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【青エク】 無題

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 6日前。




通っている医学部の友人が、柔和な面立ちに沿う、穏やかで大人し気な性格をした彼にしては珍しくも間の抜けた声を出した為思わず動きを止めてしまった。
それは竜士だけでなくて、比較的近くに居た数名全員が、であったのだが・・・・一体何があったのか。どうしたのかと尋ねてみればなんて事は無い、「レポートを忘れた」と返す彼に・・・・なんて事ない、なんて悠長な事を言ってる場合では無くなってしまって。
厳しい事で有名な教授に提出するレポートが無いなんて、大事ではないかと他人事なのに焦りだす竜士の前、しかし当の本人は冷静に何かを考え始めるとそれから数分後。携帯を取り出し誰かに連絡を取り始めたのだ。
恐らく家族にかけたのだろう、そう思った竜士は何とかなりそうな様子を眺め、安堵に胸を撫で下ろした。
問題の教授が執り行う講義は午後一。
これより、昼食を摂るべく持参した弁当を広げ始めていた竜士は細く長い溜息を吐き出した。家族に持ってきてもらうならば、どうにか間に合うだろう。全く、人騒がせな、そう思いもしつつ携帯を閉じた友人に促され食事を始めた。
そうして、ンン十数分後。
昼食後の一服でも・・・と、二人連れ立って空き教室から出ようとした時耳を劈く爆音が響き渡り、驚きに肩を跳ね上げ目を丸くさせた。
余り耳慣れない音ではあったけれど、分からないわけでもは無いその音。
あれは、バイクの音だ。
しかし、これはかなり問題。
大学の、外側に設置されている駐車場でなら分かるが内側に建てられた講義棟傍までバイクで乗り付けるなんて、信じ難い馬鹿者である。犯人はどこのどんなやろうなんだ!?と、目尻を吊り上げ窓へと駆け寄れば棟真横にバイクを横づけしている細身の肢体が見えて、軽く瞳を見開いた。
肢体を覆う黒色のライダースジャケットは身体のラインが良く分かる仕様のもので、一目で性別が判別できたからだ。
つまり、問題の人物は女性である、と言う事がその柔らかな曲線によりよくよく分かってしまった、と言う事。それだけでも驚きだったのに、彼女はその身よりも大きな二輪を軽々と動かし(ているように見え)たのだ。
唖然とする面々の中、気づかぬ彼女は講義棟の入り口を探しているのか視線を左右に動かし始める。彼女が立つ場所からは分かりにくいのだが、入口はバイクを止めた場所から反対側、角を越えたその向こう側にあった。
多くの生徒が見守る中、しかし何も知らぬ彼女は反対方向へと歩き始めたから悩むは竜士達見物人。
声を掛けるべきか否か。
どうしたものかと思案しだせば其処で、竜士の隣に身を寄せた友人 ―― 奥村雪男が、突如窓より身を乗り出した。
危険だと、ギョッ、っとする竜士以下級友達。
息を飲んだ面々の間、そんな彼等の前で雪男は右腕を持ち上げ左右に大きく振ると同時に。

「姉さん!!こっち!三階に居るから!!」

そう、叫んだのだ。
驚かない人間は居なかったのではないだろうか、というこの一瞬。
誰もが歪に固まるおかしな空気の中、叫んだ弟の呼びかけを受け逆方向へと移動していた問題の人物がその足を止め、未だ頭部を覆っていたメットへと手を掛け外しながら首を擡げると、視線を真上へと。
そして、此方を見た、のだ。
正確には弟である雪男を、だが。
でも竜士には、自身を見たかのような錯覚を、覚えてしまった。
地上と三階という距離。
その距離が無くなったのではないかと思えるほどの、衝撃。
一目見て、恋に落ちた。
ヘルメットより飛び出した髪が、揺れながら肩に堕ちる様が何とも言えず、美しかった。
それだけじゃない。
自慢の視力で見つめた、彼女の太陽の様な笑顔。
向けられた先は勿論、雪男へとだがそれでも・・・眩しい程の鮮やかな笑顔だったからひと時も目を離せなくて。
中でも一際強い光を放つ、淡い青色の瞳が何処までも、存在を主張するのがまたとてつもなく美しかったように思える。
誰一人、声を発せない中するりと消えた彼女。
数分後には、竜士達が居た室内の、入口に立っていた。
扉に手を置き、弟である雪男の名を呼ぶ。

「よぉ、遅くなって悪い。これでいいのか?」

そう告げる彼女の右手には、見覚え有るものが。
勿論、レポートの束、だ。

「そう、それ。ごめんね?せっかくの休みに」
「別にかまわねえよ。休みって言っても何するわけでもねえしな」
「でも、毎日朝早くから仕込み…」
「好きでやってんだ。お前が心配する事じゃねえだろ」
「うん…けど…」
「ホンットに心配性だなぁ、お前」

唖然とする人々の中、彼らにしてみれば日常的なのだろう姉弟の会話を繰り広げ続けている。だがしかし、其処に在る弟・・・雪男の姿は普段の彼からは想像もつかない程の甘さを滲ませていて。目の前に居るのはお前の血縁者なんだよな?と疑問を投げたくなるほどに、優しい瞳と声音で実の姉を、それこそ壊れ物を扱うかのような丁寧な仕草で以って応じる様を見せつけられれば誰だって、驚きに言葉すら発せなくなってしまう。
誰も何も言えない中、姉弟の会話はなおも続き。

「したら俺、帰っから」
「え、もう帰っちゃうの?」
「は?だって俺、此処に居たって意味ねえじゃん」
「…終わるまで…」
「……待てと?」
「………」
「いや、な、あの…お前のその目、止めろよな~。心が痛くなる」
「だって…姉さん…」
「だって、じゃねえの。親方から頼まれてる仕事、帰ってすぐに手ぇつけねえと明日までに終わんねえんだよ」
「ぅえー」
「悪ぃな」
「…仕事なら、仕方ないよ……」
「ホントに仕方ない、って顔、してねえよな…」
「ぶぅー」

この時、誰もが心の中で洩らした声があった。
その声を、代表して彼に叫んでもらおう。

「……お前一体、誰やっ」

勿論、この言葉は雪男に対して向けられている。
正確に描写すると、不満げな様子を突き出した唇で体現した、奥村雪男へと、だ。
そして姉弟の間に突如、割り込んだのは言わずともがなの、竜士。これに、不快感を示したのは雪男。友人に対してこの態度なのだから、本当に、普段のお前は一体何なんだ、ともう一度、叫びたくなる。
だが、その事実を指摘する前に姉の方が声を上げた。

「お。雪男の友達か?」

高くも無く低くも無い、しかし耳に良い彼女の声に導かれ、振り返り見れば艶やかな黒髪を揺らしながら竜士を見上げ、微笑んでいた相手。

「お前も雪男並みに背ぇ、高っけーなぁー」

カラリ、と。
嫌味ない笑みと共に告げられた、その言葉。
言われてみれば確かに、自分も雪男も背は高い方だ。
弟と竜士を見上げ、無意識になのだろう左手で首を支える彼女に突然、沸き起こる罪悪感。

「…スマン…」

見上げ続けるのが辛いのだろう、その事実に気づき反射で謝罪し、心持背を丸めてみた。少しでも楽になってほしい、と言う思いからだったのだが、そんな竜士の親切を受けた彼女は、唖然。
愛らしい唇を開き、ポカンとした定で竜士を見つめ続けた後。

「~~~っっぷはぁっ!お、お前っ!変な奴だなぁっ!」

雪男!お前の友人はかなり面白いな!
弟へと視線を向けるとそう続けた彼女に、複雑な想いを抱く。変な奴、と言われたのは果たして良しとするべきかせずべきか。
対して雪男は憮然としてこの光景を眺めていた。
作品名:【青エク】 無題 作家名:とまる