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少年純情物語中沢くん

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第三話 デート


昼休み。中沢は昨日と同じように、マミのクラスを訪れた。
相変わらず、表情は意気揚々としていた。
「巴先輩こんにちは〜」
「あら、いらっしゃい」
二人向かい合って、お弁当を食べる。
中沢は、マミのお弁当に注目した。
ご飯にフライドチキン、卵焼き、レタスとトマトのサラダ。
とても豪華ではなくても、それらが綺麗に整えられ、美味しさがより増して見える。
(先輩のお弁当、本当に美味そうだな〜)
「よかったら、お一ついかが?」
「ええっ? いいんですか?」
「どうぞご遠慮なく」
「は、はい。ではいただきます」
中沢はマミのチキンを一つ取って口に入れる。
「う、美味い……!!」
衣をカリリとかじれば、中からじゅわっと肉の旨み。
揚げたてならともかく、お弁当でここまでとは……
(こ、こんな美味いお弁当、初めてだ……!!)
「ありがとう。そう言ってもらえると、作りがいがあるのよね」
(ええっ!?)
これは全部マミの手作りだと!?
憧れの先輩の、手作り弁当を口にできるなんて……!!
中沢の心身満喫度は、もはや限界を超えようとしていた。
そんな中沢を不思議そうに見ながらマミは、中沢のお弁当を指した。
「中沢さんのミートボール、一つもらっていいかしら?」
「あ、いいですよ遠慮無く」
ミートボールを味わいながらマミが言った。
「うふふ。美味しいじゃない」
「ま、まあオフクロの味っつーか……」
「いいお母さんね」
「うん。いつも感謝しているよ。でも怒ると怖くて……」
するとマミは、少し寂しげに俯いた。
家族の話題になった途端、さっきとは表情がまるで違うマミだった。
(巴先輩……難しい家族の問題、抱えているのかな……?)
中沢は気まずい雰囲気を変えようと、家族の話題をすぐに取りやめた。
(そうだ、この機会に昨日のこと聞いてみよう)

中沢は改めて質問する。
「あの巴先輩、俺昨日会ったんですよ、先輩に助けてもらった女の人に」
「えっ?」
マミはちょっとぎくりとした。何かを隠そうとしているように。
話を続ける中沢。
「その人もすっごく喜んでたよ。優しくてキレイな人に助けてもらったって」
「そ、そう言ってたのね。嬉しいわ……」
さらに深く質問してみる。
「巴先輩って、あんなふうによく人助けをしているんですか?」
「そ……そうね。放ってはおけないもの」
「素敵だなあ。でも中学生ってアルバイトできるんですか?」
「アルバイトじゃないわ」
「えっ?」
「自分だけでやっていることよ。お金なんてもらえない。でも報酬は受け取っているわ」
「報酬?」
「助けてもらった人の感謝。それを受け取るたび、もっと頑張ろうって思えるの」
(!!!!)
マミの話を聞いて感激が溢れだす中沢。
「巴先輩! 俺も感謝しています! 頑張ってください!」
「うふふ。ありがとう」
それからまた話そうとしたときだった。
「あ、ちょっと待って」
マミがそう言うと、しばらく目を閉じて指一本動かさなくなった。
一分、二分、三分と過ぎても。
「あの……巴先輩……」
中沢の声など全く耳に届かない。十分くらい過ぎて、ようやく目を開いた。
「ふふ。ごめんなさいね」

教室へ帰る途中、自分のポケットに気づく。
「しまった。巴先輩とトランプやるつもりだったのに。まあいい、また明日」

午後の授業も終わって下校時間。今日の部活はお休み。
中沢は校庭を出るマミを発見した。
「あ、巴先輩」
よく見ると、まどか、さやかも一緒だ。
先輩と一緒に帰りたいなあ。
でも女の子同士楽しそうにしているところを邪魔しちゃ悪い。
そう思って、中沢は三人を見送った。

翌日の昼休みもマミに会おうと、教室を出ようとした。
「あの……」
中沢を呼び止めたのは、小柄で大人しい鹿目まどかだった。
「わたしも、一緒に行っていいかな?」
「鹿目さん……? ああ、いいよ」
まどかはさやかに振り返る。
「さやかちゃんは?」
「あ、あたしは仁美と一緒にいるから。大勢だと迷惑だしさ」
「うん。わかった」

二人が上の教室に入ると、マミはいつも通り、笑顔で迎えてくれた。
「いらっしゃい。あら、鹿目さんも一緒なのね」
「マミさんこんにちは」
「いやあ、どうしても来たいって言うから」
三人が向かい合うように席に座り、食事を始める。
マミがまどかのハンバーグ弁当を見て言った。
「うふふ。鹿目さんのお弁当おいしそうね」
「あの……これ、パパが自信作だって言ってて……」
赤面し、俯くまどか。
「これ、鹿目さんの親父さんが作ったのか? うまそーだなー……」
(俺の親父はいつも飲んだくれて母ちゃんに怒鳴られてるよ……)
こんな美味しそうなお弁当を作ってくれるまどかの父親。
羨ましくなった中沢は、まどかに家族のことをいろいろ聞いた。

鹿目家は、父、母、姉、弟の四人家族。
母が会社に勤め、父が主夫に専業している。
母は、とても仕事熱心で会社でもかなりのエリートらしい。
まどかは母に、社長になっちゃえばいいと言ったことがあった。
すると母は眼の色を変えて、意気揚々と出勤した。
まどか曰く「眼が怖かった」そうだ……
父は家事全てを担い、三歳の弟を幼稚園まで送り迎えしている。
まどかの赤いリボンは、母が薦めてくれたもの。
「ママったら、わたしの隠れファンもメロメロだって……そんなのいないよね」
「あら、私はとっても似合ってると思うわ。女の子らしくて可愛いじゃない」
「もうマミさんまで……」
赤面しながら俯くまどかを見る中沢。
(たしかに、よく似合ってるよな)
よく見てみると、たしかにまどかは可愛い。
だからといって、もちろんマミと天秤にかけるようなことはしない。
中沢はあくまで、マミ一筋なのだ。

それから中沢は、ポケットからトランプを取り出した。
「あの、巴先輩。よかったら一緒に遊びませんか?」
「いいわよ」
何をしようかと聞こうとすると、マミがまどかに聞いた。
「わたしは、ババ抜きや七並べ……あとは神経衰弱……くらいかな」
「じゃあババ抜きしましょう」
マミの提案で、ババ抜きを始める三人。
順番は、マミ→中沢→まどか。
三つに分かれたカードの山がどんどん切られていく。ついに残り七枚。
「はい、上がり」
一番先に上がったのはマミだった。
残り三枚になって、まどか二枚、中沢一枚。
中沢がまどかのカードに手を伸ばす。
(わわわっ……)
まどかが震えだした。当たりはこれか?
でもすぐに取らず、隣のカードに手を向ける。
まどかの震えがさらに増した。
(さっきより震えてる……ってことはこいつが当たりだ!)
中沢は容赦なくカードを抜いた。
「いよっしゃ……あれ?」
中沢の眼に映っていたもの。それは悪魔の絵。ジョーカー。
「な……バカな……」
「えいっ!」
まどかが当たりを取って、中沢の負けが確定した。
(くそう……)
「もう一度やる?」
マミに聞かれ、中沢もまどかもゲーム再開した。今度は逆順で。
二回戦で最初に上がったのはまどか。
残り二枚だったのを、マミがジョーカー取ってしまったのだ。
現在中沢一枚、マミ二枚。中沢の一手で勝負が決まる。
(う……これは……)
中沢がどちらのカードに手を伸ばそうとも、マミは表情を変えない。
作品名:少年純情物語中沢くん 作家名:おがぽん