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煙を燻らす男達

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SIDE D


 
 鼻歌混じりにドアを開けた瞬間、もうもうたる煙が、ワスピーターを襲った。
「げほ! げほげほ! 何だこれ~」
 慌てて、いつもぶら下げているゴーグルを装着する。
 改めて部屋を見渡すと、珍しく、待機室という名のプレイルームに、全員が集合していた。
 テラザウラーとスコルポスは、テーブルを挟んでカードを握り、タランスはプロジェクターの前に陣取って、艶かしい女優の体を観賞中。
 この三名が揃って、換気装置も作動させずにタバコをくゆらせているので、部屋に煙が充満しているらしい。
 ワスピーターは換気装置のスイッチを入れると、鼻と口を自分の服の袖で覆いながら、煙の中に突入した。ブレードタイプのローラースケートを滑らせ、タランスの側まで行く。
「ちょっと、そこ、どいて~。これから、ニンジャフロッグス見るんだぶ~ん。今週は、シャラクとホクサイが大ピンチなんだぶ~ん!」
 右手にウイスキーのグラス、左手に火の着いたタバコを持ったタランスは、ワスピーターを一瞥もせずに言った。
「うるさいッスね、ワスピーター。こんなの早いもの勝ちッスよ? 悔しかったら、あたちの前に、ここに来ればいいだけ……あ~、たまんない、ギッチギチに縛って骨の随まで吸い尽くしてやりたいっッスね~!」
 大画面の中の煽情的な絡みに見入るタランスは、ストレートのウイスキーをちろりと舐めて下品に笑う。
「いっつも部屋に閉じこもってるタランスが、いるなんて思わないよ! ボクちゃん毎週ココで見てるんだぶ~ん、早く退くぶ~ん!」
「いつものことなんて知らないッスー」
「あーもう、二人共うるさいザンス! ゲームに集中出来ないザンスよ!」
 くわえタバコでカードを睨むテラザウラーが、ヒステリックに叫んだ。
 振り向いたワスピーターは、テラザウラーの隣に移動して、その腕を引っぱる。
「テラザウラーも何か言うぶ~ん。このままじゃボクちゃん、ホクサイの活躍が見られないよ~」
 テラザウラーは目をむいた。
「カー! なんでミーがアンタのマンガの心配までしなきゃいけないザンスか!? 自分でなんとかするザンス!」
「テラザウラー、コールだ。オラア!」
 その時、テーブルを挟んだ正面、どっかり座ってビールをビンから直接煽っているスコルポスが、自分の手の中のカードを、テーブルの上に放り出した。
「カァ~……」
 自分の手札を睨んだまま、動きが止まる、テラザウラー。
「……いや、そうザンスね。ワスピーター、ユーの怒りはもっともザンス。ミーがなんとかしてあげるザンス!」
 テラザウラーは、突然、立ち上がった。同時に、膝でテーブルを蹴り倒す。
「あっ! てめえ!」
「あー、しまったザンス、ついうっかり~」
 テラザウラーは棒読みでそう言うと、床に散らばったカードを拾う振りをして、さっと手札をその中に紛れさせてしまった。
「ぜーんぶ、不可抗力ザンスよ? 残念だけど、この勝負はドロー、カカカ」
 カードを一山にまとめながら、テラザウラーは宣言する。
「テメー、ふざけてんじゃねーぞ、オラア! ぶっ殺す!」
 吸いかけのタバコを投げ捨てて胸ぐらを掴もうとしたスコルポスに、テラザウラーは、拾い集めた掛け金の半分を押し付けた。
「たまたまザンスよ、たまたま!大体、この勝負、ミーが勝ってたザンス! 掛け金を返すのは、ミーの誠意の表れザンスよ?」
「信じるワケねーだろ!」
 数枚のお札を掴んだまま繰り出されたスコルポスのパンチをするりとかわすと、テラザウラーはドアの方向に逃げる。と、その腕に、ワスピーターが再びとりついた。
「早くしないと、始まっちゃうぶ~ん」
「カー! 手を離すザンス!」
「待てコラ!」
「あ~もう! チミタチ、いい加減にするッス! これからミミーちゃんがゴム長の匂いを嗅がされて昇天しちゃう名シーンッスよ!?」
 勢い良く立ち上がったタランスの手に、銃が握られているのを見て、残りの三人の顔色が変わった。
「お、落ち着けタランス!」
「とにかく逃げるザンス! ホラ!」
「あ~れ~」
 テラザウラーはワスピーターをしがみつかせたまま、一目散にドアから出ていった。
 後ろで、ドン! という音と、スコルポスの悲鳴が聞こえた。



 いつの間にか、アジトを出て、夜の往来に走り出ていた。
「は~、さすがにココまでは追ってこないザンスか。ああ見えて、タランスは見境が無いザンスね」
 足を止めて、テラザウラーは、呼吸を整えた。ローラースケートの車輪に任せて引っぱられてきたワスピーターは、涼しい顔をしている。
「ニンジャフロッグスはどうなるぶ~ん?」
「カー……あの状況じゃどうにもならなかったザンス。きっぱり諦めるザンスよ」
 スーツの内ポケットを探ってタバコを取り出すと、くわえて火を付ける。
「え~~~! テラザウラーがなんとかしてくれるって言ったぶ~ん! 責任取るぶ~ん!」
「……あーもー、うるさい蜂ザンスねー」
 テラザウラーは、煙を、ため息と一緒に吐き出した。
「きっと、すぐ再放送するザンショ? それで我慢するザンス」
「え~、やだやだ、そんなのやだ~! 断固はんた~い! サンセイのハンタ~イ! 責任者でてこ~い!」
 手足をバタバタさせて、力一杯ごねる、ワスピーター。
 テラザウラーはうんざりした表情で、メリメリと音が聞こえそうなくらい強くタバコを吸った。呼吸と共に漏れる煙を身に纏わせ、しばしの沈思黙考。そして、もう一度ため息をついた。
「……お菓子、買ってあげるザンス」
 その一言で、ワスピーターは、ぴたりとごねるのをやめた。
「わ~い、ボクちゃんお菓子大好き~! ケーキがいいな~、クリームたっぷり~♪ テラザウラー、早く行くぶ~ん!」
 ワスピーターは大乗り気で、テラザウラーの手を引っぱった。
 テラザウラーは舌打ちすると、名残惜しそうに一吸いしてから、短くなったタバコを指で弾いた。タバコは小さな火の粉の尾を引きながらアスファルトを跳ね、下水に繋がる通気孔に落ちた。
「……仕方無いザンスね……さすがに今回は、スコルポスにも何か買っていった方がいい気がするし……結局、散財するハメになったザンス」
 テラザウラーは、ワスピーターに手を引かれて、終夜営業の食料品店に入っていった。
作品名:煙を燻らす男達 作家名:スガ