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座敷童子の静雄君 2

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座敷童子の静雄君 afterのafter 後編1





電話終了後、仕事があるサイモンは兎も角、にまにまチシャ猫笑いで待ち受けていたトムの追及は半端無かった。
日本酒が結構体に残っており、そして静雄の頭があんまり良くなかった事も災いし、従業員休憩室がほぼ二人貸切状態の密室ではもう逃げ場なんて何処にも無くて。
冷めた緑茶入りグラスを手に、もじもじ俯き、でも酔った勢いで帝人と出会った馴れ初めから本日ぶっ飛んで行った経緯まで、一切合財、記憶に残っていた全てを吐かされたのだ。


「じゃあ帝人ちゃんは、座敷童子のお前がさ、エセ子供だって全く気がついていないんだな?」
「うすっ。あいつは田舎育ちだけあって、滅茶苦茶純粋で純朴で天然ボケなんっす。だから俺がしっかり見張ってないと、あいつきっと直ぐに悪い男に騙されそうで……、あああああ、心配だ、心配だ、帝人帝人帝人帝人帝人ぉぉぉぉぉ。俺、守ってやるからな。俺が助けた命なんすから、あいつはもう俺だけのモンっす」

「……、そうか……」
池袋在住で、しかもこの街で一番の名物男な癖に、性懲りも無く八年間も臨也に嵌められ騙されまくっている静雄にだけは、天然ボケだの騙されやすいだの言われたくないだろう。
それに彼女が東京に出てくるきっかけとなったのは、幼馴染の蛇男だって事を、こいつはマジで気づいてないのだろうか?

年頃の娘なのに、凄まじい赤貧生活を送ってまでしぶとく東京に住んでいるのだ。
東京は、正直金が無ければ楽しく暮らせる街ではないし、生半可な理由じゃできない筈。
それでもこの街に残りたいと思うのは、そいつが彼氏もしくは恋しい男だからじゃないのか?

だが、帝人は池袋の自動喧嘩人形が、初めて執着を見せた少女だ。
可哀想だが今後東京にいる限り、静雄が邪魔して絶対恋なんてできないだろう。
だったら池袋の平和と、トムの心の平穏の為に、是非、一日も速く正式に彼の恋人になって欲しい。

等々、色々突っ込みたいトムであったが、酔っ払っている静雄は力の加減が効かない為、今日は賢く口を閉ざすしかなかった。

「じゃあ今後もお前、帝人ちゃんの座敷童子として、色々甘えるつもりなんだな?」
「うすっ」
ほっぺたが急激にぽくぽく真っ赤に染まったのは、酒が残っているせいではない。天然め。
だがこんなに見え透いた正直スケベでも、嫌味や嫌らしさを感じないのは、静雄の人徳だろう。
でも、トムはちょっぴり切なくなった。

「子供に化けてさ、添い寝したり、一緒に風呂入って裸の付き合いをするのも勝手だけどよ、お前ももう23だし、大人のお前のままで恋愛……、そう、キスしたりエッチしたりとか、脱童貞したいと思わねぇのか?」
情けねぇの……とまでは言わなかったのに、静雄はぱたりと畳に轟沈した。
そしてそのまま真っ赤な顔を両手の平で覆い隠し、「うおおおおおおおおおおお、無理無理無理無理無理無理」と、ゴロゴロでかい体で転がりまくりやがる。

マジで勘弁してくれ。
本当に大丈夫かこの男?
臨也の嫌がらせが無くたって、この性格でとっくに人生終わってるような気がしてならない。


「まぁお前の初めての恋だ、せいぜい頑張ってみろ。俺は断然応援するからな♪」
無理やり話を締めくくると、起き上がって目をきらっきらとさせた静雄がこくこくと頷いた。
「トムさん、俺、一生貴方に憑いて行きます!!」
(お前、お化けかよ!!)

もうどうしようかこの純朴男。
今日日の中学生の方が、もっとスレッカラシだぞ。
トムは更にガクリと肩を落とした。


★☆★☆★


翌日、静雄はトムの助言に従い、朝に帝人の家に突撃するのは諦めた。
その代わり、トムの配慮で午後から有給を使って早退させて貰える事になり、幽のマンションの管理人と事前打ち合わせもこなせ、鍵を受け取り、夕方には帝人の家に辿り付けたのだが。

(あー、俺……、そういやなんつって訪ねりゃいいんだ?)

頭をかしかし掻いても、良い考えなんか思いつかねぇ。
大体、帝人が風邪ひいていたと知っているのはチビ静雄だ。
携帯の番号さえゲットできてりゃ、連絡とって住所を聞いてって、色々アリバイ作れただろうが、それもねぇ。
おまけにこのボロ家にはインターホンすら無くて、トントンと軽くドアノックを繰り返しても、帝人は出てこねぇし。

(………ちっ、めんどくせぇ………)

吸っていたタバコを投げ捨て、靴底で踏みにじって火を消す。
結局、何時もの取り立て時と同じように、ドアを素手で引っ張り壊して中に入ってみた。
室内はカーテンが引かれたまま薄暗くて、中央のこんもり膨らんだ布団がもぞもぞ動き、帝人がようやく目を擦ってのんびりと起き上がった。

「……あれ、静雄さん……、どうしたんですか?」
こっくりと小首を傾げる姿は可愛いが、おいおい……何処まで鈍いんだ?
マジで今まで寝てやがったのかよ。

「……うちのドアが……、あれ?うわっ外れてる!?……」
「……ああ、大丈夫だ。蝶番が壊れただけだから……」
「そっか。落ちてたの静雄さんが拾ってくださったんですね♪ ありがとうございます♪ この家、年季が入ってるから結構危なくて、よく吹っ飛んでいっちゃうんです♪」
「はぁ?」
「先月なんか、私の部屋のベランダも、丸ごと落ちちゃったんですよ。下に誰も居なかったから良かったんですけど。静雄さんも、このマンションの下を通りがかる時は注意してくださいね、危ないですから♪」

にこにこと微笑まれ、静雄はますますがくりと肩を落とした。
この少女は、何処まで鈍いんだ?

ドアを破ったのが自分だったから良かったようなものの、臨也や強盗がもし同じ事をしたとしても、この馬鹿は全く気がつかずに『拾ってくれてありがとうございます♪』とか、お礼を言いそうだ。
「……………頼むから、もっと危機管理のスキルを上げやがれ………」
「……え、今何か言いました?……」

人の気も知らない暢気者は、もぞもぞと布団から脱出すると、薄い浴衣姿のままで机の上にあるペンたてからプラスのドライバーと、多分買い置きの蝶番を二セット取り出した。
安い合板ドアはとても軽いが、15の女の子が一人でさくさくネジ巻いて直してしまえるなんて。きっと帝人が言った通り、何度もドアが吹っ飛んでしまっていたのだろう。
この子は一体東京に出てきてから、どれだけ過酷な生活を送ってきたんだよ、畜生。

「静雄さんは、今日はこっち方面に取り立てだったんですか?」
「……まぁな……」
「うふふ、凄い偶然ですね……、くしゅん!!」
もう我慢も限界だった。

昨夜と違い、彼女のコートで体をくるりと包み込むと、そのままお姫様抱きにする。
「ふ、ふえ? え……、ええっ!?」
そしてそのまま池袋の街に駆け出して、幽から借り受けた学校から徒歩五分の2LDKに、帝人をぽいっと放り込んだ。
ここは幽の隠れ家みたいな部屋だったらしく、TVやエアコンや洗濯機等の必要最小限の電化製品とシングルベッドだけは残ったままだった。

「お前、今日からここに住め」
「え、ええっ、どうして急に!?」
作品名:座敷童子の静雄君 2 作家名:みかる