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【どうぶつの森】さくら珈琲

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10.展望台のフーコ


「ホホー。ウチのフーコはほんっとに一日中星ばかり見て……。地上のモノにはなんの興味もないのですかね」
―――それに比べて、フータさんは土の中のモノが好きだよね。
「そりゃまぁ……ホー!! これは三葉虫じゃないですか! やはり化石は素晴らしい! 化石はロマン! 古代と現代を繋ぐ絆……」

 兄妹ってやっぱり似るもんだなぁ、とフータさんとフーコちゃんを見ていると思う。
 博物館の一階にはフータさん、二階にはその妹のフーコちゃんという、フクロウの兄妹が勤めている。
 マスターの喫茶店も一階にあるから、フーコちゃんがいる二階の展望台に行く機会はごく少ない。
 他の住人たちもそれは同じらしく、天体コーナーに客がいるのをほとんど見たことがなかった。

「フーコはある意味マッドサイエンティストですよ、ホホー」

 フータさんは呆れながら言った。けれど、どこか誇らしげでもある。妹さんが自分と同じように研究熱心で、嬉しいのかもしれない。

―――星が見えない昼間はどうしてるの?
「さぁ……生まじめなヤツなので寝てるとは思いませんが……夜と変わらず天体観測してるんじゃないですかね?」
―――昼間なのに?
「ええ、特殊な望遠鏡で、昼夜問わず様々な星が見えるらしいですから」

 それってすごい。わたしは星のこと、よくわからないけど。そんな物があるんだ。
 しかし、兄であるフータさんはやっぱり妹さんが顔を出さない日が続くので心配になるらしい。
 そんなこんなで、何故かわたしが様子を見に行くことになった。本人曰く、「お兄ちゃん、邪魔しないで!」といわれるのが怖いみたい。やっぱり兄妹でもそういうこと言ったり言われたりするものなのかな。
 普段ほとんど寄ることのない展望台は、階段をあがるにつれてだんだん暗くなっていくから少し怖い。足元を注意しながら上がっていく。
 そして、そこには予想通り、フーコちゃんがいた。
 とりあえず元気そうだ。というか昼寝をしているのだけれど。まぁ、これは夜行性フクロウ兄妹だから仕方がないことだろう。むしろ夜のために昼間は無理せずに休んだ方がいいのにとも思うから起こさないでおこう。
 とりあえず生存確認はしたし、一旦戻ったほうがいいかな?
……と、思ったら。

「!?」
―――!?

 急にフーコちゃんの目がカッと見開いて、飛び上がるほどびっくりした。
 ああ、そうか。フクロウだから、わたしの存在を気配で感じ取って目を覚ましたのか。しかし、いきなりのことでいまだに心臓が、バクバク言っている。

「どどどどうしましたか!?」
―――えっと……さくらだけど。

 とりあえず、知り合いなのに名乗っておくわたし。

「あ、ああ! さくらさんではないですか! お久しぶりです!!」

 短いあいさつはしたものの、驚きすぎて二人ともしばらくまともに口がきけず、気まずい沈黙が流れた。

―――え、えっと、起こしてごめんね。昼間だけど、大丈夫?

 夜行性でしょ? と聞こうとしたら慌ててさえぎられた。

「ちょっと休憩してただけです! お兄ちゃんと一緒にしないで下さい!」

 それを聞いて、わたしはつい笑ってしまった。つられてやっと落ち着きを取り戻したフーコちゃんも、笑い始めた。

「久々のお客さんだからすごく嬉しいです! さくらさん、お時間があれば星でも見ませんか?」
―――ほ、星……?

 一応、星は晴れている日なら、ほぼ毎日見ている。しかし知識がないから、どれも同じに見えてしまう。そんなわたしが望遠鏡で見たところで理解できるのだろうか。

「今はアール座がよく見えますよ! 肉眼で見るには明るすぎますがこの望遠鏡を使えばばっちりです!」
―――それが、特殊な望遠鏡ってやつ?
「そうです! 昼も夜も、星はちゃんと空にありますからね!」

 星に負けないくらい輝く彼女の目と勢いに、わたしはだんだん引き込まれていく。

「地球は一日一回、自分で一回転して、一年かけて太陽のまわりを回転するんです!
 だから日によって見える星が少しずつ違ってくるんですよ!」

 そんなこと、初めて聞いた。

―――地球って回ってるの? なんでわたしたちは落ちないの?

 フーコちゃんはなんだか専門的な言葉や法則を持ち出して、資料まで広げて丁寧に教えてくれた。
 一人暮らしを始めてからろくに勉強をしていないわたしは、たちまち混乱して頭の中が情報の大洪水になってしまった。

―――なんか複雑すぎて頭がついていかないんだけど……どういう意味?

「いけない、難しく言いすぎてしまいました。例えばさくらさんがジャンプしますよね。
 そしたら垂直に飛んだ場合、もちろんジャンプを始めた地点に戻るでしょう? これを慣性っていうんです。
 だって慣性がなかったら地球の回転にあわせてどんどん着地地点が変わって海まで越えてしまいますからね!」
―――なんか、すごいんだね、カンセイって。
「話を戻しますけど、地球は太陽のまわりをまわったり、自分でも回転したりしてます。だから同じ星でも見え方が少しずつ変わるんです。」
―――星ってみんな同じじゃないの?

 これをいうと、フーコちゃんは銃で撃たれたように、ショックな表情を見せた。しまった、今の発言は研究者に対してデリカシーがなさすぎる。
 説明するより見せた方が早いと思ったのだろう。フーコちゃんは、わたしの手を引いた。

―――いいから、この望遠鏡を見て下さいよ!

 引っ張り出されたわたしは、言われるがままにレンズを覗き込んだ。
 覗くと、確かにそこには星があった。それは、わたしの今までの価値観を大きく覆した。