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風香の七日間戦争

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五日目 「プチ里帰り」


 朝である。
風香はカーテンを開け伸びをした。
昨日のこともあり、今朝は気合満々である。
下に降りるとよつばが台所で待っていた。
朝食を作っている間、よつばが興味深そうに見ている。

 朝食の用意ができみんなで食べていると、小岩井が話しだした。
「風香ちゃん、悪いけど今日出かけなきゃならなくなって、よつばお願いできるかな。なんならジャンボ呼ぶけど」
「何時ごろ帰れます?」
「七時過ぎかな。晩飯は食ってくるよ」
「じゃあ、うちで待ってていいですか?」
「いや、よつばの晩飯までお世話になっちゃ申し訳ないし」
「ちょっとお母さんに聞いてみます。電話貸してください」
風香は家に電話して確認する。
「お母さん、大丈夫だって」
小岩井は電話を代わってもらい礼を言って切る。
「何時ごろ出かけますか?」
「二時ぐらいに出ようと思う」
「じゃあお昼食べてからですね。わかりました」

 洗い物を片付け、掃除と洗濯をする。
コツがつかめてきたのか、かかる時間も短くなってきた。
そして早めに昼食の準備をしておこうと思い、冷蔵庫を見ると今朝のご飯と卵がある。
チャーハンにしようと思ったが、それ以外の材料がない。
考えたあげく、今日だけは家から材料をもらって来ることにした。
小岩井に断って自分の家に行く。
たった四日ぶりであるが、久しぶりに上がった自分の家に少し懐かしさを感じた。
居間にいる母親に声をかける。
「お母さん」
「おや、もう来たの。よつばちゃんは?」
「違うの。お昼の材料を分けてもらおうと思って」
「お昼って何を作るの?」
「チャーハン」
「野菜はあるけど、チャーシューがないわねえ。ハムでも入れる?」
「うん、そうする」
「あと虎子ちゃん来てるから」

 姉の友達の虎子にあいさつをしようと思い風香があさぎの部屋に行くと、虎子はあさぎと談笑していた。
「虎子さん、こんにちわー」
「こんちわ」
「風香、あんたこっちに帰ってきたの?」
「ううん。今日は小岩井さんがお出かけするんで、よつばちゃんこっちで預かろうと思って。でも今はお昼の材料もらいに来ただけ」
虎子は話がよくわからないので、銀塩写真用のカメラを触っている。
「虎子さんのカメラすごい!」
「いや、そうでもない」
「写真の勉強してるんですよね。お姉ちゃんから聞きました」
「うん、撮ってあげようか」
「いいですか? じゃあ、外でお願いします」
二人で外に出る。
「ちょっと待っててください。今連れてきます」
そう言って風香は小岩井家へ入っていった。
虎子がよく事態を飲み込めずにいると、風香は小岩井を引っ張ってきた。
しかし小岩井もよくわかっていない。
風香が小岩井と腕を組み、ポーズを取る。
虎子は数枚写真を撮ってやった。
「撮れたよ。写真は後で送るから」
「虎子さん、ありがとう」
「えーと、もういいのかな」
「あ、小岩井さんもありがとうございました」
そして風香は昼食の材料を持ち、小岩井家へ戻った。

 風香が昼食の下ごしらえをしてると、小学校で恵那と遊んでいたよつばが帰ってきた。
「ただいまー。ふーかおなかすいたー」
「ありゃ、もうお腹すいちゃったー? 急いで作るから待ってて」
「ごはんなにー?」
「ハムチャーハン、かな」
ご飯をレンジで温めておき、その間にフライパンへラードを入れる。
そして卵を多めに入れ、すぐに温めたご飯も入れる。
ひたすらかき混ぜたら、下ごしらえしたハムや野菜を入れ味付けをする。
できたものをよつばに味見をしてもらう。
「よつばちゃん、この味どう?」
「……おいしい!」
「じゃあ完成! お父さん呼んできて」

 小岩井が降りてきて、三人で食べ始める。
「ふーか、これパラパラしてる」
「うん、今日はうまくできた方」
「とーちゃんがつくるとパラパラしない」
「パラパラは難しいな」
「卵を多めにするといいみたいですね」
「へえ、今度試してみるよ」
「本当はハムライスを作りたかったんですけど、味付けが塩・胡椒だけなんでよつばちゃんにはどうかなと思って」
「それもうまそうだね」

 食事を終え、片付けをし、洗濯物を取り込むともう二時である。
小岩井は出かけ、風香とよつばは綾瀬家へ入っていった。
「ただいまー」
「こんにちはー」
風香の母が玄関に顔を出す。
「よつばちゃんいらっしゃい。風香、小岩井さんは出かけたの?」
「うん、帰るの七時過ぎだって」
「かーちゃん、これとーちゃんからおみやげなー」
「あらまあ、ありがとう」
「あっ、よつばちゃん来てるー」
「おー、えなジュラルミンであそぼー」
二人は居間に行って遊びだした。
「あれ? お母さん、虎子さんて帰っちゃった?」
「昼前に帰ったよ。それよりよつばちゃんは私が見ててあげるから、部屋でゆっくりしてきたら?」
「ありがと。じゃあそうする」

 二階に上がると久しぶりの我が部屋である。
風香はベッドに横になる。
「やっぱり自分の部屋は落ち着くなぁ」
そのうちあさぎが顔を出した。
「もうこっち来てたんだ」
「うん、晩ご飯食べるまで里帰り」
「よつばちゃんも一緒なんでしょ?」
「下で恵那と遊んでる」
あさぎはベットに腰をかけた。
「それで小岩井さんとはその後どうなの」
「うーん、よくわかんない」
「なんだ。何もないわけ?」
「買い物行ったとき、小岩井さん手をつないでくれた」
「やればできるじゃない」
「でも小岩井さん全然態度変わらないから、気持ちがよくわからないの」
「風香にはそういう面を見せないようにしてるんじゃない。でもその小岩井さんが手をつないでくれたのは、ちょっとは脈ありかもね」
「そうかなぁ」
「とにかく向こうは大人だということを考えて、焦らないでやりなさい」
「うん、そうする」

 風香が下に降りると、よつばは昼寝をしていた。
「よつばちゃん寝ちゃったんだ」
「子供は寝付きがいいわねえ。ほんとにあっという間に寝てるから」
「お母さん、買うものあれば今のうちに行ってくるけど」
「ああ、それじゃお願い」
元々綾瀬家では風香が買い物を担当することが多かったため、あまり苦にならない。
買い物を終え、風香は帰ってきた。
「お母さん、何か手伝う?」
「じゃあ、シチューの方作ってちょうだい」
風香の包丁さばきを風香の母は見ている。
「毎日やってるだけあって、慣れてきたわねぇ」
「うん、自分でもうまくなったと思う」
恵那が台所にやってきた。
「風香お姉ちゃん何作ってるの?」
「ビーフシチューだよ」
「お姉ちゃんの料理久しぶりだから楽しみー」
「がんばって作るからね」
作品名:風香の七日間戦争 作家名:malta