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Fate/Zero ~MAKAISENKI~

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「死闘」






「はぁぁああああああ!!」

「フッ!!」

シンギと次に戦いだしたのはセイバーだった。
シンギとしてはランサーに挑もうとしたのだが、動いた瞬間にセイバーが切り掛ってきたので、そのまま相手をしているのだ。
最初は防御に徹していたシンギだったが、セイバーの剣に慣れてきたのか徐々に攻勢が激しくなっていく。

「ぐぅ」

セイバーが声を漏らす。
シンギの攻撃を剣で防いだのはいいが左手が使えないことも相まってか、剣を持つ手が痺れている。

(剣戟が重いッ!!)

シンギとセイバーの筋力値は等しくBだ。
そしていくら片手を使えなくとも、シンギの力は魔力放出をしているセイバーのそれに劣る。
何よりシンギ自身も片手でしか剣を使っていないのだからなおさらだ。
それでも、シンギに分があるのはその手に持つ虚構剣だった。
虚構剣の素材であるデスメタルは持ち主の心のあり方により、いくらでもその重量を変化させることが出来る。
シンギはそれを利用し、振るう際には羽毛のように軽く、斬撃の際には金塊の如き重量で攻撃しているのだ。
高速の剣にとてつもない重量が相乗効果となり、すさまじい威力を生み出しているのだ。

「悪ふざけはそこまでにしてもらおうか、バーサーカー」

ふと、ランサーが乱入し、シンギの剣を弾いた。
弾かれた剣は空を舞い、シンギから離れたところに突き刺さる。

「…何のつもりだランサー」

「何、そこのセイバーには、この俺と先約があってな…これ以上、場をかき乱すと言うのなら、俺とて黙ったおらぬぞ」

――いやいや、最初に手を出してきたのはセイバーだろうが…
それを思うシンギの事など知るはずもなく、ランサーは槍の穂先シンギに向けている

『何をしているランサー?セイバーを倒すなら、今こそが好機であろう』

ケイネスがランサーを戒めた。
魔術師であるケイネスにとってランサーの持つ騎士道精神等知ったことではないのだ。

「セイバーはこのディルムッド・オディナが誇りをかけて討ち果たして見せます!!」

「何となればそこのバーサーカーも先に仕留めてご覧に入れましょう!故にどうか主よ!私とセイバーとの決着だけは尋常に…」

『ならぬ』

ランサーはセイバーとの戦いを仕切りなおしたかった。
今夜はキャスターとアサシン以外のサーヴァント全てが出揃う事態にまで発展してしまった。
セイバーは先ほどのシンギの剣戟を受け万全とはいえない。
自分の騎士道精神にかけても決着は後日ということにしたかったのだ。
しかし、ケイネスはその願いに聞く耳を持たなかった。
どこぞの知れぬ英霊よりも世に知れ渡るアーサー王をここで仕留めたかったのだろう。

『令呪を持って命じる、バーサーカーを援護し、セイバーを…』

「待て、ランサーのマスター」

ケイネスの令呪使用をシンギが遮った。

『…何だ』

「貴様はランサーに俺と共闘してセイバーを討たせるつもりのようだが…俺は2対1で戦うつもりは毛頭ない。」

シンギは今夜、誰かを討つつもりはなかった。
シンギの目的は聖杯戦争という争いに一般人が巻き込まれないようにすることだ。
見た限りではセイバー、ライダー組は人間を巻き込むよう奴等ではない。
ランサー組はランサーは大丈夫そうだが、マスターはまだ計りきれてない。
アサイン組は脱落とされているから目立つ行動は避けるだろうし、アーチャー組はマスターがこの地の管理者、遠坂時臣なのでその心配はないだろう。
だが、キャスター組は未だその姿を見せていない。
もし、キャスター組が人を巻き込むような奴等で、自分では対処し切れなかったら、それはマズイ。
悪魔で今回はサーヴァントの力量と人柄を見に来ただけであり、決着をつけるつもりはない。

「俺は相手が誰であろうと構わない。…ランサー、お前はこの俺を討つと言ったな」

「ああ、そうだ」

「ならばその力を俺に示して見せろ、俺を本当に討つことができるかどうかをな」


その言葉を聞いたランサーは笑みを零した。
この男も騎士道精神を持ち合わせている。そう思うと嬉しかったのだ。
実際はシンギは騎士道精神など持ち合わせてはいない。
魔戒騎士などと呼ばれているが、ホラーを狩る存在をそう呼ぶのであって、昔の騎士のように相手を重んじるということはしていない。
そんなことをホラーにしている暇があるなら斬れ、という事だ。

「俺の気持ちを汲み取ってくれたことには感謝するぞバーサーカー。だがそれで俺の腕が鈍ると思うなよ」

「そんな事など微塵も思ってはいない。…それと名乗ったのだからバーサーカーと呼ぶのは止めろ。俺の性に合わん」

「成る程、確かにそれは失礼だった。確かシンギと言ったな、お前はこのまま俺と戦うつもりのようだが…お前の武器は遥か向こう。それでどうやって俺と戦うつもりだっ!!」

言い終えると同時にランサーが突貫してきた。
槍の穂先がシンギへと向き、その体を貫かんと迫ってくる。
シンギはそれを…

「なっ!!」

「得物が1つだけだと誰が言った」

どこからともなく出した武器で防いでいた。
その武器は持ち手を中心に刃が弧を描き、両端に弦が張られていた。
その様相はまさに弓。
これがシンギの持つもう1つの武器"虚構弓"だった。
その一目見ただけでは判断がつかぬ武器を警戒し、ランサーは距離をとった。

「何だその武器は…」

「見ての通り弓だが」

「馬鹿な!!リムが刃になっている弓など聞いた事がない!貴様、本当にいったい何処の英霊だ!!」

「さあな、自分で考えろ」

シンギが距離を詰め虚構弓で切りかかる。
ランサーはそれを防ぎ持ち前の速さで、怒号の攻撃を繰り出す。
シンギもそれに付いてきてはいるが、やはり手数の多さではランサーに分があるのか、防ぐのが難しくなってきている。
剣が手元にあれば手数の問題は解決できるのだが…

(仕方ない、あれをするか…)

一方ランサーの方も攻めきることが出来ていなかった。
シンギが手強いのもある。だがそれよりも問題は…

(破魔の赤薔薇(ゲイ・ジャルグ)が通らないッ!!)

そう破魔の赤薔薇(ゲイ・ジャルグ)が通らないのだ。
先ほどから隙をついては心臓部を狙って攻撃しているのだが、刃が通らないのだ。
これはシンギの鎧に理由がある。
先程、セイバーに傷をつけることが出来たのは、セイバーの鎧が魔力で編まれていたからだ。
セイバーやアーチャーの鎧のように魔力で編まれているものには確かに破魔の赤薔薇(ゲイ・ジャルグ)は有効だろう。
だが、シンギのもつ虚の鎧は違う。
虚の鎧は魔力で編まれている物では無く、魔界から召喚した物なのだ。
つまり、虚の鎧を構成するものは金属"デスメタル"だ。これでは破魔の赤薔薇(ゲイ・ジャルグ)が通らないのも当然だろう。
ランサーも破魔の赤薔薇(ゲイ・ジャルグ)が通らないのが分かると金属の無い部分を攻撃しているのだが、その攻撃がことごとく防がれている。
作品名:Fate/Zero ~MAKAISENKI~ 作家名:魔戒