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僕の可愛い人ですから

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八時間差



空は薄青、冬の晴天だ。
城のような正十字学園の塔から伸びる回廊のてっぺんにある橋の上に、シュラはいた。
橋はかなり高い位置にあるので、人によっては渡るのを恐がるかもしれない。
だが、シュラはまったく平気である。
橋から辺りを眺める。
なかなか良い景色だと思う。
しかし、寒い。
風が強く吹いているのだ。
そのうえ、シュラはコートを羽織っているとはいえ基本的に薄着である。いざというとき、すぐに剣を取り出したいので、しかたない。
「ックシュン!」
くしゃみが出た。
シュラはぶるっと身体を震わせた。
そろそろ建物の中にもどったほうが良さそうだ。
そう思い、身体の向きを変え、ふと、同じ橋の上にだれかがいるのに気づいた。
シュラはそちらのほうに見る。
少し遠いところにいるが、こちらのほうに歩いてきている。
祓魔師の格好をしている。
よく知った顔。
雪男だ。
その姿はどんどん大きくなる。
「……シュラさん」
「仕事か?」
「はい。依頼を一件、片づけてきました」
シュラの近くまで雪男が来た。
だから、シュラは歩きだす。
雪男とふたり、肩を並べて、塔のほうへと歩く。
「へえ」
シュラは相づちを打ったあと、思いついたことをそのまま口にする。
「忙しいな、おまえは。高等部の特進科の学生やって、祓魔塾の先生やって、祓魔師の仕事の依頼もやってるんだからな」
「予定をすし詰めにするのが趣味なんですよ」
「変な趣味だなぁ」
シュラは笑いながら雪男を見る。
「それに身体に悪そうな趣味だ」
「シュラさんに言われたくないです」
「はあ? アタシにそんな趣味はねーぞ」
「でも、いろんな人からいろんなこと、頼まれてるじゃないですか」
「ああ」
塔の扉の近くまできた。
「どいつもこいつもアタシに押しつけてくるんだよな〜」
軽い口調で言いながら、扉を開けた。
扉の向こうには、だれもいない。
そこにシュラは入る。
続けて雪男が入ってきた。
シュラの背後で扉が閉められる音がした。雪男が閉めたのだろう。
特に気にせず、シュラは足を進める。
雪男が追いついてくる。
ふいに。
腕をつかまれた。
強い力で引っ張られる。
「なんだ!?」
びっくりした。だが、相手は敵ではない。それを充分に認識しているから、シュラは特に抵抗しない。
正面に雪男がいる。
向かい合って立つ形になる。
雪男がすぐそばからシュラをじっと見ている。
まだ少年と呼べる歳なのに、大人びた顔をしている。
「シュラさん」
真剣な表情をして、雪男は言う。
「僕は、あなたのことが好きです」
もう声変わりの済んだ低く深い声がシュラの耳に響いた。
え、とシュラは戸惑う。
一体なんなのだろうか、この展開は。
なんで、いきなり、こんな展開になったのか。
脈絡というものを寄こせ!
そう胸のうちでシュラは叫んだ。
しかし、叫びをそのまま口にしなかったのは、動揺していることがバレそうで、ためらいがあった。
自分よりずっと年下の男というより少年に、余裕を失わされる、なんてクソ恥ずかしい。
作品名:僕の可愛い人ですから 作家名:hujio