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ふざけんなぁ!! 9(続いてます)

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歌を忘れたカナリアは? 6







窓ガラスがスモーク張りの白いワゴン車が、カメラを構えた取材陣の群れからぽつんと離れた所で停車していた。
中にはスーツ姿の男が4人、いずれも外国人だ。

≪「イザヤ オリハラ」とは、確かな情報屋なのか?≫
≪ジャパニーズマフィア、粟楠会の紹介だ。間違いはない筈だが≫
≪それにしても、遅い≫
≪そう急くな。時間はまだ僅かしか経っていないだろう≫

このマンションに黒猫印の宅配トラックが入り、荷物が運び込まれたのは20分前。
以降、各々がじっと三階の平和島宅をベランダ方面からウォッチングしているのに、待てども暮らせども、あの部屋は爆発しない。
カーテンは24時間引かれっぱなしなので、内部も全く見えやしない。

≪本当に、ここに「ユウヘイ ハネジマ」はいるのか? ガセネタを掴まされたのではないか?≫
≪事実、米国から出国した形跡はないのだろう?≫
≪遠隔で爆弾を爆発させてみてはどうだ?≫
≪確実にしとめたいターゲットは「ユウヘイ ハネジマ」だけだ。いるかいないか判らないのに、あのカメラの群れの前で、一か八かのロシアンルーレットなどできるか!!≫
≪だが、我々にはもう時間がない≫
≪期限が迫っているのは判っている。だから確実に殺せる爆弾を用意したんじゃないか≫

≪やはり、皆で直接、平和島家に赴いた方がいいのではないか? どの道、死体の偽装は粟楠会に任せる事になるのだし≫
≪ならば、先に外のマスメディアのカメラを遠ざけねばならないだろう。我々の姿を、僅かでも映像に残す訳にはいかないのだから≫
≪どうしたものか≫

上司に指示を仰ごうか迷っている最中、突如外が騒がしくなった。
今まで不動だったカメラとリポーターの群れが、にわかに動き出す。

≪何かあったのか?≫
≪まさか、爆弾の時限装置が解除されたとか?≫
≪おい、あの音はもしや……?≫

日本の治安を日々守ってくれる、頼もしいツートンカラーの車。
そのサイレンがけたたましく鳴り響き、段々とこちらに向かってやってくる気配に、四人は顔を見合せた。

≪おい、いつでも逃げ出せるように、車のエンジンをかけとけ!!≫


★☆★☆★


その同時刻の事。

「あ、私ちょっと、トイレ……」

帝人は慌てて幽の部屋を飛び出た後、そろりそろりと玄関に向かった。
勿論、行き先は正臣のマンションだ。
マックのシフトは18時からと言っていたから、今の時間なら家にいる筈。

物音を立てないように運動靴を履き、息を飲んでドアノブを回す。
だが、扉を開けた途端、帝人は凍りついた。

(何!? 何何何何ぃぃぃぃぃ!?)


防音完備の室内では全く聞こえなかった、救急車とパトカーのサイレンがけたたましく鳴り響いて、マンションの真ん前で止まったのだ。
廊下の窓下を覗けば、この建物の外に群がる、野次馬の頭が一杯。
こいつら一体何処から沸いて出た?

(何の事件かな?)

丁度、廊下で屯している叔母さん連中の『切り裂き魔』とか『女子高校生』とか、不吉なヒソヒソ声も聞こえるし。
噂話に混ぜて貰おうと、ひょっこりお外に出ようとした瞬間。
「ぐえっ」
襟首をがっしり捕まれ吊るされて、家の中に引き摺り戻される。
振り返れば静雄が怖い顔して睨んでいた。

「お前の頭はカラか。爆弾送りつけられた直後に、一人で何処行くんだ。あぶねぇだろが!!」
ご尤も。
でも。
「首絞まってます!! 窒息死寸前です!! 降ろして降ろして!!」

ぱたぱた暴れても、怒れる魔人は吊り上げたまま、荷物を運ぶようにのっしのっしと幽の部屋へと逆戻りする。
扱いが酷い。

「……でも、でも、私、今パソコンが……、どうしてもインターネットが必要なんです……」
「ああ? 急に何でだ?」
「ちょっと、調べたい事ができまして」
「何を? 携帯があるだろ」
「そんなんじゃ無理です!!」

静雄はくっきり眉を顰めて、ぽいっと床に帝人を落とし、ギロリと睨みつけてきた。

「……まさかお前、さっきの胡散臭ぇカードの主、知ってんのか?」
「え……、えっとぉ……」

流石、野生の勘!!
誤魔化したくても上手い言い訳なんて思いつかず、たらたらと冷や汗が滲み出てくる。

「誰だ? 何処のどいつだ? 何が目的だ?」
「判りません。それを今から調べようと思って」
「お前がどうやって? ああ?」

益々凄みを増して睨まれても。
涙目であうあうしていたら、セルティがぽんと静雄の肩を叩いた。

≪帝人はな、実は凄腕のハッカーなんだ≫
PDAの画面に目を走らせた彼は、びっくり眼でまじまじと指差して。

「お前って、犯罪者だったのか!?」
「違います!! 失礼ですよ静雄さん!! 私はSE(システムエンジニア)兼ホワイトハットを目指して勉強中の、単なるクラッカーです!!」
「意味わかんねぇ!! えすいーに白い帽子とスナック菓子が何だってんだ!?」
「兄さん、それ、意味全然違う」
「ああああああ? なら幽、お前帝人の言っている事、判るのか?」
「大体は」

≪新羅が来たら、帝人もサイドカーに乗せてやるから待ってろ。私が連れ出すなら静雄も許可をくれるだろう。ウチに来ればネットができる≫

一緒にPDAを覗き込んだ幽が、こっくり小首を傾げた。

「なら帝人。君、ネットさえあれば、俺に今何が起こってるのか調べられるの?」
「はい」

こくこく頷くと、幽は机と本棚の僅かなスペースに、立てかけてあった黒く平たいバックを取り出した。
机の上に乗せファスナーを開くと、その中からは結構な厚みのある、旧式のノートパソコンが現れ、帝人の目が点になる。
『灯台元暗し』とは、言ったものだ。
まさかこの家に、パソコンがあるなんて!!

「一年近く使ってなかったけど、モバイルデータ通信、自動引き落としのまま解約し忘れてたからまだ使える筈。光よりかなり重たいけど、いい?」
「う、うわぁぁぁぁ♪ 十分です♪♪」
「じゃあこれあげる。俺、家に置いてある、ディスクトップのパソとスマホで十分だし。ネット環境はおいおい兄さんと相談して「私のパソコンだぁぁぁ私のパソコンだぁぁぁ♪♪ 嬉しいよぉぉぉぉぉ♪♪ ありがとうございます♪ 大事に使います♪♪ いやっほー♪♪ 幽さん、大好きぃぃぃぃぃ♪♪」……って、聞いてないね帝人……」

幸せすぎて、宝物をぎゅっと抱きしめて飛び跳ねまくる。
スペックが家庭用なのでしょぼいけど、ちょいとメモリ増設してOSも最新に更新して、ソフトを色々ぶち込み、慣らしていけばどうにかなるだろう。

「俺だって俺だって、帝人に新品のパソコンを買ってやろうと計画してたんだ。畜生!! 門田達め、邪魔しやがって……。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すブッコロス………!!」
≪静雄、落ち着け!!≫
後ろで、バーテン野郎がうじうじと壁に懐きながら背中を丸めているが、今は知ったこっちゃない!!

(ああ、もう、……待ってろよあのクソ男!!)

パソを抱えたまま部屋を飛び出し、静雄から貰った自室に戻って、通学用肩掛けカバンを漁る。
文房具ケースから取り出したのは、青色のUSBスティックだ。
この中には、自分が4ヶ月前まで厳選して貯めまくったクラッキングツールの全てがある。