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ルック・湊(ルク主)

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理由



「我が主にして、我が父、全てを統べる神官長ヒクサク様のもとにこの身、この魂をゆだねることを喜びと感じます。」

ルックは広間までくると傅き、頭を垂れた。立っていたササライが口を開く。

「神官長ヒクサク様より、あなたに、正式に神官将の位をさずけよとのお言葉がありました。」
「光栄です。」
「立ちなさい、新たな神官将よ。君に、円の紋章の祝福を。」

そしてササライは仮面を被ったルックのもとにやってきて前で手で形をきる。そして祝福の為に肩を持ち、まずはルックの右ほおの空気に口づける。次に左に顔をもって来た時に口をそっと開いた。

「“我が父”とは、よく言ったものだよ。名も顔も明かさぬまま、神官将に任じられるとはずいぶんとやり手なんだね。」
「過ぎたおせじだとは思いましたが、気持ちを表したまでです。」
「その言葉を信じてもいいのかい?」
「・・・・・・。」

そしてようやくササライは離れた。

「新たなる神官将に祝福を!!」

ルックはササライに背を向け、宮殿を出た。ササライはそんな仮面の男の後ろ姿をジっと見ていた。

ルックは以前にヒクサクとは既に謁見していた。そう、この仮面も取り。
位を与えておこう、と言ったヒクサクの言葉。あの人は約束をたがわず実行してくれた。
それまでもかなりそれに近いような状態で仕事はしていたが、神官将の位を授かる事によって自分がしようとしている事も更にやりやすくなる。

・・・我が・・・父・・・か。
ふふ、とルックは笑う。だがふと我に帰り、次の目的地に向かう為の準備をすることにした。



「こんな田舎の村に神官将様がいらっしゃるとは思ってもいませんでした。急な事で何も準備が出来ておりませんがここをお使いください。」
「あぁ、ありがとう。」

ルビークにて。
場所を提供した村人が出て行くと、セラがルックに聞いた。

「ルック様・・・円の宮殿は、今も変わりないのでしょうか?」
「あそこに帰りたいのかい?セラ。」
「いえ、私のいるべき場所はあなたのそばだけです。」
「・・・。」

その後2人がルビークの村をぶらぶらと見ていると入り口が騒がしいので立ちよってみる。
何やら傭兵達と、このルビークの兵士たちがやりあった後のようであった。

「何ごとだい?」

ルックは虫に乗った虫使いに聞いた。

「あ、神官将殿。不審な人物がいたので排除しようとしていたところです。」
「神官将殿?」

傭兵のような者達の中で落ち着いた感じの男がそう呟き、近づいてきた。
・・・この者達は・・・確か・・・大空洞にいた・・・?

「何者だ?ハルモニア人か?」
「いえ、ハルモニア地方軍、南部辺境警備隊に所属するゲドと申します。」
「この地に何用だ?」
「警備隊から、“真の紋章の捜索”という指示が出ていますので。」
「それでここに、か?まあ、いい。この者達はハルモニア軍の傭兵だ。村に入れてやれ。」

ルックはゲドから目を離し、さきほどの青年の方を向き、言った。

「は、はい。」
「神官将殿。お名前を教えていただけますか?」

するとなぜかゲドが聞いてきた。

「・・・極秘の任務ゆえ、それは教えられぬ。それに、それを知ってどうすると言う訳でもあるまい?」
「はい。」
「それでは失礼する。」

・・・あの男。なにか気になる。タダものではないような気がする。何か・・・そう、まるで真の紋章でも持っているような・・・?
そしてそのまま引き返している途中でセラが言った。

「ルック様。虫使いに、用意させてきます。ルック様は先にお戻り下さい。」
「ああ、頼む。クリスタルバレーまでの往復はさすがに疲れたよ。」

セラはルックが準備された所に戻って行くのを見送ると、村の中を歩いた。しばらくすると先ほど入り口で警備をしていた青年がいるのに気付いた。

「失礼。虫使いの方と見ましたが?」
「はい。あなたは・・・確か神官将様のお付きの方。何か、ご用でしょうか。」

セラは用向きを青年に伝えた。
そして去ろうとすると呼びとめられ、この村にも、二等市民への道を開いてもらえるよう神官将様に頼んで欲しい、と言われる。
この青年には、ここは監獄のように感じられるようである。
・・・監獄。

「・・・分かりました。伝えるだけでしたら、その願いは聞きましょう。」
「あ、ありがとうございます。」

今度こそ青年に背を向けてから、セラは呟くように言った。

「わたしには・・・あなたたちこそ自由であるように感じられます。」

そしてため息をついてから、ルックのもとへと戻ろうとした時、どこからか声が聞こえた。

「・・・セラ、セラちゃん。」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ