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toccata

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閑話・事務所にて


某月某日。
6時30分。

シャイニング事務所の朝は意外と早い。
事務所に人が大抵集まっている時間。
学園との運営も関係しているのだろう。
教師達、講師達、事務関連の人々。
一斉に集められて、朝の挨拶が始まる。

「おはようございます!」

大きな声が部屋中を覆う。
芸能界では挨拶が重要となる。
それを学園生、アイドル達だけでなくそれを教える側、支える側に求めているのだ。

「学園についての報告!」
「はい!」

報告担当者が呼ばれ前に出てマイク前に立ち、挨拶後学園の報告をする。

「先日学園長が破壊された防音硝子20枚ですが、業者の見積もりが出ており昨日取締役からの了承が出たので経理に回しました。数日後に到着、取り付け作業となります」
「幾ら周囲に住宅がないとは言え寮は有るだろ。数日と言わずに明日に来い、と伝えろ」

取締役である日向龍也は報告担当者にその場で命令した。
はいっ、と担当者は背筋を更に伸ばしながら返事をし、書類へ走り書きをその場でした。

(…たく…確かに了承したが、毎度毎度これだと本当にどんなに俺達が稼いでも足りないだろうが…)

あのおやじめ…と心の中で大きく溜息を付いていた。
非常識の塊である大物・元アイドルである学園長、シャイニング早乙女は規格外過ぎて周囲がほとほと手を焼いている。
胃を痛めながらも学園を支える側もになっている日向にとっては、眼の上のたんこぶでもあるが同時に尊敬する存在でもある。
無理難題、破天荒、常識で測る事は出来ない等々…。
様々な言葉を外部や内部から受け取っているが、それでも「選ばれたアイドル」達には外しはなく、それなりの成果…ではなく確実に同じ事務所内で芸能界全体における”トップアイドル争い”が行われている。
人材育成、人材確保、どちらもすべて成功しているのだ。
この存在を尊敬しない、と言う人は理解しがたい。

(その決定権を持っている人間が…もう少しまともならばな…)

そんなものを求めても無理だと言う事は分かっている。
現時点では諦めの境地だ。
学園自体同期だった月宮林檎がこんな事を言っていた事が頭をよぎる。

「シャイニングがこじんまりと”常識”で纏まったら世界が、ううん、地球が終わっちゃうわよ、きっと」

器物破損以外の報告を聴きながら、例えそうであったとしても「もう既に世界や日常は終わっているんじゃないか?」と思ってしまう。
又胃がキリキリ言い出したのを日向は日常の一つとして受け止めていた。


■□■□■□■□■


10時。

「おはようございま〜す」

今年3月に学園を卒業し、オーディションを勝ち残った元Aクラスの一十木音也が事務所にやってきた。
本日ある仕事の確認をしに来たのだ。
待ち合わせ時間に逢えばいいのに、「まだ成りたてだし…」と元気一杯に見える外見からは想像できない繊細さを見せたのだ。
今までは大抵2人以上で組んで、番組等に出ていたから緊張しているのだろう。

「今日は深夜に放送される番組でのアイドル紹介コーナー…、の収録なんだ」
「そうそう」

新人を担当するマネージャーが丁寧に説明して行く。
必死にメモを取りながらやるべき事を纏めているようだ。

「このコーナーって何でもしていいの?俺得意な事ってサッカーとギターなんですけど」
「そうだなぁ…音也はどっちで売りたい?」
「え?」
「最終的には歌が売れなきゃいけないけど…アイドルだからさ。音也は身体動かすの得意だし、ある程度はやってみたい事は聞いておかないとね。こっちの売りだけを無理に押し付けても…逃げられちゃうしさ」
「ありがとうございます!」

これは飴である。
”アイドル”その見習いに慣れた現在でも、レッスンや課題は山の様に有り、彼が知らない所で査定はされている。
打っても響かない鐘は、シャイニング…基事務所自体も必要としていない。
そして、これはトークの練習でもある。
”求められた質問に対し、自分の言葉で答える事が出来るか”
借りてきた言葉では、ファンはつかない。
生の、彼自身の言葉を”他人に理解して貰えるレベル”で出せるようにしなければいけないのだ。
レッスンは日常生活の中でも行うべし、がシャイニング事務所のモットーである。

「えっと、俺。その場で直ぐ見せられるとしたらサッカーだと思うので、サッカーをまず売りにしたいです。
 例の運動会の番組。そこの種目に有るフットサルに参加したいです!」

音也は自分なりにやりたい事を、必死に自分の言葉で伝える努力をしていた。


■□■□■□■□■


正午。

「お疲れ様です〜、一寸外に食事に行ってきますー」

最初のお昼の時間だ。
電話はいつ来るか分からない。
デスクの数人が時間差で取っている。

デスクの1人が席をはずした瞬間に、電話が鳴った。
1コールで取る。

「お電話ありがとうございます。シャイニング事務所でございます」

お世話になっております、と電話を受けた者が頭を下げながら右手にボールペンを持ち電話の主と内容を素早くメモへ落して行く。

「では、こちらからのプロフィールシートをお送りします。送り先は…はい、ええ、分かりました。では本日中にお送りいたしますので。はい、よろしくお願いいたします。失礼いたします」

一礼して、丁寧に電源ボタンを押して電話を切った。
メモの内容を確認し、即プロフィールシートの入っている棚へ向かう。

「なんだって?」

探そうと棚へ手を伸ばすと声をかけたれた。

「楽器が上手い王決定戦・アイドル編、からのオファーです」
「…誰?」

興味津津と言う顔で質問してくる。
それに対して、視線をそらしながら答える。

「那月、です」

空気が止まった。

「…そりゃぁ…」
「ええ…まぁ…」

口ごもってしまう。
向こうが指定してきた本人は「何でお前がアイドル何だ?」と先日番組内でお笑い芸人に弄られたばっかりの、ヴィオラの天才奏者の顔を持っている。
どうやらその番組のプロデューサーがたまたまその番組を見ていたらしく、「プロプロって言ってるけれど、俄かだろ?」と思い、興味を持ったらしい。

「…又叩かれなければ良いけど…」
「ネットでですか?」
「あぁ」

お笑い芸人に弄られた番組後、どうやらネット上で色々弄られたらしく、根も葉もない噂も書かれた。
本人は気にしていないようだが、続く事は彼自身にとって良くない。
下手すればイメージが壊れる。

「どうする?」
「クッションとして、翔と組ませます。それならば…」
「面白味がないじゃないか。それだと何時も通りだ」
「確かに…この事務所だと…当たり前ですしね」

声をかけた側もかけられた側も悩みが深みにはまった。
プロフィールシート発送にもリミットは有る。
彼らは必死に、最も良い方法を探り続けていた。


■□■□■□■□■


13時30分。

1通のFAXが届く。
現場変更に関する内容だった。
確認した者が慌てて電話をする。
内容が内容で、しかも時間との戦いになる可能性を秘めていた。

「お疲れ様です」

何度かコールして繋がる。

「---お疲れ様です---」
「トキヤ、今どこ?部屋?」
「---いえ、現場近くの駅です---」
作品名:toccata 作家名:くぼくろ