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B.R.C 第一章(2) 奪われた神具

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#15.尸魂界の異変【BR】



 予想通り、孫条寺は中央四十六室の住居地である清浄塔居林に潜んでいた。彼は、自分の住居の最奥に王珠を保管しているという。そして、それをチラつかせて従えていると思われる中央四十六室は、どういう経緯で、どういう手段でかは不明だが、その全員が―――。

「虚、だと……?」

 クシャリ、と日番谷の手の中で紙が鳴いた。

「本来の中央四十六室は一人も居ませんでしたよ。孫条寺が殺したのか、虚に食べられたのかはわかりませんが、彼らは全て虚です。禁踏区に潜んでいる虚たちは全部で一〇七体、うち変異種が九九体、ヴァストローデが八体ですね」

 死神が退治すべき存在である虚に、中央に入り込まれたばかりか、全死神が踊らされているというのだ。その様は、なんて滑稽だろうか。
 日番谷は頭を抱えると同時に、桐沼を想った。
 中央四十六室に呼び出されたきりの、部下。
 中央四十六室からの理不尽な呼び出しがすべて虚の仕業だというのであれば、彼は帰って来ることは、恐らくないだろう。
 あの日、『護廷十三隊隊長』という立場から何も出来ずに見送ってしまった事を悔やまずにはいられなかった。中央四十六室の異変に、気付いていたというのに。

「……中央四十六室が全員虚だというなら、恐らく、死神を何人か喰らっているはずだ。そこらの奴らより力が付いているだろう」

 遣る瀬無さをぐっと押し込んで発言すれば、

「ええ、その通りです。変異種の方は全員が人間の形を取ることが出来ますが、それ以外の能力は不明。ヴァストローデの能力値も不明。しかし、いずれも平均値よりも霊圧が高いことに間違いはありません」

 と、六道が続けた。

「大虚かどうかに関わらず、油断は出来ないね」

 沢田が神妙に頷く。

「虚が尸魂界で最高司法機関っていう立場にある中央四十六室を語っているっていうのは問題だよね……」
「うむ。早急に手を打ってやらねば!」

 元は、孫条寺を取り逃がした霊界の失態が原因だ。今回ばかりは、不干渉という訳にはいかない。
 神具が関わっているということもあり、中央四十六室に関しては王属特務の幹部が対処することが決断された。

「それじゃ、俺は霊王と霊王守護者にこの事を伝えて来るよ。尸魂界に降りることと、干渉する許可をもらわないと」

 王属特務幹部が滅多に霊界を出ないのは、尸魂界において隊長格が現世任務に滅多に携わることがないことと同じ理由だ。
 王属特務、特に幹部の持つ霊圧は強大で、それがもたらす影響もまた大きい。尸魂界の住人に不要な影響を与えないためにも、王属特務幹部の役目は霊界守護が主であり、降りるにしても霊王の許可を必要とする。
 今、こうしている間にも、中央四十六室はその黒い爪を死神たちへと伸ばしているかもしれない。出来る限り急いで欲しい、と日番谷が部屋を後にする沢田の背に頼もうとしたところで、

「あれ?」

 ガラリ、戸を引いた沢田が間の抜けた声を上げた。
 戸の向こうに、長身の青年が棒キャンディを咥えて立っていたのだ。

「スパナじゃねぇか」

 山本が青年を驚いた声音で呼ぶ。
 彼は王属特務の戦闘部隊とは別に存在する技術専門部の隊員だ。そこに所属する者は、技術開発局局長である涅マユリよりは遥かに常識を持ち合わせているものの、誰もが発明好きで機械オタク。滅多に研究室から出て来ることはない。
 そんな彼が、幹部たちの会議室へ訪ねて来たのだ。

「何かあったの?」

 沢田がそう尋ねるのも無理はない。
 案の定、スパナはこくりと一つ頷き、

「尸魂界の様子がおかしい」

 と淡々と告げた。

「何だと?」

 反応したのは、尸魂界に一番近しい日番谷だ。
 何があったと促す彼に、スパナは研究所に来て欲しいと言った。
 日番谷と沢田、獄寺、山本がスパナに着いて技術専門部の研究所を訪れると、巨大なモニターに幾つもの四角く切り抜かれた尸魂界の瀞霊廷の景色が映し出されていた。
 六道が潜入調査を行っている間、王属特務では鳥の形をした遠距離操作可能のカメラを尸魂界に放ち、瀞霊廷を外から監視し、非常事態をすぐに察知できるように努めていた。そのカメラが、あるものを捉えたのだ。

「雛森? それに、阿散井と吉良……」
「知ってんのか?」
「ああ。護廷の副隊長だ。しかし……」

 彼ら三人を囲む白装束の男。その男の顔はもちろん、白装束の集団に、日番谷は覚えがなかった。

「彼らは、中央四十六室の者だって言ってるようだけど……」
「何っ?!」

 モニターの前に座る一人、眼鏡をかけた青年、入江正一が、キィ、と椅子を反転させ、耳にかけたヘッドフォンから聞こえる彼らの会話の中から特に気にかかったことを伝えた。それは、幹部たちを驚かせるには十分だった。

「中央四十六室っていうことは、」
「こいつらも虚なのか?」

 言葉尻を取って行った山本に、ムっと不満顔の獄寺。
 気を取り直すように咳払いを一つ。

「けどよ、こいつらを何処に連れて行こうってんだ?」

 獄寺が見上げた先では、白装束が阿散井たちを引き連れて何処かへ向かっている。

「それなんだけど、こっちを見て欲しいんだ」

 カチカチと入江が手元の機械を叩けば、モニターに浮かぶ画が一転、二転する。その隣では、ジャンニーニという丸々とした男が色とりどりのレバーを上げたり下げたり、回したりと忙しそうにしていた。
 しばらくして、モニターの画面が半分に割れ、左に阿散井ら三人の姿が映し出された。そして、右には薄暗い部屋が。

「ここは……」

 その部屋を、日番谷は知っていた。
 一番隊隊舎の奥まった場所にある隊首会が行われる部屋だ。入口は一つ、窓はない。
 松明の淡い灯りに照らし出される部屋の中は鮮明ではなく、どういう状況なのかがいまいち掴めない。
 入江が、カチリと赤いボタンを押した。
 途端、部屋の中が鮮明に映し出され、日番谷は目を見開いた。
 部屋の中には、日番谷を除く全隊長が集められ、副隊長らが膝をつかされている。しばらくして、そこに阿散井、吉良、雛森の三人と、それを追うようにして死神代行の一護、その教育係として現世に降りていたルキアも連れて来られた。
 入江はヘッドフォンを外し、日番谷達にも聞こえるように、音声を調節する。
 久しぶりに聞く仲間の声だが、懐かしく思っている暇はない。
 彼らの話は不穏な方向に進んで行った。