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僕の可愛い人ですから

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迷走/疾走/暴走



「酒くさいですよ……!」
部屋に入ってきた直後、雪男が文句を言った。
しかし、シュラは気にしない。
「仕事が終わって〜、一日の終わりに飲む酒はなんでこんなにうまいんだろうにゃ〜」
シュラはヘラヘラと笑う。
華やかな色とデザインの浴衣を着ている。寝間着にしているものだ。
座っているソファの近くにはテーブルがあり、缶ビールがたくさん置いてある。
そして、手にも缶ビールがあった。
これで何本目だろうか。
気分がいい。
シュラは手に持った缶ビールを飲み干すと、テーブルの上に置いた。
そのあいだに、雪男が近づいてきていて、隣に腰をおろした。
雪男が着ているのは私服だ。まあ、こんな夜遅い時間だから当然だろう。
それにしても。
「雪男、おまえ本当にフケたな〜。サラリーマンみたいに見えるぞ?」
制服ではなく私服を着ていて、それでもサラリーマンっぽいのは、なぜなのか。
まだ十代半ばなのに。
「おまえさ〜、腹黒いところもあるけど、結局、人が良くて、自分のまわりのもん、全部、抱えこもうとして、でも、抱えきれなかったぶん、自分を責めたりしてるだろ〜」
シュラは陽気な声で軽く言う。
「もっと肩の力抜いて、楽に生きろよな」
手をあげて、雪男の背中のほうへやり、その肩を叩いた。
酔っているのは事実で、ふわふわと浮いているような気分だが、なにもわからなくなっているわけではない。
雪男のことが心配だった。
だが、真剣にそれについて話せば、逆に雪男の負担になりそうだし、だいたい自分のカラーではない。
ただ、自分の言ったことが、雪男の中にほんの少しでも残って、それが良いほうに作用したらいい。
さて、もう一本飲もうか。
そうシュラが思ったとき。
「シュラさん」
雪男が名を呼んだ。
「ん〜?」
「……キスしてもいいですか?」
「……」
これがビールを飲んでいる最中なら、ブッっと噴きだしているところだった。
いちいち聞くなよ、そんなこと!
そうシュラは胸のうちで怒鳴った。
雪男はシュラの返事を待っている。まるで、待てと言われた犬のようだ。
こういうときはサラリーマンから十代半ばの少年にもどるらしい。
シュラは雪男の歳不相応な落ち着きと疲れっぷりを心配しているが、急に年相応になられても、状況が状況であるし、困る。
もう少しスマートに事を運んでほしい。
……いや、スマートに事を運ぶ雪男というのは、なんだか恐い気もする。
だが、それにしても。
アタシにどーしろって言うんだ!
うがーっと頭を掻きむしりたい気分である。
落ち着かない。じっとしていられない。
それなら、いっそ。
こっちから襲ってしまえ。
作品名:僕の可愛い人ですから 作家名:hujio