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君を守る

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八章



所変わって商店街。
「あいつだな・・・。」
椿が桜さんと合流し、二人が仲睦まじく歩くさまを見ていると、物陰に一人の男がいることに気づいた。
ジーパンに黒っぽいTシャツ、スニーカーにこげ茶の帽子をかぶっている地味な男だ。
年の頃は、二十代後半から三十代前半くらいだろうか。
ストーカーが狙っていると知らなければスルーしそうな、存在感の薄い奴だ。
男は二人をじっと見つめている。
「こう見ると薄気味悪いなぁ。」
姫子が身震いしながら言う。
椿&桜さん←ストーカー男←俺達という図式だ。
「スイッチ、何か分かったか?」
スイッチに尋ねるが、まだ調べている段階なのか、愛用のパソコンから目をそらさず首を横に振る。
まだ何もつかんでいない。
俺たちに出来る事はまだ無い。
分かっているけど、何もできない状況にヤキモキする。

俺は二人のほうへ視線を移した。
二人は楽しげに話している。
不意に桜さんが花を椿に手渡した。
売れ残りだろうか、それ以外にもたくさんの花が桜さんのトートバックからはみ出している。
椿はそれを嬉しそうに受け取った。
その時・・・、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
数メートル離れて後をつけていた男が椿めがけて走り出した。
男の手には何か鈍く光る刃物のようなものが握られている。
まずい・・・。
とっさに姫子を見ると、先ほどまで俺の横にいたはずが、
その姿はもうなかった。
先を見ると、姫子は男を追っていた。
しかし、椿達と距離があり過ぎる。
間に合わない!!
俺はポケットからスリングショットを取り出すと男に向けて思い切り放つ。
見事、球は男の後頭部を直撃し、奴を前のめりに倒した。
数秒後、姫子が男に追いつく。
姫子は椿と桜さんをかばうように男の前に立ちはだかった。
「そこまでや!」
ドスの利いた低い声で言い放つと、薫風丸を男の脳天めがけて振り下ろす。
そして男の頭に届く寸前、ピタリと止め
「動くな。」
とすごんだ。
男は『ひぃっ。』と小さく悲鳴を上げる。
「遠藤雅夫、29歳、無職。桜さんが勤めている花屋の対面に位置する八百屋の一人息子。
 18の頃上京したが最近仕事を辞めこちらに返ってきてそのままニート生活。
 いつまでたっても働こうとしない息子にご両親もほとほと愛想を尽かしている。」
追いついたスイッチが淡々と話し始める。
「おおかた、自分の部屋から花屋の店頭で働いている桜さんに一目ぼれ。
 しかし自分から行動を起こすことも出来ず、ストーカーに発展した。
 まぁ、このようなところだろう。」
見下した物言いだ。
それを聞いた男はぶるぶると震え始めた。
こぶしを握りしめ、口を開いた。
「そうだ・・、そうだよ!!
 僕は桜さんに一目ぼれしたんだ!!!
 だけど・・・、こんなさえない僕じゃ桜さんの様な人は相手にしてくれるはずがない!!!
 せめて僕の気持ちに気づいてほしかったんだ。
 だから、だから!!!僕はあの花を贈ったのに・・・。」
男はキッと桜さんを見据える。
「それを君は・・・、君は!!!」
それを受けて桜さんはビクリと体を震わす。
「こんなガキに!!!!」
今度は椿を睨み上げる。
「何を訳の分からない事を!!!桜さんはお前のことなど知らん!!」
今まで桜さんを後ろ手にかばっていた椿は一歩前へ出て男に怒鳴り散らした。
「待て椿。」
「なんだ、藤崎」
「生徒会室のお前のデスクに飾ってあった花。あれは桜さんからもらったものなんだよな?」
「あぁ。」
「桜さん。この男から花を贈られた覚えは?」
「いえ、ありません。私この人の事知らないし・・・。
 あっ、でも・・・。」
桜さんは何か身に覚えがあるようだ。
「話してください。もう少しですべてがつながる。」

作品名:君を守る 作家名:nanao