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Da CapoⅨ

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目覚める朝



---朝は嫌いじゃない。

また新しく生まれた日の始まりに、出逢いが必ずある。
狙っている訳ではない。
ただ、そんな時が多い気がしている。
これは望んでいるから、”誰か”がお節介をして、心の中のどこかに隠れている願望を具現化しているのだろうか。

流れる風景を車の中から眺める。
何時もの時間の過ごし方。
冷たい空気も、今いる空間では関係なく、文明の利器で随分と楽をさせて貰っている。
人間とは我儘だ。
どこまで言っても欲が収まらない。

俺も例外ではないのだろう。
もっと計算をして生活をしていた過去の日々が、少し懐かしく思えた。
帰りたいとは思わないが、”傷つく”何て言葉を考えなくても済んだ。
今は少し、

(…怖いのかもしれない…)

何に傷つくのか、具体的に言葉にしたら野暮だ。
野暮と言う言葉に逃げているだけだ。
本当は、全部言葉にしてしまえばいい。
だが、それを許さない自分がいる、身体の中に、頭の中に。
それを押さえつける方法を、俺はまだ模索している。
まだ見つからない。

(時間は限られていると言うのに…)

車窓から外を眺める。
冷たい空気に街は包まれている。
キラキラ輝いた太陽の光で、身体がゆっくりと今日になじんでいく。
通り過ぎる人々から吐かれる白い息が季節の色を更に深まらせる。

本当は夜の方が俺には合っていると思う。
誰にも邪魔されない静寂な時間。
元々皆静かに過ごしている。
広い家では、きぃきぃと時々聞こえる木材の軋む音が響くだけだ。
それが、この家に「生きている人間」の証を示している。
随分と現実離れしている、現実。
日常とは、人それぞれにあり、俺にとっては「死んでいるように生きている」のが日常、なのだ。

(ん?)

坂道を下を向きながら歩いている人間が目に飛び込んでくる。

(随分遠くからなのに…)

俺の中に、お前を見つけるセンサーが出来ているらしい。
彼と同じくらい敏感な。

(…なんだろうね、本当に…)

運転手にスピードを落とすようにと伝え途中で降り、彼女の後方から歩いて行く。
気付かれないように。

「やあ、日野さん。おはよう」

そして、何時もの微笑みで君を驚かせる。
返事で返ってくる声があまりにも驚愕の色が塗りこめられていて、何だか面白い。
常に感じているが、予想外の反応が新鮮だ。
何時も見ている驚きの表情も、日々変わる。

今日も、新しい日の始まりは君の顔、声で、俺の身体が目覚めていく。

作品名:Da CapoⅨ 作家名:くぼくろ