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ちょ~短編 スマイルプリキュア! ─はなさかむすめ─

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宿敵はピーターパン


  
時はまた流れて梅雨入りしそうな頃の事。
「4ヶ月後の学習発表会でわたし達4年1組は劇をやります」
担任の宣言に、生徒みなポカンとしました。このご時世に学芸会とはまた。
異論をとなえたい生徒もいましたが、先生は頑なになって学芸会を実施すると言い張るのです。
「あなたたち小学生なのよ!? 子供は子供らしく、愛らしい姿をさらし出しなさい!!」
だめだこのロリショタ。早く何とかしないと。
青ざめる生徒たちをよそに、一人だけ意気揚々と手を挙げていた子がいました。
「先生!!劇のお話はなんなんですか?」
「星空さんノリが良さそうね!ズバリ、ピーターパンよ!!」
独り歓喜の悲鳴を上げるみゆきちゃん以外の生徒はどよめき、そしてうな垂れてしまいます。
子供たちは台本も衣装もセットも根回しもできてる担任に対抗する術はないと諦めました。
ちくしょー。将来は絶対に「ゆとり世代」だとは言わせないぞと誓う生徒が大半のようです。

数日後、配られた台本を一通り読んでから配役を決める事になりました。
よほどの自意識過剰な人間でもいない限り、主人公をやりたいなんて生徒がいるはずもありません。
まずは主人公ピーターパンをやりたい人がいないかという担任の問いかけたのですが……
「俺がやります」
一同唖然。すでにあみだくじ表を黒板にマグネットで貼り付け始めていた担任も驚いていました。
他の立候補者も、反対する理由もないまま。声の主、田牧としはる君は主役の座を射止めたのです。


「田牧くんがピーターパンの役なんだね!わたし応援するよ!!」
あの後、サポートという意味でティンク役をふみえちゃんが立候補し、あとはあみだです。
ちなみにみゆきちゃんは裏方で演出支援係です。
「みゆきも何か立候補すれば良かったのに」
「わ、わたしなんかが舞台に立ったら迷惑かけるだけだよ~…」
ここぞという時には緊張して何も出来なくなるみゆきちゃんにしては正しいかもしれません。
「ピーターパン好きなんでしょ? 後悔してない?」
「………してるかも。はっぷっぷーぅ…。でも今は劇の成功のため後悔しないように全力サポートする!」
ちょっとだけ陰りを見せたみゆきちゃんだけど、切り替えも早いようです。
コロコロ変化するそんなみゆきちゃんの表情をとしはる君は黙って見ていて飽きません。
むしろ改めて恋しくなるのです。
「だから、としはる君も頑張ってね!!」
側面からみゆきちゃんの顔を直視していたとしはる君にみゆきちゃんが向き直り、
満面の笑顔を寄せてエールを述べられると、としはる君は思わず赤くなる顔を隠します。
「そういえば、としはる君はなんで主役に立候補したの?」
くるであろうと思っていた質問。としはる君は身構えながら用意していた答えを搾り出します。

「…………す、好きなんだよ。」
「え?」
キョトンとした無邪気な顔のみゆきちゃんへの、まるで告白です。

「ピーターパンだけは好きなんだよ。幼稚園の頃からな……」
「だよね!!ピーターパンは素敵だよ!この想いを観に来るみんなに届けようね!!」
これ以上の幸福を感じられる事はなかろうというほどの、輝くみゆきちゃんの笑顔。
こんな子が応援してくれる。そしてこんな子が好きである。
酔いしれるようなとしはる君は自分自身に罪悪感めいた感情すら沸いてしまうのでした。

そもそもピーターパンを立候補した理由。
いつかの図書室での、みゆきちゃんは「ピーターパンに恋してる」と聞いてしまったからなのです。
好きな人が創造上の架空人物かよ、とあの時はたぬき寝入りしながら呆れもしました。
ところが担任から「ピーターパンの劇をやる」と決定させられてからというものの、
この一週間は悩みに悩まされたのだとは誰も知る由もないでしょう。

つまり。
"自分じゃない誰か"が演じるピーターパンを、みゆきちゃんが恋してしまうんじゃないかと。

正体がピーターパンでないにしても、ピーターパンに恋する女の子から見る役者はどう映るのか。
迫真の演技でピーターパンをこなした時、彼女の純粋な気持ちが動いてしまう、そんな恐れです。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
こうなったら、誰かがピーターパン役に決定されてしまう前に自分が立候補してしまおう!!

思い切りすぎた決断。
でも、男の子は好きな女の子のためにこれくらい必死になれるものらしいンですよ。
はいまたべんきょうになりましたね、良かったですね☆