二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ルック・湊(ルク主)

INDEX|115ページ/174ページ|

次のページ前のページ
 

笑顔



騎士団領に入ったところで、王国軍が出現した。シュウがつぶやく。

「思ったとおりだ。レオン・シルバーバーグは、いないようだな。」

そして湊には聞こえるはずのないジョウイの声が聞こえたような気がした。

「やはりあちらはおとりだったか・・・。全軍で包囲、攻撃しろ。同盟軍をたたきつぶせば、この戦いは終わったも同然だ。」

・・・ジョウイ・・・。

戦いは長引く。王国軍にはユーバーの軍や、マチルダ軍までもが加わっていた。しかも途中からクルガンの部隊まで現れる始末。
こちらの形勢が危うくなったか、と思われたが。シュウはそれも想定内だと言い、合図を出す。
そしてシュウの合図で、いるはずのない援軍が出撃してきた。
王国軍はジョウイの撤退命令により撤退していった。
不思議に思っていた援軍は、非戦闘員である、酒場のレオナや、倉庫のバーバラ達であった。

とりあえず同盟軍もグリンヒルへ戻り、一度体勢を立て直す。その際にシュウがロックアックス城を落とす策を説明してきた。
リドリー亡きあと、その息子であるボリスが継いでいたが、ボリス達の部隊とハウザー、テレーズの部隊が敵を引きつけ、その隙に湊達少数部隊でロックアックス城に乗り込んでもらうとのこと。先ほどの戦いで元マチルダの騎士に、ゴルドー部隊にまぎれて一緒に城に入ってもらっており、こちら側の合図で中から城門を開ける手筈になっているとのこと。そしてあちらの軍旗を焼き払い、代わりにこちらの旗をひるがえらせ、城が落ちた事を示す、というものであった。
クラウスが言う。

「王国軍は無理をしすぎました。今は騎士団を力でおさえつけていますが、その支配はモロいものです。居城が落ちたと思えば、騎士たちは戦う意志をなくすでしょう。そうなれば我々の戦力が王国軍を上回ります。」
「失敗したら・・・」

ビクトールが呟いた。シュウが答える。

「逃げ場を失った、ボリス殿、ハウザー殿、テレーズ殿の部隊は壊滅。それは同盟軍の壊滅と言っていいだろう。・・・湊殿・・・。すべてはあなたにかかっています。城内に連れて行くメンバーはきちんとお考え下さい。」

すると話を湊の横で聞いていたナナミが言った。

「もちろん、わたしは連れて行くよね?」
「ナナミ・・・。危ないからダメだよ。」
「うそ、うそ、うそ、そんなのダメだよー。お姉ちゃんの言う事、ちゃんと聞きなさい。ダメって言っても、無理やりついていっちゃうんだから。湊はわたしが守ってあげるんだからね。」
「ナナミ・・・。」

前にティントへ行く時も、連れて行かないと言ったが無理やりついてきた。でもそれは結果的には、湊は色んな意味で助かったし成長出来たとは思う。
でも・・・正直いつだってナナミには来て欲しくないと思っていた。

守られたいんじゃないんだ。守りたいんだ・・・。

だって大切な人なんだ。失くしたくないんだ。

とはいえども、誰だってそんな人はいるだろう。軍主がそんな事・・・言っていてはだめなんだろうけど・・・でも・・・。
湊はそっと溜息をついた。ルックはそんな湊を黙って見ていた。

敵を引きつけてくれる部隊より先に、湊らが出発した。その際、どこから現れたのか詩遠が、一緒に行こう、と言ってついてきてくれた。
ロックアックスの街の出入り口近辺で様子をうかがいながら隠れていると、同盟軍の出撃をうけたクルガンやシードの部隊が騎士団の部隊を引き連れて出て行くのが見てとれた。

「湊殿。時間はあまりありません。敵の部隊が戻ってきたら、この策はやぶれ、同盟軍の命運はついえます。我々も頃合いを見て後を追いますが、湊殿達は、すぐにでも旗を目指して下さい。」
「うん、分かった。じゃあ、行ってきます。」

そう言って湊らは街の出入り口に侵入して行った。その時、後ろで何やら伝令係が慌てたようにシュウに報告しているのが見えた。そしてクラウスが俯くのが。
ああ・・・キバ将軍・・・。湊は唇をかみしめた。
ルックはまたもや、そんな湊を黙って見つめるしかなかった。

皆は城に侵入し、たまに発見されて襲ってくる騎士を倒しつつどんどん上に進んで行った。ここで詩遠の手はかなり助かった。来てくれて本当に助かった。圧倒的な攻撃力で敵を倒していく詩遠は誰がみても畏怖さえ覚える凄さであった。
だがあと一歩というところまでやってきたところで、向こうの方からかなりの数の騎士が押し寄せてくるのが見てとれた。

「くそ。ここは俺達にまかせて、湊、君は旗を・・・」

詩遠が棍を構えて言った。

「で、でも・・・」
「いい。君はしなくてはいけない事をしろ。」

ルックもロッドを構えて言う。

「行こう、湊!み、みんな、気をつけてね!!」

ナナミが湊の手をとり、階段を上がりだした。湊も仕方なしに走る。
そして上がりきったところで大きな重苦しいドアを開け、大きな開放的な廊下を歩く。

「なんとかここまで来たね。あと一息、がんばろうね。」

ナナミがニッコリと言った。湊も微笑み返す。その時、不意に声がした。

「どこを目指してるんだい湊?」

いるはずのない声。

「ジョウイ!!」
「湊、ナナミ・・・何を狙っているのか知らないが、ここから先は通さない・・・」

そう言ってジョウイは剣を抜いた。

「ジョ、ジョウイ!!だめだよ!!イヤだよ!!」

ナナミが悲壮な声で叫んだ。湊も絞り出すように言う。

「君とは戦いたくない・・・。」
「そうだよ!なんで!?なんでなの??なんで、湊とジョウイが戦うの!!」
「運命だった・・・多分、それが答えだよ・・・。湊、君には君を慕う多くの人達がいる。同盟軍にとって、君は希望そのものなのだろう・・・。そして、僕にも・・・僕を必要としてくれた人達がいる。僕を信じてくれた人々がいる。」
「運、命・・・?そんなもの・・・。・・・ジョウイ・・・。」
「やだよ、だめだよ、そんなのだめよ!!そうだよ、運命なんて信じないもん!!ゲンカクじいちゃんも言ってたもん!!そんなのうそっぱちだもん!!・・・そんなのが・・・ハイランドと同盟軍が戦う理由なんて・・・湊とジョウイが戦う理由なんて・・・」

ナナミが必死になって叫び、そして手で顔を覆った。
ああ・・・また・・・ナナミを・・・泣かせてしまった・・・。湊は痛む胸を押さえる。
ティントで・・・自分は何が何でもこの戦い、勝つ、と誓った。自分の為に。ひいては皆の笑顔、そしてナナミの笑顔の為に。
だけれども・・・
ナナミ・・・泣かないで・・・
ナナミ・・・ッ

「・・・ここは、この地は・・・都市同盟とハイランドが両立するにはせますぎたんだよ・・・それが多くの戦い、悲しみを生んだ。ジョウストンの丘で、都市同盟の会議を見たあの時、僕の心には、大きな疑問が生まれた。肩を寄せ合って、なんとか生を受けて成り立っている都市同盟の中でさえも、争い、しっと、反目がうずまいている・・・。僕はこの地に一つの大きな国を打ち立てる・・・王国軍も都市同盟も関係はない。強力で、強大な力を持った一つの国こそが、この地から争いを追放するただ一つの方法なんだ・・・。」

ジョウイの言葉に、湊はハッとして反論した。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ