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青エク集

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往生しますよ(志摩燐)


「起きたらすでにこうだったんだ・・・」

燐は茫然とした様子でつぶやくように言った。

「何でですやろなー?で、若先生には?」
「いや・・・雪男にはバレないようにこっそり出てきた。」
「何でですのん?」
「っだって恥ずかしいだろ!?」

燐は頬を赤らめて困ったように俯いた。
その様子を見た志摩は内心で意味もなくガッツポーズをした。
なんてゆうか、こんな姿を見せてくれてありがとう神様、的な。


今朝見かけた燐の様子がおかしいと思った志摩は、休み時間に燐の教室に出向いて、大丈夫か、と声をかけに行ったのであった。好きな相手だ、やはりどうしたって気になる。
すると燐は一瞬嬉しそうな顔をしたかと思えばまた困ったように俯いたり、とやはり様子がおかしい。
そこで志摩は、ちょっと、と半ば強引に燐を教室から連れ出し、校舎の屋上まで引っ張ってきた。
そうして隅に座りこむ。

「さて、ここなら誰も来ぃひんな。」
「なんなんだよ志摩!!こんなところまで!!」
「いやぁー奥村くんの様子がどう見てもおかしいですやん?気になっ・・・」
「やっぱバレたんか!?くそっ、分からないようにしたのになーっ。なんでだよ、胸、やっぱこれでも膨らんでるんか?」

志摩を遮り焦ったように言った燐の台詞に志摩は首をかしげた。
なんかおかしなコト、言わへんかった?今?

「・・・え?」
「だからー胸だよ、胸!!」
「・・・え?」

相変わらず顔だけはニッコリと、だがまったくもって固まっている志摩に、今度は燐が首をかしげる。

「って、あれ?お前、俺が女になったって分かったんじゃ・・・?」
「っはぁぁぁぁぁーーー!!??」

顎がはずれるかといった志摩の様子に一瞬笑いそうになったが、次の瞬間燐も叫んだ。

「ってなんだよーーーー!!バレてねぇんじゃん!!ちきしょぉー!!」

しばらく2人とも動揺が隠せない様子だったが、その後、冒頭に戻る。


「ほんま変な話やな。悪魔となんか関係でもあるんかな・・・?なんも原因分からんまま、起きたら女の子の体になっとるとか。いやーなんか羨ましい。」
「バカいうな。なにが羨ましいんだよ。お前にうつせるもんならうつしてやりてぇ。」

ふざけんな、と拗ねたように言う燐がまた可愛い。
それに・・・改めて燐をよく見れば・・・やはり全体的になんだか丸みをおびてないか?
志摩は思った。
そしてニヤリ、と密かに笑う。

「なあ、奥村くん?」
「なんだよ?」
「奥村くんて、俺のコト、好きですやんね?」
「なっ、なんだよいきなり!?」

その問いに対して、燐が赤くなる。

「いや・・・。ほら、いきなりそんな事になった訳やしね、何事もやってみな分からへんですしね、もしからしたら・・・」
「え?なんだよ、って、いきなりなにすんだよ!?」

志摩は、何だ?と志摩に近づけた燐の顔と体をそのまま引きよせ、正面に向かい合うような形で膝にのせた。
途端、燐は焦ったように顔を朱にそめる。
志摩はそんな燐を愛しく思いつつ左手を燐の背中にまわし、右手で燐の後頭部を持ち、さらに引きよせた。

「っんぅ」

最初は啄ばむように、そしてだんだんと深く、燐をむさぼるように味わう。
志摩はしばらくしてようやく唇を離すと、赤く頬を染め、息を軽くはずませた燐を見つめた。

「な・・・に、すんだ、よ・・・」
「んー?いやー、ものは試し。一回したら、元にもどるかも、かな?て」
「ん・・・マ、ジか・・・よ・・・?」


・・・

・・・


「って治ってねぇじゃん!!」

まだ体を合わせた余韻でか、艶っぽい顔と声の燐が叫んだ。
「あーやっぱあかんかったか。」
「やっぱってなんだよ!!くそっ、もどるかもって言葉にすがって恥ずかしいのにこんなところでお前のするがままだったってのにーっ。」

燐はさらに顔を赤らめて志摩に殴りかかった。

「ちょ、殴んのはやめて、奥村くんの力は例え女性の姿であっても底なしやろから。ごめんて。まあ、とりあえず、その服の乱れ、もとにもどしましょ、やないと俺、また我慢が・・・」
「ばっ・・・なに言ってんだ・・・」
「ほんと、何言ってるんですかねぇ?」

今ここで聞くはずのない声を耳にして2人は一瞬かたまった。

「ゆ・・・雪男!?お前、どうして・・・?」
「兄さんこそ、なんでそんな重要な事、僕に隠して・・・。それよりも・・・志摩くん?・・・・・・覚悟はいいか・・・?」

そこにはそれはそれは素敵な笑顔の雪男がいた。
作品名:青エク集 作家名:かなみ