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caramel

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第3話







まだ頬の熱が冷めていない。
それでも反射的に返事をしてしまったからには、すぐに行かないと。


そう思って廊下に出ると、
大佐が司令室のドアを開けて待っていた。
悪いと思って駆け寄ったが、大佐の視線は俺に向いてはいなかった。


大佐の視線をたどるとその先には、
アルや皆とお菓子やお茶を飲みながら楽しそうにしてる中尉が居た。
もう一度大佐を見ると、そこには知らない奴が居た。

中尉を優しい眼差しで見てる大佐。
俺はこんな優しい眼をする大佐を知らない。
こんな優しい視線俺に向けられたことは一度も無い。

きっとこの顔は中尉だけが知ってる顔。
この顔を正面から見られるのは中尉だけ。
俺の醜い心が騒ぎ出す。


俺はそっとさっき撫でられた頭を触ってみた。
そこはもう冷たくなっていた。
なんだか心が冷えたような感覚だった。


「大佐。」

「あぁ、やっと来たか。」


俺の声に気づいて振り返った顔は、もういつもの顔。

なごりでもいいから…
さっきみたいな眼で俺を見てほしかった…なんてな。


「さっエドワード君もお菓子どうぞ。」

「ありがとう中尉。」


俺はドアを開けていた大佐を押しやって中に入る。
アルの隣に陣取り。
なかばヤケになってお菓子を食べた。

今見た大佐の横顔が頭から離れない。
悔しくて、苦しいから、見なかったことにしたいのに。
お菓子の味がしなかった。


だけど、美味しいよ中尉、
ありがとうって言って無理やり作った笑顔を向けると、
俺の勢いに多少驚いていた中尉も良かったと微笑んでくれた。



敵わないよ。


綺麗だなって思う。
大佐が惚れるのも仕方ないなって。
それでいて優しいし、仕事は出来るし…女だし。


俺が女だったらなんて馬鹿なことも考えたけど、きっと女でも中尉には敵わない。
むしろ、今では男で良かったと思ってる。
だってきっと男だったから、この距離に居られる。

大佐は女好きだけど、しっかり境界線をひいてる。
本当の自分は絶対に見せない。
中尉以外には絶対に。


大佐にとって中尉は特別なんだ。




大佐にとって俺はなんなんだろう。



作品名:caramel 作家名:おこた