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サイレン

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intermission1



「ていうか何で俺が追い出されなきゃいけないんだよ」
「彼の傍に置いてはおけない」
「だからなんでだよ!こんなところで何しろって言うんだよ!」
「じゃあ聞くけど、彼の傍で君は何をするつもり?」
「何って」
「具合の悪いのを良いことに無理矢理キスのひとつでも?」
「するかバカ!!」
「し、声が高い」
「誰のせいだ」
「じゃ、彼を眠らせもせずに根ほり葉ほり聞き出す?」
「んなことしねえよ」
「ほんとうに?」
「心配じゃないのか」
「心配だよ」
「だったら」
「無理に聞き出すことが正しいと思えない、少なくとも、今はね」
「違う。見ない振りをすることが正しいとは思えねーんだよ、俺には」
「うん。彼が楽になれるならそれでいい。けれど余計に苦しめるんじゃ意味がない」
「なんであんな傷だらけなんだよ、どうやったらあんなとこ怪我できるんだよ、あれで隠してるつもりか!」
「転んだ、と彼は言ってる。それ以上のことは分からない。まだ。ね」
「・・・分かってる」
「うん、分かってるって分かってる。その点では意見の一致を見てるね」
「なんだよ結局振り出しかよ、話進んでねえよ」
「試行錯誤が許されるテーマじゃない」
「分かってる。お前のそれが逃げとか待ちとかそういうんじゃないってことも」
「おや光栄だね」
「バカにしてるだろ」
「まさか」
「ピーターは?」
「彼を見張ってるよ。部屋から出ないように」
「階段から落ちかけたって、ほんとか?」
「階段から落ちかけたと言うより、飛び降り一歩手前って感じだったみたいだよ」
「なんだよそれ」
「ピーターが一緒で良かった」
「・・・勘弁してくれよ、もっと自分に気ぃ遣えよ」
「僕が君を殴ろうとしてるのを見て、彼、なんて言ったと思う?」
「お前さっき本気で殴る気だっただろ」
「当たり前だ。本気じゃなきゃ君を止められない」
「んでなんて言ったんだ?」
「"僕にできることがあったら協力するから、何でも言って"」
「・・・あのバカ」
「自分が心配されてるなんて、微塵も思ってないね、あれは」
「正真正銘のバカだ」
「君に言われたくないと思うけど」
「お前にだって言われたくないだろうよ」



作品名:サイレン 作家名:雀居