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比翼連理

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27. 無慈悲ナ籠

 
-1-

「――――雑兵に用はありません。お下がりなさい。無駄に命を散らせる必要もないでしょう」
「我らを雑兵とな……さすがはオリンポスの女狐よ。その恥を知らぬ傲慢な態度、悔い改めさせてやろうぞ」
 じりじりと睨み合うティターン一族とアテナ。そしてアテナの周囲には黄金聖闘士や白銀、青銅聖闘士たちが並んでいた。
「我ら神族の力にかかれば人間の力など赤子の手を捻るようなもの。そのようなものたちに身を守らせるとは、ほんにオリュンポスの神は知恵なき卑しき者よの……くっく……」
 下卑た笑いで嘲弄する男神の言葉をまるで小川のせせらぎを聞くかのように柔和な笑みを浮かべてアテナは静かに答えた。
「あのハーデスや双子神でさえも打ち滅ぼす力を秘めたわたしの自慢の聖闘士たちです。悪いことは言いません。冥府の闇にお戻りなさい」
 一気に緊張が高まる中、涼やかな声が響いた。
「アテナの言うとおりだな。我が兄君がここにおらぬのはおまえたちを冥府にて出迎えるつもりなのだろう」
 背後からかけられた明るい声にアテナと聖闘士たちがチラとその声の主を伺う。
「海皇……なぜ、あなたが……?」
 思わず零したアテナに甘い笑顔で海闘士を率いて現れた海皇は答えた。
「そんな風に恐い顔で睨まないで頂きたい。なに……貴女の邪魔をするつもりはありません。私は私でこやつらにしっかりと報復せねば気が済まないだけなのですよ。第二、第三の海底神殿を破壊されては、さすがの私も黙ってはおられません」
 アテナに向けていた甘い笑顔はすっと消え失せ、冷酷な笑みが海皇の面に張り付いていた。海皇と共に現れたカノンは海龍の鱗衣を身に纏いながら、目配せする兄…サガの横に並んだ。
「……突然のお出ましだな。漁夫の利を得るかと思っていたが」
 サガがぼそりと小声で呟くと両肩を小さく上下させてカノンは笑った。
「初めはそのつもりのようだったが。冥王より齎された情報により、状況が変わったようだ」
「どういうことだ?」
「詳しくは俺にもわからぬが。何らかの盟約を冥王と交わしたようだ。このまま黙って見過す訳にはいかない事情でもあるのだろう」
「―――すべてを無に帰する力」
 思案顔で俯いたサガの言葉をはっきりと聞き取れなかったカノンは訝しげにサガを見た。
「え?今なんと……」
 カノンが問い質そうと口を開いた時、大広間に満ちていた殺気が爆発した。
「―――!?」
 どちらが先にしかけたのか。
 双方の小宇宙が閃光を放ち、激しくぶつかりあった。戦いの狼煙が上がったのだ。すかさず臨戦態勢を取り、サガもカノンも双方の主を守るべく意識を集中させた。
 兇暴な輝きを放つ神々の小宇宙の刃は、容赦なくアテナの聖闘士にもポセイドンの海闘士にも降り注がれた。対する聖闘士も海闘士たちも己の小宇宙を燃焼させ、迎え撃つ。
 斬撃と防御とがめくるめく速さで交替し、繰り返された。まるで剣戟でも交えるかのように火花と飛沫が周囲に満ちる。
 戦陣に立つ聖闘士たちを守護するかのように一片の迷いも感じさせぬアテナの小宇宙が聖杖から揮いだされる。その小宇宙はかつてないほど力強く美しく輝き、聖闘士たちに力を与え続けた。
 ティターン神族だけでもやっかいな存在であるのに無駄口を叩く暇もないほど、押し寄せる醜い姿をした化け物たちにサガは舌を巻いた。
「カノンッ!わたしに合わせろっ!!」
 少しでも敵兵力を削ぎ落とす必要があると考えたサガはカノンとともに強大な異次元へと繋がるゲートを開く。
「あばよ。二度と戻ってくるなよ」
 彼方へと消えていく化け物たちに声をかけるカノンに向かって、空気を切り裂き向かってくる力があった。
 咄嗟に身をかわしたが、ぴしりと海龍の鱗衣に亀裂が生じた。
「あら、残念。よく避けられたわね?」
 赤い唇を吊り上げ嘲弄する美女にふんっとカノンは鼻を鳴らした。
「なかなかの剛の者たち。それにとても愛らしい双子だわ。ふふふ。二人仲良く―――消してあげる」
 艶めいた瞳を差し向けると、サガとカノンに向かって優雅にもみえる弧を描きながら、銀色に輝く光の鞭がしなる。その破壊力は楚々と立つ美しい女の姿からは想像もつかぬもので、攻撃をかわし損ねた敵が無残に血肉を飛び散らせ、頑強な造りの城壁さえも破壊した。
 バラバラと崩れ落ちる天井を避けながら、攻撃を加える。他の聖闘士たちもティターンの強き力に耐えながら、各々の必殺技を繰り出しつつ敵勢力を少しずつ殺いでいった。
 聖闘士、海闘士など関係なく互いに協力し合い、敵を打ち滅ぼしていく。不思議な高揚感をその場にいた者たち全員が感じていた。
 神々の争いというよりはむしろ、人間と神々との争いのような気持ちになるものも中にはいた。

 アテナのために。
 ポセイドンのために。
 仲間のために。

 そして、

 生きるために。
 守るために。
 未来のために。

 自分たちは神々と戦うのだと強い信念を抱きながら、もてる小宇宙を臨界まで燃焼させ立ち向かうのだった。



作品名:比翼連理 作家名:千珠