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比翼連理 〜 緋天滄溟 〜

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4. 火種



「―――不穏な気配を感じたが、そういうことか」
 突然、結界に守られた部屋に姿を現したタナトス。不意の出現に驚くシャカにもかまわず、矢継ぎ早に用件を捲くし立てた。
「おまえの不調と此度の迎え、何かあるとは思うが……おまえがアイツの申し出を拒否し、俺に命じるならば、この部屋に一歩たりともあいつを此処には入れさせぬことができる」
 静かに寝台の上で座したまま、タナトスの言葉を聞いていたシャカはぴくりと閉じていた瞼を押し上げ、まじまじとタナトスを眺めた。
「それでは……ハーデスの命に叛くことになるのではないのか」
「いいや。俺はハーデス様から直々におまえを守り、不測の事態が起きた際にはおまえの言葉で動くように命じられている」
「なるほど」
 ようやく合点がいったシャカは気怠げに瞳を閉じた。
「―――私の言葉が、つまりはハーデスの勅命、か」
 銀色の雄々しい神にとって、それは屈辱なのか、はたして誉れなのかはシャカにはわからない。ただ、わかることといえば、今はシャカ以上にアーレスとかいう男が目障りなのだろうということだ。不快さを隠しもしない死神に苦笑するシャカである。

―――それはさておき、どう行動すべきか。

 考えあぐねていると部屋の扉が重い音を伴って開いた。
「タナトスさま?なぜ……ここに」
 唖然とした様子のパンドラがシャカとタナトスを見比べた。続いて、小さな少年が入ってくる。物怖じすることもなく、寧ろ好奇心を剥き出しに室内を満遍なく見渡していた。
「―――どうする?シャカ」
 返答を急がせるタナトスに、シャカは小声で「少し待て」と声をかけると、ふてぶてしい気配を放つ 侵入者を見定めた。少年もまた同様にシャカを眺め見る。少年は紫紺に輝く瞳でシャカを見定めた。
「おまえが……ハーデスの秘宝か。どれ程のものかと期待していたが。フ……“まがいもの”だな。所詮、人間風情ではその程度だろう」
 顎を上向かせシャカを睨めつけながら、まるで出来の悪い陶器でも評価するように少年は嘲弄った。
「―――誰と比べての言葉かはわからぬが、“その程度”だ。それに貴様の期待に応える義理もなかろう」
 冷ややかな口調で相対すとシャカはサラサラと衣擦れを伴いながら、寝台から足を下ろし、ピンッと姿勢を正した。
 サファイアの絹に黄金を鏤めたかのような刺繍を施された肩掛けをふわりと舞わせ、少年の前に歩み出るとしばし沈黙のまま、正面を捉える。
 薄く開いた蒼い双眸を差し向けて。

 ―――見た目は確かに子供。
 だが、その身から放たれる小宇宙は独特の強さに満ちている。

 それは神々に共通する『傲慢』ともいうべきものだった。
 そして、その少年の姿が偽りなのだと証明するかのように不吉な影がシャカの目には重なって見えた。
「―――剣を渡して貰おうか?」
 シャカが少年に向けて白い腕を差し出すとクスッと小さく少年が笑った。
「その前に邪魔者は消えて貰いたいが?」
 剣呑な光を放つ軍神に今度こそ、タナトスは憤りのままに前へ出ようとしたのだが、シャカがタナトスを静止した。
「笑止。邪魔者というなら、それは貴様のほうであろう。そのことはその剣がよく知っている」
「!?」
 アーレスの手元にあったハーデスの剣はあっという間にシャカの手元に移る。
 苦々しそうに顔を歪めた少年は降参とばかりに両手を挙げたが、剣を手にしたシャカが少しずつ顔を曇らせていくのを満足そうに眺めた。
 ハーデスの愛剣から伝えられる情報にシャカは美眉を顰め、唇が戦慄かせた。
「―――なぜ……なぜ、ハーデスが斯様な責めを受けねばならぬのだ」
 シャカの言葉にパンドラは顔色を失くし、タナトスもまた、息を呑んだ。
「なぜ、と問うか?おまえは。花を活ける花器が花よりも存在するなど、許されるものではなかろう?そのような花器など壊してしまえばよいものを……昔のハーデスならば、迷いもなく壊していたのに。彼は変わってしまった。俺のほうこそ問い質したいものだ……なぜだ?おまえが狂わせたのか?」
 底の知れないおぞましい微笑を口元に浮かべながら、射殺さんばかりに睨みつける少年。
 それは敵意を剥き出すように威嚇し、噛み付く寸前の野獣にも似ていた。何か答えようと口を動かしたその時、シャカは自らの身体が金縛りのように硬直していくのを感じた。
 まるで白昼夢を見ているかのように周囲の風景が歪み、静かな声が響いた。