ルック・湊(ルク主)
酒席
「お前までここに来るのって珍しくね?」
シーナがニッコリと言った。
「そう?ただ単にレックナート様に頼まれた用事で来ただけだからね。だというのに、何が悲しくて君たちなんかと飲まなきゃいけないのさ。」
「そう言うなよルック。たまにはいいじゃない。ねぇ、シーナ。」
「だよな!」
「・・・どうせ君らはたまでもなんでもないんだろ・・・。毎日飲み明かしてそうだ。」
「いやいや、さすがに毎日はねぇよ、なー?詩遠。」
「そうそう。俺も頼まれた仕事をかたずけた時とかくらいだって、シーナと飲むのは。」
「シーナと、飲むのは、ね・・・。まあ別にどうだっていいけど。」
トランのとある酒場。
レックナートに頼まれていた用件を済ませにグレッグミンスターに来た際に、城内の事務室を通りかかったルックはそこにいてそろそろ帰ろうとしていたシーナにとっつかまり、詩遠も含めた3人で飲む羽目になった。
「たまにはいいじゃんよ。で、ルッくんは毎日元気に小間使いしてるのー?」
「っるっさい、シーナ。小間使いとか言うな。」
「まあまあー、て、お?あそこで飲んでる女の子達の・・・ほら左の・・・可愛くね?」
「・・・知らないよ。」
「シーナが好きそうだよね?」
「て、何か反応薄くね?ルックはともかく、詩遠まで?」
「俺はどっちかというと、向こうの子の方がいいね。どう思う?ルック。」
「だから知らないって・・・まぁ、だけど確かに詩遠が言ってる子の方が・・・。」
「しょせんお前らってこのみが似てんだよなー。ていうか、ルッくんが女の子ちゃんと見てたことに俺はびっくりだよ。」
シーナが酒を飲んでからククク、と笑って言った。詩遠も“確かになー”と言いながら酒を飲む。
「どういう意味だよ。ていうか、そうだと言うなら、はなから僕にフるな。」
ルックはムッとしつつ、酒を口にした。なんやかんや言っても結局ルックもそれなりには飲む。
「だってさー、解放軍時代も同盟軍時代も、俺がナンパ行こうぜって誘ってもてんで乗ってこなかったじゃん。」
「当たり前だろ!なんで僕がそんなものに付き合わなきゃいけないのさ。バカバカしい。」
「おいおい、青春真っ盛りなお年頃だったんだぜ?それをバカバカしいとか、ほんとありえねー。」
「まぁシーナの女の子好きもたいがいあり得ないけどね?」
詩遠がニッコリと言った。
「男でも女でも綺麗な子見つけたらなんでもありなお前が言うなよなー。ていうか同盟軍に手伝いに来てた時ってそういや詩遠、あんま遊んでなかった事なくね?」
「そりゃまあ、そうだろ?軍主をしていた頃はどうしたって鬱憤やらストレスやらも溜まるでしょ?だから性欲処理とともに発散?」
詩遠がまたニッコリと、誰がみてもうっとりとしそうな笑顔で言った。ルックが呆れたようにそんな詩遠を見る。
「そんな笑顔で言う事?そしてなんで疑問形なんだよ、やめてくれない?」
「ふふ。」
「まあでも確かに軍主なんてことやってっと、色々溜まりそうだもんなー。湊もよくまぁ、やってたよ、あんな大変な事をさぁ。」
おかわりを頼みながらシーナが言った。その際についでに、と詩遠も、勝手にルックの分まで頼む。
「だからあれじゃない?ルックで処r・・・」
「・・・コロスよ?」
またもやニッコリと言いかけた詩遠にルックは鬼の形相でぶっそうな事を囁く。
「あら、相変わらず怖いんだからルッきゅんたらー。」
「だからキモぃんだよ!だいたい、こんな話に湊出さないでくれる?」
「あらあら大事にしちゃってー。可愛い奴よのぉ、お前は相変わらず。」
からかうように言ってくる詩遠とシーナをルックはゴミでもみるかのような目で見る。そんな視線をもろともせず、シーナが普通に聞いてきた。
「て、そいや湊は元気な訳?」
「まあ、ね。」
「そうかー。ほんと良かったよ。一時はどうなるかと。とりあえず忙しそうにしているっていうのは聞いてたんだけどよ。俺も新しい仕事でちょっとバタバタしててなかなかデュナンには行けないからなー。」
「シーナがまさか公僕になるとは、ね?」
詩遠が言った。
「まあな。こんな俺でもやるときゃーやんだよ。お前や湊にばっか、良いカッコさせられねえぜ?目指すは大統領!てな。」
「へぇ?言うねー?まあトランもかなり安定してきてるからな。で、デュナンと今度は商業的にも協力しあうんだって?」
「ああ。こっちは1次産業や2次産業に関してはまったくもって潤ってて問題ないんだけどな、デュナンにはあの強力タッグがいるからなー。手、組んでた方が何かとお得な訳よ。あちらにしても、あの土地じゃたいして産業に関しては、だろ?お互い様って訳よ。」
「強力タッグ?」
ルックがシーナに聞いた。
「湊とシュウ、な。あいつらがいる限り、デュナンはこの先どんどん商業国として潤う事間違いないだろうよ。」
「シュウは分かるけど・・・湊も?」
ルックが訝しげに言うと、今度は詩遠が口を開いた。
「あの子、けっこうやり手だよ?そりゃ普段はなんていうか、色々アレだけどね?商業に関してはなかなかのもんだね。」
「へえ・・・ていうか、色々アレって言うな。・・・まあ否定は出来ないけど・・・。」
「そいやなんつーか、出会った当初から可愛らしいことは可愛らしかったけど、あいつ、なんつーの?どんどんヤバい色気増してってねえ?いや、俺、女専門だけどさー?あいつはうん、けっこうアレだな。」
「だからアレ、言うな、ていうかシーナ、命が惜しくないなら別に構わないけど、ね・・・。」
「おいおい、こんなとこでそんな不遜な空気まとうなよなー。酒の席じゃん、酒のー。でもルッくんだって否定しないっしょ?」
「・・・別に。」
「ふふ、ここでまさかのツンとは、ね?でもほんと、あの子どんどん美味しそうな雰囲気増してるから、気ぃつけなねー?油断してると誰かにとられちゃうよ?」
詩遠がまたおかわりを頼みながらニッコリと言った。
「それがアンタじゃないことを祈ってるよ。だいたいあの子は浮気とかはしない。」
「言いきってるよ、えらく自信満々じゃね?いやーでも湊ならなんつーか、無意識に、ついやっちゃったー、とかってありそうじゃね?」
「・・・。」
「・・・・・・ぷ。」
最初はルックと同じように無言だった詩遠が噴き出す。ルックが“何。”と不機嫌そうに聞く。
「いや、うん、ありそうだなーって思って。あと、ルッきゅんの表情がねー。お前も否定できないんだろ?」
「・・・う。・・・もう僕らの事は放っておいて。ていうかシーナこそどうな訳。いい加減まじめになりなよね。」
「えー?俺はいつだってまじめよ?大真面目。」
もうどれほど飲んでいるか不明だが、相変わらず平然と新しいグラスに口をつけながらシーナが言った。
「そいやアップル、こないだ知らない男と歩いてたぜ?」
「え”!?」
「「・・・・・・ぶ、くくくくっ」」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ