゃねぇよっっ!!!!!!!」

「おっおい大将!?」

「・・・余計辛いだけじゃん、」

「・・・・エド。」

「そんなのは優しさじゃないっ・・」

それは切なく苦しい叫びだった。
まるで俺よりも辛そうで・・いや辛いんだろうな。

「・・・まぁ、そうだな。」

「・・・・っ・・」

「来い、大将。」


泣いてるような肩、だが涙が出ない瞳。
俺は俺の特等席に招待した。

もう気付かないフリは出来ない。



「・・・泣きたいとき、大声だしたいとき、一人になりたいとき、どんな時でもここはお前の場所だ。」

「・・少尉?」

「二人の秘密基地な。」


俺だけの空間だった。
俺だけが知っていて、俺だけが使える。

以前屋上が使えたらどんなに良いか、それを延々と大佐や中尉に語った。
屋上は憧れが詰まっている。
青空を見上げながら吸う煙草は格別なんだと。

そして俺の誕生日に大佐はお手製の合鍵をくれた。
今でも笑えることだが、「何の冗談でどこの鍵なんすか、変態。」と返事をしたのを覚えてる。
なんとか炎を逃れてよくよく聞くと、それは屋上の鍵だった。
どうせ使わないから大丈夫だろうと、お前の話を聞くのはうんざりだと。
横で中尉が良かったわねと珍しく笑っていた。
おそらく中尉が提案したことなんだろう。


それから俺は気分が良い時も、悪い時も、空いた時間はここで過ごす。
灰皿、ベンチ、空、それ以外は何も無いこの空間がたまらなく好きだった。
一人で過ごせる最高の場所だが、俺は他に思いつかなかった。

あんな顔の大将の悩みを解決する術も、
元気づけられるような言葉も、俺には思いつかなかったから。


ベンチに座り、俺はタバコを取り出した。
普段は吸わないが、ここでは我慢が利かない。

「悪ぃな」

「背が伸びなかったら少尉のせい。」


吸ってもいいともとれるその言葉がおかしかった。
俺の吐き出した煙が流れていく。
見慣れた光景だが、大将には少し珍しかったみたいだった。
俺は嫌な顔をされなかったことにホッとした。


それからは互いに黙ってた。
大将にはこういう時間がきっと必要だろうと思ったから、何も言わなかった。
その間に俺も俺で考えていた。

大将のあの顔の原因――

あんなところでしゃがみこんでいたってことは、この司令部内で何かがあったって事。
今朝は確か大佐と中尉が迎えにいったはずだ。

大佐と中尉が原因か?
もしくはそのどちらか・・・

作品名:caramel 作家名:おこた