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のび太のBIOHAZARD『ENDLESS FEAR』

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AREA15『不安』


のび太と織恵と巌は、警戒しながら、『B棟』と書かれた扉の奥に入って行った。すると、のび太達の正面とすぐ左側に、通路が延びていた。それを見た巌は言う。
「正面と左側に通路があるな。まずは正面の通路から探索する」
 巌はそう言うと、正面に『ブローニングHP』の銃口を向けながら、進んでいく。15m程進むと、通路は突き当たり、通路は、左に折れていた。そして、正面には、扉が見えていた。巌は左側の通路を警戒し、のび太は、扉の傍に寄ると、突入の準備をした。のび太は一拍置くと、一気に突入した。その部屋の中には、大量のロッカーがあった。そのロッカーの全ては半開きだった。のび太は、『ベレッタM92FS』の銃口を向けながら、ロッカーの戸を開けた。



ロッカーの中には、小さめのダンボールがあった。のび太は、ゆっくりとそのダンボールを開けた。するとその中には、弾薬が詰まっていた。その他のロッカーの中にも同じ様に、弾薬が詰まったダンボールがあった。その弾薬は、『9mmパラベラム弾』、『.45ACP弾』、『12番径(ゲージ)OOBUCKショットシェル』、『5.56mm×45mmライフル弾』、『7.62mm×39mmライフル弾』、『5.45mm×39mmライフル弾』、『.44マグナム弾』等、あらゆる弾薬が揃っていた。それを見た巌は言う。
「まさか、こんな所に弾薬があるとはな」
 巌はそう言った。しかしのび太は、ある事を考えていた。
――――――――――――こんな所に都合よく弾薬が置かれているなんて有り得ない。………あるとすれば、出木杉が仕掛けたって事か。でも、そうなると、出木杉の思惑が全く解らない。出木杉は一体何が目的なんだ…? 出木杉は、真理奈ちゃんの事は任せておけと言っていたけれど、出木杉はナムオアダフモ機関の内部で何かを起こすつもりなんだろうか? 解らない。……解らないけれど、なぜか、出木杉は信用できる気がする。友達だからって理由だけじゃ無いけれど――――――――――――――。
「…のび太君?」
 いきなりその言葉が聞こえ、現実に引き戻された。その言葉を発したのは、渡井さんだった。
「渡井さん、どうかした?」
 僕はそう言った。すると、渡井さんは心配そうな表情で僕を見ているのに気づいた。―――――僕が何かしたんだろうか?
そう思っていると、渡井さんが口を開いた。
「それはこっちの台詞よ。のび太君、いきなり何か思い詰めた様な感じになるから、心配になったんじゃない。…何か悩み事でもあるの? 私で良かったら、相談相手に乗るけど」
 渡井さんのその言葉を聴いた時、僕は出木杉の事を、表情に出る程までに、深刻に考えていた事を理解した。そして同時に、出木杉の事を渡井さんに相談しても仕方ないと思った。ジャイアンやスネ夫ならともかく、僕達の事を全然知らない渡井さんに出木杉の事を言っても、恐らく、ためになる答えは返ってこないだろう。…そう考えた僕は、渡井さんに言う。
「いや、大丈夫だよ」
 僕がそう言うと、渡井さんは、僕がそう答える事を解っていたかの様に、間髪入れずに言う。
「それって、私じゃ相談相手にもならないって事?」
 渡井さんがそう言うと、僕は、渡井さんは勘が鋭い方だと思った。…………或いは僕が、判りやすい態度をしていたのかもしれないけど。
「……まぁ初対面の人間にいきなり悩み事を相談できる人もいないわよね…」
 渡井さんはそう言っていたが、何故か悲し気だった。…相談されない事がそんなに悲しいんだろうか?
僕がそう思っていると、渡井さんは、先程とは打って変わって、軽くなった口調で話す。
「で、質問なんだけど、真理奈ちゃんとはどういう関係なの? もしかして彼女とか?」
 ……渡井さんは何を考えているかさっぱり解らない。さっきまで真摯(しんし)な話をしていたのに、なぜその発想になるんだろうか? ……もしかして、明るい話題をして、僕を元気付ける作戦だろうか?
しかしその考えは、渡井さんの次の言葉で打ち砕かれた。
「ねぇ、一体どうなのよ? 仲良さそうに見えたけど」
 ………渡井さんは確実に、興味本意でこの事を訊いたに違いない。……この状況を理解しているんだろうか?
僕はそう思うと、ふと、巌さんに視線を向けた。すると、巌さんは、ロッカーの中を調べていた。こちらの話に入ってくる気は無さそうだな。
―――――――――――しかし、真理奈ちゃんをそういう風には見た事はなかったな。状況が状況だったしね。まぁ、このまま黙っていても何も進展しなさそうだから、適当に答えよう。
「真理奈ちゃんとは、ススキヶ原でのバイオハザードで出会っただけだよ」
 僕がそう答えると、渡井さんは意外にも、あっさりとこの話題を終わらせた。
「へぇ、そう」
 渡井さんはそう言うと、背後の警戒を再開した。すると、巌さんが、僕に話し掛けた。
「のび太。この部屋は、弾薬関係しかなさそうだ。他の所を調べるぞ」
 僕は、その言葉を聴くと、肯定した合図を送り、この部屋を出た。扉を出ると、まだ調査していない通路の方を進んだ。その通路は、10m程先に、左に続く通路と、正面に続く通路があり、僕達のいる地点から、約20m先では、通路が突き当たり、左に折れていた。
僕達は、ゆっくりと通路を進んで行った。勿論、周囲を警戒しているからだ。なぜだか判らないけど、この空間内には、B.C.W.の類いはいないような気がする。何と言うか、今までは、近くにB.C.W.がいると、やや空気が重い感じがしたけど、此処ではそれがない。ただ、ついさっきまで、人がいた気配はする。…………それが出木杉のものなのか、他の誰かのものなのかまでは判らないけれど。
そう考えていると、左側に延びる通路と正面に延びる通路が交差する地点まで来た。すると、巌さんが言う。
「……まず先に、左の通路を調査する」
 巌さんがそう言うと、巌さんを先頭として、僕達は、左に曲がった。左に曲がると、凡(およ)そ10m程先で通路が突き当たり、通路は、左右両側に延びていた。また、僕達がいる通路の右側の壁には、通路の奥の方に、1つの扉があり、左側には、手前と奥の、2つの扉があった。僕達はまず、左側の手前の扉から探索する事にした。僕と巌さんが扉の前にスタンバイし、渡井さんが、後方を警戒した。そして、巌さんが僕に合図を送ると、巌さんは一気に扉を開けて突入した。そして、僕もそれに続いた。扉を開けた先は、廊下だった。廊下はあまり広くなく、8m程の長さしかなく、右側の壁には、ほぼ等間隔に、2つの扉が並んでいた。僕達は最初に、手前の扉から探索する事にした。先程と同じ様に、扉の前にスタンバイし、一気に突入した。その部屋の中は、給湯器があり、その傍には、湯呑みや茶碗が収納されてある棚が陳列されており、湯沸室のようだった。
「此処は、湯沸室ですかね?」 僕は、呟き気味にそう言った。
「ああ、どうやら此処は、何もいないようだな」
 巌さんはそう言いながら、ゆっくりと、その部屋を見回していた。この部屋をよく見ると、右側に扉があり、場所的に考えると、先程、3つあった扉の一つに繋がっていると思われた。