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隣のバンゴハン 【俺ティ】

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隣のバンゴハン








『どうぞ』と言って差し出された物を、どうして断る事が出来ようか?

否。

出来るわけが無い。

「なぁにが『出来るわけがない』、や。阿呆やな、自分」
「…………返す言葉もございません…」

畳の上、腰を下しテーブルに寄りかかった体制のまま、項垂れる。
彼、綾部の言うとおり阿呆である自覚があるだけに、否定でき無いところが痛い。

「全く。中坊に出された菓子をそのまま食う奴がおるかいな」

呆れた溜息を吐く綾部に、頭が上がらない。
不思議なのだけれど、本当に、彼には逆らえないのだ。
いや、不思議と言いつつ実はなんとなく原因が分かってきていた。分かってきたが、それを認める事が出来ないが故の、不思議と言う話。
ただ、云っても今の場合に於いては彼が誰かに似ている云々というより、ただ単に綾部家次男に差し出された菓子を、考えが足りぬ自身はホイホイと口に入れてしまった事が原因で彼に迷惑をかけてしまった・・・というだけの話なのだが。
つまり、食事前にお菓子を食べる非常識さを怒鳴り声で指摘されたが為に、思わず噎せてしまった所その噎せ方が予想外に酷かった為気付いた綾部が慌て、水の入ったグラスを手に駆け付けてくれた・・・・という(傍迷惑且つ馬鹿な)だけの話だった。
呼吸困難から解放され、人心地着いた真冬はテーブルに身を預けていた態勢を戻し、申し訳なさそうな視線を綾部へと向けるが、

「いやぁ、おいしそうだったから、つい」
「つい、ってなぁ…子供やあらへんのやから…」

まぁ、主張させて頂くと事実、空腹時においしそうなポッキーを見せられたらつい手が出てしまう物だと思う。だから私ばかりが悪いわけでは無い筈。
それら全て、思ったものの言葉にはせず目線のみで訴えてみた。と、上目使いに相手を見、頭を掻く真冬に綾部はまたも、ハァ、という溜息を吐き出すと「すぐ作るからちょお待っとけ」とだけ云い残し、機敏な動きで台所へと戻って行った。
その後ろ姿を見送って、自然と苦笑を浮かばせる。
本当に、生き生きしていると言うのこういう事を言うのだと、身を以て知ったからだ。
どれだけ呆れ、疲労に肩を下げようと、何処からどう見てもスキップしているよね?という姿は浮かれ・・・いや生き生きしているとしか言いようがない。
その、生き生きとした姿を見せつける彼は今、夕食の準備をしていた。
紆余曲折を経て一年ぶりに帰宅した綾部家。
彼の帰省の供をした真冬もまた、彼の実家へとお邪魔する事と成ったのだ。
夕飯をご馳走になる、それだけでも初めての経験である真冬にとってとてつもない緊張感に包まれる出来事なのだが、その緊張を簡単にぶち破ってくれた人物が居た。
云わずともがなの、綾部家次男、梅次。
食卓テーブルの横で正座し、うずうずとする身体を必死に抑え込み固まっていた真冬の元へススス、と移動してくると背中に隠していたポッキーの箱を徐に掲げ。

『……菓子、食います?』

そう聞いてきたのだ。
恐らく客人をもてなそうと思ったのだろう。だが、方法が間違っている気がする。
いやしかし、だ。
やはり、「NO」とは言えない。
当然ながら、喜びの余りの必死さで頷き返した。
素早い動きで頷き続ける真冬を見て、若干梅次は怯えを見せたけれど元より順応性の高い子らしく直ぐ様切り替えると二人、共にポッキーを齧りはじめた。その途中長男に見つかり怒鳴られる事と成ったわけだが・・・・綾部が台所に戻ると、共に叱られた梅次、そして傍に居て知らん顔を見せていた一華が再度、真冬の隣へとにじり寄る仕草で移動してきて十数秒程の逡巡の後。

「…なぁなぁ、えっと…黒崎、さん?でしたよね?黒崎さん、は…兄ちゃんの彼女なん…?」
「せや、ずぅっと気になっとってん。そうなんですか?」

ボソボソと、外側に漏れない様自身等の身体で壁を作りつつそう尋ねて来たのだ。この時の二人の迫り来る剣幕は尋常では無く、怯む身を否定できなかったり。しかしながら問題なのは彼らの気迫よりもその質問の内容の方。
一体全体どうしたらそのような疑惑が生まれるのか、と驚きの余り首を捻ってしまった。
どう見たって、自分たち二人は男女の空気を持っていない、筈。
巷のカップルを見てみれば分かる事だが、恋人たちと言うのはもっとこう・・・・甘い雰囲気を纏う物ではないのか?
今の綾部と真冬を見たって、そんな甘さの欠片すら、見つけられない。
だのに、そのような質問を投げてくると言う事は・・・もしかして遠回しに魅力的な大人の女的オーラを醸し出していr 「いぃえぇ?ちっとも。これっぽちもあらへんのですけどね?」 ………そうだよねぇ…やっぱりねぇ…そうだよねぇ…。

音にしていたつもりは無かったのだが、思わず漏らしていたらしい心のへとバッサリ入れてくれたのは長女の一華。
別に、肯定してほしかったわけでは無かったが、優しさの欠片も見えない言葉には流石の真冬も涙目になり項垂れてしまう。その上で、ならばなぜそんな疑問を抱くのだと改めて尋ねれば、返されたのは彼らの本音。

「せやかて結構大きな問題やないですか。長男の彼女…っちゅうかお嫁さん?って」
「そうそ。大きいっすわ、この問題。下手したら俺達、黒崎さん事『姉ちゃん』って言わないけへんでしょう?」

重要だ。
そうだ。
大問題だ。
一大事だ。
家族会議だ。

「そらね、兄ちゃんのお嫁さんは兄ちゃんにしか選ぶ権利は与えられてへんて思いますけども」
「正直、兄ちゃんのお嫁さんになるんやろう相手に対する意見を主張する権利はうち等、与えられてると思うんや」

「…………」

長女次男二人して、腕組み頷きながら言葉を紡ぎ出すのだが、そんな彼らを見遣る真冬は如何ともし難い心境。と、いうか。何故にそこまで言われているのだろうか、と言った不満もある。
唇を引き結び不満を面に出すも、しかし姉弟には届いていないのだから意味の無い行為。最後は諦め視線を移ろわせれば、向かった先に居た三男と目があった。

「……」
「………」
「……」
「………」

そして、見つめ合う事数秒。

「……姉ちゃん、ボール遊び、するか?」
「………ボール…お、おうっ。受けて立ってやる…?」

まるで睨み合いの如く緊張感ある沈黙が続いたのだが、最後には唐突な遊びの誘い文句が秋三より投げられ、腑に落ちないながらに頷きを返してしまった真冬は気が付けば・・・・。

「へいっ!コッチ!こっちにパスっ!こっち!!」
「あかん!さっきぃ、『そこでミスしたらアカンやろ!』って凡ミスした奴ぅぁ、誰やねんっ!?」
「うぐっ!そ、それは私ですが…っ!今っ!今こっちの両手っ、空いてるぅぅぅ!!」
「あかんって!ここはオレが守るんやっ!掛かって来いっ!幸四郎!!」
「へへっ!そこでパスを出さなかったこと、後悔させてやるぜ!!」
「あぁっ!秋三君っそっちは駄目っ!逃げ場がっ!逃げ場が無いのぉぉぉっっ!!! 」
「う、わぁっ!?そんな!く、くっそぉっ!負けへん!オレは負けへんでぇぇ!!」
「フフフ…甘いな、秋三。気合や根性だけでオレの攻めから逃れられるとでも…本気で思っとるんか…?」
「あ、秋三くぅぅぅんっっっ!!」