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金色の双璧 【連続モノ】

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Scene6 08.逆襲


-1-


 平穏な日々が過ぎていく。
 空は青く、雲は白い―――。

 そんな当たり前のことをぼんやりと思いながら、青い草の匂い立つ野原でゴロリとアイオリアは寝転んでいた。平和であることを願い続けていたはずなのに、心のどこかで感じる物足りなさ。
 それが埋まるのは僅かな時だけ。
 空虚な心の隙間を埋めてくれる者は遠く離れた場所にいる。心を傾かせ、ぬくもりを与えてくれる相手がすぐ傍にいないことはやはり寂しいものだ。
 聖域で共に暮らしたいと願うのはごく自然なものだと思い、聖域がシャカにとって『家』ではなく『戦いの場』であることはわかってはいたことだが、インドで離れて暮らさずに聖域に戻って来ないかと僅かばかりの期待を抱いて云ったことに対し、シャカは「それはできない」と即答した。何故だと理由を尋ねてみれば、決まってシャカは沈黙する。
 それでも諦めずにタイミングをみて願い出てはバッサリと断られ・・・を繰り返し、幾度となく逢瀬を重ねた。
 毎日とはいかなかったが、最低でも週に一度はインドにアイオリアから会いに行くようにしている。シャカはインドに戻ってから一度たりとて、自ら聖域に赴こうとはしないためだ。
 放っておくと本当に連絡さえ、まともに寄越さない男であることを最初の時点で学習したため、結局、待ちきれないアイオリアがインドに足を運ばざる得ないのだ。
 いっそのことインドに居座ってやろうかと、『ちょっとずつ自分の物を増やそう作戦』なんぞも試みてはみたが、しっかりと獅子宮に送り返される始末だ。
 お気楽兄貴に大笑いされながら、めげそうになる心を奮い立たせて、シャカに会いに行く自分は情けないを通り越して健気かも・・・と思いつつ、それでもやっぱり自ら会いに行く。
 そして、会えば必ずといっていいほどガツガツとがっついてしまう。
 それがまた情けないこと限りないのだが・・・。
 シャカの本当の良さをひとたび味わってしまえば、彼を前に平静ではいられなくなってしまった。『会うたびにサカられてたんじゃ、さぞかしシャカもいい迷惑だろうな〜?』なんて心無い兄貴の一言にグサグサと傷ついて辛抱をしてみれば、シャカに貰った仏像にまで欲情しそうになったこともあった。
 それに我慢すれば我慢した分だけその反動も大きく、滅多なことでは根を上げないシャカを『降参』させるぐらいにサカってしまい、キレたシャカに自分で処理するか、定期的に会いに来るよう言われる始末だ。
 それが目的だと思われてしまうのはアイオリアとしてはかなり落ち込む。結果的に行為に至ってはいるけれど、それ全てシャカを愛しく思う心あってこそ、なわけである。
「平和だから・・・体力持て余してるんだろうな・・・」
 流れる雲をぼんやり見ながら、そんなことを呟く。
 命を賭けた真剣勝負の高揚感を恋しがっているのかもしれない。唯一それに似た感覚を得られるのが結局、シャカとの行為。
 だからこそ虜になっているんだろうなと自分なりに分析したアイオリアである。
「・・・羨ましいくらいに能天気なことを考えているのだな、おまえは」
 ひょっこりと顔を覗かせた疲労と哀愁漂う男に顔を引き攣らせた。
「・・・さ・・・・サガ・・・どうしてここへ?」
「何度も呼びかけていたのに返事が返ってこぬとシオン教皇に云われてな・・・爛れた妄想が垂れ流されている元を辿ってきたわけだ。」
「爛れた・・・妄想・・垂れ流し・・・。ということは・・・まさか!?」
「たっぷりと、見たくもない濡れ場を拝ませて貰った。アイオリア、あまりあの子に無体なことをしてやるな」
 ひくひくと口端を引き攣らせるアイオリアに対し、サガはげっそりとした表情で答えた。シオン教皇がムウを愛でるように、アイオロスがアイオリアを愛でるように、サガもまたシャカを愛でているのを知っている。
 アイオリアがシャカに抱く愛情とはまた違った形での愛情だ。同様にシャカもサガを慕っている。まぁ・・・要するにアイオリアからすれば「お義兄さん」もしくは「お義父さん」的な存在であるのだ。
 思わず飛び上がるように起き上がると、アイオリアはぴしりと姿勢を正し、小さな声でスミマセンなどと呟いた。
「今度・・・時間をとって私のおらぬ間にシャカを怪我させた件と、このことについてはじっくり話すとして、とにかくシオン教皇の下に参じろ。前もって言っておくが、相当ご機嫌は悪いからな、覚悟して行くように」
 はぁ・・・と深い溜息をつくサガはこれでもかというぐらい陰鬱とした表情を浮かべていた。本当に黒くなるのも時間の問題かもしれないと思いつつ、サガが時間の都合をつけられる日はきっと当分の間は来ないだろうと僅かに安心しながら、取り急ぎ教皇の間に向かった。

作品名:金色の双璧 【連続モノ】 作家名:千珠