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僕の可愛い人ですから

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ハラグロメガネ青春中



正十字学園職員室。
窓の外は黒い。
夜の職員室には、講師がふたり残っていた。
シュラと雪男である。
雪男はどうやらテストの問題を作っているらしい。
一方、シュラはその隣の席で学校の勉強とは無関係の新聞や雑誌を読んでいた。
今まで職員室に残っていたのは、なんとなく、だ。
しかし、もう帰ろうと思い、シュラはイスから立ちあがった。
そのとき。
「シュラさん」
雪男が名を呼んだ。
「んー?」
シュラは雪男のほうを見た。
眼が合う。
雪男はメガネのブリッジに手をやってから、言う。
「勝負しませんか?」
一瞬、シュラはきょとんとした。
けれども、すぐに、ニヤリとする。
「いーぞ。受けて立ってやる。ただし」
「あなたが勝ったら、僕が一食おごるんでしょう?」
「よくわかってるにゃ」
シュラはフフンと笑う。
頭の中にはトレーニングルームの訓練マシンで勝利している自分の姿が浮かんでいた。
勝ったらなにをオゴらせようかと考えながら、うきうきと、席から離れていこうとした。
だが。
「どこに行くんですか?」
そう雪男に問いかけられた。
だから、シュラはふたたび雪男のほうを見る。
「どこって、トレーニングルームに決まってんだろ」
「決まってませんよ」
「あ?」
「トレーニングルームで勝負するなんて、僕は言った覚えはありません」
「ああ?」
「勝負はここでするんです」
雪男はきっぱりと言うと、机の上にあった紙をつかみあげてシュラに見せる。
「これは僕が作った対・悪魔薬学のテストです。このテストに、あなたが全問正解したら、あなたの勝ちです」
「はあーーーー!?」
思わずシュラは大声をあげた。
「なんだそりゃ。そんなのアタシは聞いてねーぞ」
「それはそうですね。今、僕が言ったばかりですから」
「なら、そんな勝負は無しだ」
「でも、さっき、あなたは受けて立つって言いましたよね?」
「う、それは……」
「それに、あなたは仮にも祓魔塾の講師です」
「なんだ仮って」
「こんなテストぐらい全問正解して当然ですよね?」
雪男はにっこり笑った。
人によっては爽やかさ百パーセントに見える笑顔だろうが、シュラは嫌味と挑発されているのを感じた。
「ああ、わかった」
シュラは挑発に乗った。
「全問正解してみせてやろーじゃねーか!」
そう宣言し、雪男の手からテストを奪い取った。
作品名:僕の可愛い人ですから 作家名:hujio