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Fate/Zero ~MAKAISENKI~

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「思惑」



戦いが終わり、間桐邸に2時間かけて辿り着いたシンギは雁夜の元へ行き体調の確認をしていた。

「体に異常はないか?」

「ああ、思っていたよりは魔力が使われなかったようだ。この調子なら、お前が全力で戦っても問題はなさそうだな」

実際、あれほどシンギが暴れたにも関わらず、殆ど魔力が消費されなかった。
虫を通してシンギの戦いぶりを見て、唖然としてしまったが、疑問に思ったのは魔力の消費量。
サーヴァントは力を振るうだけで、魔力を消費する。
特にステータスが高い者はそれに比例して、魔力の消費が多い。
それにも関わらず、雁夜の負担は全くと言っていいほど無かったのだ。
自分の魔力が低いのに異常に高いステータスに少ない魔力の消費。
自分のサーヴァントはつくづく規格外だと改めて自覚させられた。

「それよりも、どうだったんだ。戦ってみて」

虫を通してシンギがアーチャーを相手に善戦したのを見て歓喜に震えた。
あの遠坂時臣のサーヴァントを逃げるまでに追い詰めた。
そう思うと喜びがとまらなかった。

「ああ、誰もが強力なサーヴァントだ。…ライダーはよくわからん」

「そうか、それでこれからどうするんだ?」

「全てのサーヴァントが出揃うまで待つ。それまでは様子見だな。全てのサーヴァントといえば…アサシンがいたぞ」

「何!?」

シンギはあの、戦いの中でこちらを見るアサシンが見えたのだ。
ランサーとの戦いの中で、他にも気が配れるのは長年に渡り様々な能力を持つホラーと戦い続けたが故にだろう。
恐らく、やれと言われれば他の称号持ちでもできるはずだ。

「時臣め…何て卑怯な手を…!」

「だが、戦いとしては有効な手だ。俺は別に非難をしない。褒められたものではない事は確かだが…」

倒したと見せかけて陰で暗躍する。これほど有用な手は無いだろう。
アサシンのマスタ−も教会で匿われているので危険が無い
だが、デメリットも大きいはずだ。
まず、他のマスターにばれれば、監督役がルール違反をしたことで監督役から降ろされる事は間違いない。
教会も新たな監督役を派遣しようにも、適任者を見つけるのは時間がかかる。
そして派遣するころには聖杯戦争が終わってるだろう。

「キャスターを確認したら、アーチャーを倒すつもりだ。その時に雁夜、遠坂時臣との決着をつけろ」

「…時臣と戦うのは反対じゃなかったのか?」

「誰がそんな事を言った。戦う事自体は反対じゃない。まだ時間はあるそれまでに答えを見つけろ」

雁夜の目的はあくまで遠坂時臣なのだ。聖杯ではない。
その目的を果たすためなら、手助けをするのは吝かではない。
だが、人を殺す事の罪は重い。
雁夜にはその罪が背負いきれる事ができるのだろうか。
シンギとしては雁夜に殺しをさせたくは無い。だが、悩みに悩んで出した決断なら止めはしないだろう。
自分たち魔戒騎士は人の争いには不干渉なのだから。
シンギはあくまで道をそれとなく示してやるだけだ。
そして、願わくば…

雁夜と時臣が和解できる事を…

――――――――
―――――
―――

薄暗い山の中。
その峠を物凄いスピードで疾走する一台の車。
その場に警察がいれば、間違いなく捕まる程のスピードだ。
乗っているのはアイリスフィールとセイバーだ。

「ね?ね?結構スピード出るものでしょ?これ」

「お、思いのほか達者な運転、ですね」

「でしょ?こう見えても、猛特訓したのよ」

「切継が持ってきてくれたおもちゃの中でも、これが1番のお気に入りなの!」

「おもちゃ…ですか」

「お城じゃ、中庭をぐるぐる回るだけだったから。もう最高!」

楽しそうなアイリスフィールとは裏腹にセイバーは冷や汗をかいている。
この場に他のマスターやシンギがいれば、「その乗り方は正しくない!」と突っ込んだだろう。
もし、他の走る車が居れば、間違いなく事故になるだろう。

「…アイリスフィール」

「何?」

「理性を失わないバーサーカーなんて、居ると思いますか」

セイバーはずっとあのバーサーカーの事が気になっていたのだ。
バーサーカーというクラスに該当しているにも関わらず理性をまったく失わない。
むしろ、あのバーサーカーからは冷静沈着という印象しか受けなかった。

「うーん…過去にそんなバーサーカーがいたって記録は無いけど、彼のスキルかもしれないわよ?もしくは彼が暴走と呼んでいたあの行動。あれがバーサーカーになった原因かもしれないし…」

アイリスフィールも、あのバーサーカーが気になっていた。
自分の配下に引き入れる為に真名をばらしたライダーとは違い、真名を知ること等、意味を成さないとでもいう風に鷹上シンギという真名をさらしたのだ。
事実、鷹上シンギという名はアイリスフィールも聞いたことが無いし、聖杯に知識を与えられたセイバーですら知らなかった。
何より気になるのは、騎士の名を語ったことだ。
鷹上シンギ、この名からして日本人であることは間違いないだろう。
騎士と名乗ることには問題が無かったが、日本人である事が問題なのだ。
日本の歴史には武士は居れど、騎士は居ない。
だからこそ、疑問しかわかないのだ。

「それは…止めて!」

セイバーの叫びにアイリスフィールは急いでブレーキを踏んだ。
甲高いブレーキ音が静寂な夜の山に響き渡り、車は静止した。

「アイリスフィール、車から降りて、私の傍を離れないで下さい。」

静止した車の前にいたのは眉の無い異様な装束に身を包んだ一人の男だった。

「この気配…サーヴァントです」

男の名はジル・ド・レェ。キャスターのクラスで現界した狂気のサーヴァントである。
この後、セイバーとアイリスフィールは理性を失ったバーサーカー等よりもある意味恐ろしい者を目にする事になる。
この時、この男がもたらすのが死の恐怖である事など、誰が予測できたであろうか…

――――――――――
―――――――
――――

冬木ハイアットホテル
ここにはランサーとそのマスターが潜伏していた。
フロア一つを貸し切り、聖杯戦争の拠点としてこの場所を選んだのだ。

「今宵は何故セイバーを仕留められなかった。おまけにあの無礼なバーサーカーも…セイバーとバーサーカーとの競い合いはそんなにも楽しかったか?」

「そのような事は…騎士の誇りにかけてあのセイバーとバーサーカーの首はお約束いたします」

ランサーはそうは言っているが、戦いを楽しんでいたのは事実だ。
自分と拮抗し、アーサー王と名高いセイバー、その名こそ心当たりは無いが変幻自在の技を使う恐ろしい強さを秘めたバーサーカーどちらの戦いも心が躍った。
だが、ケイネスもケイネスだ。
いくらなんでも事を急ぎすぎている。あの場は様々な事が起こったのだ。
二人を仕留めるのは難しかっただろう。セイバーに手傷を負わせただけでも上出来だ。
確かにシンギに関しては仕留める隙はあったからそれに関してはランサーに非が無いとはいえない。(実際はシンギはまだ奥の手を隠していて、仕留めそうになればランサーが危なかったのだが…)
作品名:Fate/Zero ~MAKAISENKI~ 作家名:魔戒