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ミニ☆ドラ

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4章 ダドリー家の朝



ダイニングルームでハリーだけがバタバタと忙しそうに働いていた。

「ミルクはまだ?」
「はい、ただ今」
「温めて砂糖を少し入れたのにしてちょうだい」
叔母のリクエストに冷蔵庫からミルクパックを取り出すと、小鍋に移し変えてガスに火をつける。

しかも彼と同い年である従兄弟ですら、上から目線の命令口調で呼びかけてくる始末だ。
「ジャム持って来いよ、ハリー。あっ、イチゴのジャムだから。それとピーナッツバターも、いっしょにな!」
大人しく言われるままに棚に入っているふたつの瓶を両手に持って、テーブルのほうへと持っていく。

それをダドリーの前に置いた。
「お前なんだよ、バターナイフは?あれがないとパンに塗れないじゃないか。まったく気が利かないヤツだな」
礼のひとつもなく、さも当然とばかりに受け取りながら、まだ文句を言い続ける。
「ああ、ゴメン」
ハリーはまたすぐキッチンに戻って、それを持ってきて渡した。

小走りでキッチンへ戻ると、煮た立ったミルクが泡のように盛り上がり、派手に鍋から吹きこぼれている。
(ああ、まずい!)
慌ててガスを止めようとして沸騰したミルクで、手の甲を少し火傷をして顔をしかめた。
水でそれを冷やす暇もなく、またハリーは呼ばれる。

今度は右手にホットミルクのカップを持ち、左手にはサラダだ。
それを持っていくと、やれ次はトングがないだの、取り皿がないなど、次々と注文が入る。
そのたびにハリーは二つの部屋を行ったり来たりしていた。

何か言われるたびに「ハイ!」と素直に返事をして、その注文を次々とこなしていく。
忙しさのあまり眼鏡が少しずれているのにに気づかず、真冬だというのに鼻先に薄っすらと汗までかいていた。

その様子をドラコはカーテンレールの上に座ってじっと見ていた。
(……これは相当ひどいな)
イライラと眉間にシワを寄せてドラコはうなる。

(必要なものがあるなら、アイツらが自分で取りに行ったらいいだけじゃないか!これ以上、ハリーに命令するなっ!!)
まるで自分のことのように怒りが腹の底から湧いてくるようだ。

今朝も目覚ましを勝手に止めてしまった件でこっぴどく叱られたというのに、それでもハリーがまるで召使のように使われていることが我慢ならなかった。
(ハリーをいじめるな!やたら、こき使うなっ!)
テーブルにのうのうと座って動こうとしない叔母家族をにらみつける。

(――まず、髪の毛が薄そうなデップリとした、おっさん!新聞なんか読まずに、ちゃんと動け。偉そうなチョビ髭なんか付けやがって!そんなバターたっぷりのトーストなんかかじるより、まず動け!コレステロールが溜まって、なんだそのお腹は?!!脂肪たっぷりで、ベルトが今にも、はちきれそうじゃないか!)

(その横で、優雅にミルクを飲んでいる場合か、このオバハンっ!神経質そうなことばかり言いやがって。パンは2cmにスライスしろだの、チーズは三角で、サラダドレッシングはビネガーを多めにって、注文が多すぎるんだよっ!あんた、自分の子供の世話ばかりせずに、ちゃんと家事をしろっ!)

(最後にそこの子デブっ!そんなにむしゃむしゃ食うなっ!まるでボンレスハムが椅子に座っているようだぞっ!しかもテレビばかり見て、パンくずをポロポロこぼしやがって。ママにパンにジャムを塗ってもらって食べるなんて、テメーは3歳のガキかっ!このウスノロ!)

貴族のお坊ちゃん育ちとはとうてい思えないほどのガラの悪さで、ドラコは小声で毒づいていた。
チョイと杖でも振ってあの小ブタちゃんの持っているコップを滑らせてやろうかと思う。
でもきっと、こぼれたジュースを拭くのはハリーの仕事になるのが目に見えているので、魔法使いはいたずらするのをぐっと思いとどまった。

ハリーがキッチンに戻ったのを見てふいに立ち上がると、カーテンレールから飛び降り、台所にいる彼の元へと走っていく。
「ハリー。ハリー!」
テーブルによじ登ると呼びかけた。

「――なに?今忙しいから、邪魔するな」
叔父家族に聞こえないように、声を落として返事を返す。
「何か、僕が手伝えることはない?」
「じゃあ、この家事を手伝ってくれる、性能のいいロボットを出してよ」
「無理だよ!」
「出来ないんだったら、聞くな。僕の忙しさを見たら分かるだろ!目が回りそうなんだから、――ったく!」
デザート用のオレンジを切りながら、ハリーは舌打ちをする。

その容赦ない声を聞いた途端、ドラコはとても悲しくなった。
自分がちっぽけで、ひどく役立たずに思えたからだ。
確かに迷惑ばかりかけているのは自分自身だったし、魔法使いと言いながら彼の望みを一度だって叶えていない。
ハリーが怒っても当然だった。

ドラコはグッと唇を噛む。
今はくよくよ考えて落ち込んでも、何の解決にもならないじゃないか。

気分を切り替え、プラスチックのカラフルなピンフォークを持ち一本ずつ運んでくると、切り分けられていくオレンジにそれらを刺していく。
彩りよく皿に並べると、ハリーを見上げた。
「ハリー、何か上にトッピングするの?」
「ああ、そこにある砂糖をかけてくれ。糖尿になりそうなほど、たっぷり大盛りで!」
「りょーかい!!」
小さなスプーンで勢いよくバッサバッサと振りかける。
やがて白い粉砂糖がかかった、オレンジのデザートが出来上がった。

それを見て、彼は満足気にうなずく。
「こりゃー、うまそうだ。甘ったるくて、カロリーたっぷりで、病気になりそうなほど♪」
その言葉にハリーは噴きだした。
「確かにサイコーの出来だ!」
二人は目をあわせて、ニヤッと笑った。

相手の機嫌が少しよくなったのを確認して、すかさず近づくと腕を伝ってトトトっと肩口まで登っていく。
ハリーの顔に身を寄せ少し背伸びをしてつま先立ちになると、彼の黒縁の眼鏡を横に動かした。
「……ほら、ズレてるぞ。ちゃんと掛けないと、よく見えないだろ?前髪も汗でぐちゃぐちゃだ……」
さっさっと小さな手で撫で付ける。
「くすぐったいから、いいよ、別に――」
ハリーはこういうことに全く慣れていなかったので、たまらず首をすくめた。

まだあれこれと世話を焼きたそうなドラコを肩口からテーブルに下ろすと、変わりにデザート用の皿を持ち上げた。
「あと1時間くらいはかかるからさ、これでも食べておきなよ」
そう言って、オレンジの小さな一切れを渡す。

思ってもいなかったハリーからのプレゼントが嬉しくてたまらず、ドラコは皿を持ってダイニングルームに向かって歩いていく背中に声をかけた。
「ありがとう、ハリー。ありがと!」
突然の感謝の言葉に面食らったように、ハリーは振り向いた。

ニコニコとチビっこい魔法使いは、オレンジの塊を振って上機嫌で笑っている。
はたから見ると、まるで小さなマスコット人形がピョコピョコ動いているようで、とてもかわいらしかった。
つられてハリーも笑顔になる。
「気にするなって」
そう気軽に答えて、彼は隣の部屋へと消えていった。

(僕はハリーの笑顔が好きだな。めったに笑わないけど笑うととてもいい顔をするんだ)
嬉しそうに目を細める。
作品名:ミニ☆ドラ 作家名:sabure