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金色の双璧 【連続モノ】

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Scene3 38.教皇の間




「ばっかもーーーーーん!!!!」
 5.1chサラウンドのように大音量で迫る、教皇ことシオンの叱責を朝っぱらから受けているのは獅子座の黄金聖闘士アイオリアである。
 謁見を願い出て早々、迎え入れられた教皇の間の中心にある玉座では、蒸気機関車の如く頭から湯気を噴出させているかのような教皇シオン。思わず回れ右をして戻りそうになったアイオリアにすかさず、上記の言葉が降り注いだ。
 教皇の間は早朝にもかかわらず、従者たちの往来が引っ切り無しに続いており、途切れることはなかった。周囲にいた者たちはシオンの大きな怒鳴り声に驚き、ヒッ!と小さく悲鳴を上げた。中には持っていた書類をバサバサと落とし、慌てて書類を拾っているものもいた。
 喧々囂々とした中で思い切り首を竦め、大きな身体を折りたたむように縮こまる、アイオリアの身には容赦のない叱責の集中豪雨が降り続ける。叱責を受ける理由はアイオリアも重々承知しているからただひたすら縮こまる。
 先日の痴話喧嘩?によって自宮を破壊したことと、もう一つ・・・結局、あの喧嘩が原因でシャカは肋骨を2本折るほどの重傷を負わせたこと。
 最初は笑っていたシャカであったが、どんどん顔色が悪くなっていったのだ。慌てて夜中ということも忘れて、シオン教皇に救いを求めた。とっくに就寝に就いていたシオンを叩き起こすのはかなり無謀なことだったが、従者にシャカを任せてアイオリアはシオンを起こした。簡単に事情を説明したが、その時も相当不機嫌であったのは言うまでもない。シオンはあからさまに気分を害していた様子だが、とりあえず、シャカの処置を優先するということで、翌朝、改めて教皇の間に来るようにとアイオリアは告げられた。
 シオンと入れ違いに出てきた従者の「肋骨折れてましたよ」の言葉にくらりと眩暈を覚えながら、「今日はここでお休み頂きますからお引取りを」とアイオリアはその場を追い返された。
 下手な折れ方をしていれば、本当に命が危険だったのだと知って、アイオリアは冥界に届くのではないだろうかというほど凹みながら、とぼとぼと自宮に戻り、一睡もできずに夜明けを迎えてこの場に訪れたのだった。
「私闘は禁止だと、あれほど口をすっぱくして言っていたにも拘らず!何度言えばわかるのだ、おまえたちは!シャカはシャカでしれっと『訓練でした』と下手な嘘を言いおって。どこの世界に夜中に骨を折るほどの訓練をする馬鹿がおるか!!さぁ、正直に吐け!」
「あ――・・・あれは・・・訓練です。断じて私闘ではありません。ハイ。シャカも訓練用の闘服を身につけていましたよ・・・ね?」
 私闘と認めてしまえばシャカにも処罰が下ってしまうと思い、下手な嘘を突き通そうとするアイオリアである。理由がどうであれ、自分だけならばまだしも、シャカにも処罰が下されるのだ。それだけは避けたかった。
「確かに闘服を着ていたと聞き及んでおる。いつもの袈裟なら楽に脱がして儂が行ってすぐにでも治療を施せたはずであろうからな。普段着慣れぬものを着ていたために自分で脱ぐこともできず、かといって従者たちが脱がそうとすれば、暴れて手に負えぬといった有様だったらしい。あのあと大分と待たされたわ!」
「ぬ・・脱がす???」
「治療のためだ。服を着たままでは治療など、できぬだろうが。やっとこ準備が整って儂が呼ばれていってみればまぁ・・・あやつ、あれで鍛錬しておったのか?ギスギスではないか。あれでは骨も折れて当然だ。もともと細ッこい子供ではあったが、全然変わっとらんな。縦ばっかり伸びおって・・・。肌艶はいいが、絶対的に肉が足らん。当分の間、あやつには魚の骨と肉でも食わせておけ」
 ギスギス・・・肌艶はいい・・・つまり、教皇はシャカの身体を嘗め回すように見たんだな・・・と、メラメラと嫉妬の焔を密やかにアイオリアは燃やす。
「ん?何だ、その目は?」
「いいえ!何でもありませんっ!どうかお構いなくっっ!」
 自分でさえ滅多に拝ませて貰えないのに、教皇特権乱用じゃないのか!?などとアイオリアは御門違いなことを思いつつも、ほとんど逆恨みに近い感情を持て余しながら、不満顔で教皇を見た。
「どちらにせよ、当分の間は身動きとれまい。おまえが負わせた怪我だ、しっかりと面倒をみよ。あと!獅子宮の損傷は自分で修復しろ。よいな?」
「・・・寛大なご処置をありがとうございます」
 自らの失態なのだから、当然であろうし、それ以上の科料はないようなので、厳格なシオンにすれば本当に寛大な処置だと、感謝の気持ちさえ湧いてきそうなアイオリアである。
「ところで。話は変わるが」
 ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべる教皇にぴくりと口端を引き攣らせ、何を問われるのだろうかとアイオリアは警戒した。
「・・・な・・なんでございましょうか」
 にんまりとシオンは笑みながら、アイオリアの反応を楽しむかのように目元を眇めた。
「あやつ、愛い反応を示すな?」
「!!!・・・な・・っ!?」
「熱っぽい目で“あんっ”・・・などと仰け反りおって。フフフ」
「教〜〜〜〜皇〜〜〜〜っ!!!」
「・・・冗談じゃ。本気にするな、馬鹿モンが。カッカッカ!」
 さも楽しげに胸を反らしながら笑う教皇を見ながら、アイオリアはほんの少し、サガが黒い気持ちになったのもわからないでもないなと思った。こんな年寄りを毎日相手しているであろうサガの気苦労を思うと、またサガは黒くなるかもしれん・・・と僅かばかりの危惧を抱きつつ、がっくりと頭垂れた。
 そんなアイオリアの上を教皇の豪快な笑いが通り過ぎていく。さめざめとその意地の悪い笑いを受け止めながら、念のため、ほんとうに教皇から変なことをされなかったか、シャカに後で確認しておこうと思うアイオリアなのであった。


作品名:金色の双璧 【連続モノ】 作家名:千珠