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ooo aftre ~夜天の主と欲望の王~ 第11部 後編

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053話 はやて と小さなてのひらと祝福の風





−闇の書よ…私の願いを叶えよ!!−




違う…




−闇の書ッ!!貴様がいなければ!!!!−





違う…






−あ…あぁ……闇の書!!−

−ひぃッ!!殺される!!!!−

−だれかッ…誰かぁぁぁぁッ!!!!−





違う…





−ま…ママぁ…僕たち…殺されちゃうの?−
−よ…よるな悪魔!!この子…この子だけわぁぁぁッ!!!!−
−俺の家族には一歩の手を出させないぞッ!!闇の書!!!!−










違う…




私は、こんなことはもう、したくない。







私の名は…





そんな名前じゃない…。










「闇の書…」

雨の中、私は天を眺め、涙を流していた。
いつの間にか、守護騎士達が私の後ろに立っていた。

「なぜ、泣いているのだ?」


烈火の将が私に話しかけてきた。
なぜ泣いているかだと?

泣く理由など、一つしかないだろう。



「悲しいからだ…それ以外に一体何がある?」




「…そうか、わかった…」








悲しい…

だが、しかし…




こんな気持ち、もう慣れた…。











−053話 はやてと小さなてのひらと祝福の風−











「…こ…ここは?」


はやて はまだうつろな状態だったが、闇の書の意志と映司により、なんとか目覚めることができた。


「初めまして、我が主」

「…ん?…あんた…誰や?」


目を覚ました時、自分のすぐ目の前にいた見たことのない女性に はやて は首をかしげた。


「私は…『夜天の書』。常に主と共にいました…」

「ほら!はやてちゃんが大事にしていたあの本のことだよ!」


映司が身を乗り出し、補足説明した。
遠くでアンクが小声で「…あの馬鹿…空気読め」…と、額に手を置きながら映司にツッコミを入れていた。


「そして…私は主に誤なければならないことがあります」


闇の書の意志は肩膝を地に尽き、軽く頭を下げた。
はやて は少しずつだが頭が冴えてきたらしく、今の状況を理解し始めていた。


「私は…本当ならあなたをこのまま夢の世界に留まらせるつもりでした…。健康な身体…愛する者達と…ずっと続いていく暮らし…」


次第に はやての目に力が戻っていった。
映司は先ほどとは打って変わって真剣な表情で黙ってその話を聞いていた。


「しかし…その…」

「ふふっ…なんや?ゆっくりでえぇから言ってみ?」


はやて は闇の書の意志の手を優しく握り、微笑んだ。
それをみた闇の書の意志は自然に笑顔になり、いつの間にか不安が消えていた。


「はい…私は、この欲望の王と思いを伝え合うことで…気づいたのです…








これは…ただの『夢』だと…」


それを聞いた映司は笑顔になった。
自分の気持ちが闇の書の意志に初めて届いた瞬間でもあった。


「私は主達の生活をずっと見守ってました…本当は心のどこかで感じていたんです…。主は…こんなことは望んでいない…」

「…うん」

「あのなにげない日常が…我が主にとっては最高な幸せだったのだと…」

「…うん」

「だから…私はきっと…そんな主達に『嫉妬』してしまったんです…」


はやて はため息をし、再び闇の書の意志の手を握った。


「ふふっ…あんたも、世話が焼ける子なんやなぁ…」

「…え?」


闇の書の意志は はやて の言葉の意味がわからず、混乱していた。
そんな闇の書の意志の表情をみた はやて は少し微笑み、改めて闇の書の意志を自分の顔がある位置まで腰を下ろさせた。


「あんた…堅苦しい言葉ばっか使っても、私には見え見えやで?」

「す…すいません、我が主…」

「つまり…あんたは…







私たちの…『家族』の一員になりたかったんやろ?」

「…え?」


闇の書の意志は目を見開いた。
自分の主のまさかの答え。…いや、ほぼ確信だった。

言葉にできなかったが、こういうことだったのだろう。
…自分は、こんな簡単な答えすら出せなかったのだ。




−よくやった、映司!−

「え?…あ、ヴィータちゃん!」


自分たちのすぐ近くに、再びヴィータが現れた。
ヴィータだけではなく、その周りにはシグナム、シャマル、ザフィーラが立っていた。


−火野、お前のお陰で闇の書の本当の名前を思い出すことができた…ありがとう−

−それに…あの子も映司君のお陰で変わったようね!−

−まさか本当に心を開かさせるとはな…−


「いえいえ!俺は何もしてないですよ!」







「これからはあんたも私たちの家族や!…皆、そうやろ!?」


はやて は笑顔で映司達の方向へ顔を向けた。
それにつられて闇の書の意志もその方向に顔を向けた。


−あぁ、『夜天の書』!今日からお前も私達の家族だ!!−

−『夜天の書』…これからは共に主はやて を守っていこう−

−『夜天の書』!もうあなたは一人ではないわよ!!−

−『夜天の書』…これからもよろしく頼む…−


「夜天の書さん!!」


映司は笑いながら闇の書の意志と はやて の元に走ってきた。
そして 闇の書の意志の手を掴みながら口を開いた。


「ようこそ!!俺たち『八神家』へ!!」

「っ!!!!」


その途端、闇の書の意志はその場で立ちながら顔に手を当て、泣き始めてしまった。
しかし闇の書の意志は自分の異変に気がついた。

いつもの悲しい気持ちで流れる涙ではなかった…


「うぐ…おかしい……この涙は…一体…」

「それはな?嬉し涙っていうんよ!」

「うれし…なみだ?」

「せや…」


はやて 闇の書の意志の頭を自分の胸へと引き寄せた。
そしてその「小さな手」で闇の書の意志の頭を撫で始めた。


「……今まで辛いこと沢山あったんでしょ?…なら、私が全部、受け止める…そして、私はもう、辛い思いはさせない…」

「うっ…ぐっ…主…」

「もうえぇんや…。もう、一人で頑張ら無くても…いいんよ…」

「くっ…ひぐっ…」







「覚醒の時に…今までのこと少しわかったんよ…望むように生きられへん悲しさ…私にもわかる…シグナム達と同じや…ずっと悲しい思い…寂しい思いしてきた…」


それを聞いていた映司とシグナム達が悲痛な表情を浮かべた。
そんな中、いつの間にかアンクが映司達のすぐ近くまで来ていた。


「主…」

「せやけど…忘れたらあかん!」

「…え?」




「あなたのマスターは、今は私や!マスターの言うことは、ちゃんと聞かなあかん!」

闇の書の意志は大きく目を見開いた。
そして はやて は闇の書の意志の頭を一旦自分の胸から離し、その頬に自分の小さな手のひらを乗せた。


「…はやて…ちゃん…」

−主…−





「ッなんだ?」


二人の足元に、ベルカ式の魔法陣が展開された。
はやて は気にすることなく、そのまま闇の書の意志に話し続けた。










「名前を…あげる」









「ッ!!?」








「もう闇の書とか…呪いの魔導書なんて言わせへん…私が呼ばせへん!!」


「…う…あぁ…」