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僕の可愛い人ですから

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不本意ながら



祓魔用品店フツマ屋で、シュラと店の女将は向かい合っていた。
「毎度あり」
着物姿の女将はカウンターの向こうに座り、煙管を片手に、悠然と笑った。
一人娘が正十字学園祓魔塾の塾生だからそれなりの年齢で、ふくよかで貫禄もあるが、美人である。
シュラは買った物を持った。
「じゃあ、また、よろしく〜」
そう告げて、帰ろうとした。
けれども。
「ちょっと、シュラちゃん、待ちな」
女将に呼び止められた。彼女にかかっては、シュラも「ちゃん」付けだ。
「ん〜、なにかにゃ?」
シュラは身体ごと振り返り、ふたたび女将とカウンター越しに向かい合う。
すると、女将はカウンターの上に少し身を乗りだした。
「あんた、奥村の若先生とつき合ってるのかい?」
奥村の若先生とは、雪男のことだ。
つき合っているというのは、もちろん、友達づきあいとかいう意味ではないだろう。
「……だれからその話を」
さすがにシュラは動揺してしまった。
雪男とのことは特に隠しているわけではないが、大っぴらにもしていない。他のだれかに話したこともない。
もしかして学園内でキスしているところを見られたのかもしれないと思うと、背中に冷や汗が流れる。
「ああ、若先生本人からだよ」
女将はあっさりと答えた。
犯人は雪男だったらしい。
雪男に対して、オマエ、と襟をつかみたいような気分になったが、もともと隠す気があまりなかったことであるし、とりあえずキス現場をだれかに目撃されたとかではないことにホッとする。
「といっても、はっきりそうだって聞いたわけじゃないんだけどねぇ」
「え」
「だけど、あんたの反応で、はっきりしたよ」
女将はおもしろそうに眼を細めた。
どうやら鎌を掛けられて、シュラは見事に引っかかってしまったようだ。
「若先生から相談されたのさ。年上の女性にはなにを贈ったら喜ばれますかって。でも、年上の女性ってだけじゃよくわからないって返事して、それで、どんな相手なのかいろいろ聞いてるうちに、若先生があんたの名前を言ったんだよ」
それは雪男が言ったというより、女将に雪男が白状させられたというほうが正しい気がする。
シュラはそのときの光景を想像し、雪男に同情した。
「最初は若先生の完全な片想いかって思ったんだけど、話を聞いていると、そうでもない感じでさ」
だから、今度はシュラに鎌を掛けてハッキリさせたということだろう。
上一級祓魔師で多数の称号を取得して実力は正十字騎士團ヴァチカン本部でもよく知られているシュラも、女将の手のひらの上でうまく転がされてしまったのだった。
作品名:僕の可愛い人ですから 作家名:hujio