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ドラゴンクエスト・アナザー

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第二十話 「果てなき使命」


 セーラたちはヘルキャッスルの最上階に入っていった。
玉座には魔物が座っている。
その魔物を見たセーラは、なぜか見覚えがあるような気がした。
「ここまで来たことを褒めてやろう。ワシがギルドラスだ」
「きさまが諸悪の根源か」
「ではおまえたち人間が悪ではないと言えるのか?」
「なんだと!」
「おまえたちも見てきたであろう。人間の醜悪な面を。いずれ自ら滅びる運命なのだ。今ワシが滅ぼしたところで同じ話だ」
「人間はそこまで愚かではないわ!」
セーラが反論する。
「確かに人間は神様にはなれない。でも同様に悪魔になりきることもできないのよ!」
「これ以上は時間の無駄のようだな。いくぞ」

 ギルドラスの持つ黒色のオーブが不気味に光りだす。
「この虚無のオーブできさまの力を奪い取ってくれるわ!」
ギルドラスの虚無のオーブが、セーラの青い珠の光を吸い取っていった。
青い珠が黒く変色していく。
セーラは力が抜け座り込んでしまった。
「きさまは死ぬまで時空の檻の中に閉じ込められるのだ」
そして虚無のオーブから闇の霧が噴き出しセーラの体を包んだ。
「セーラ!」
「危ない!」
カイがマリアを止める。
だが闇の霧が消えた後、そこにセーラの姿はなかった。

 気がつくと”彼女”はそこにいた。
あたりを見渡す。
(ここはどこだろう)
そこは広々とした草原であった。
だが見渡す限り人がいそうなところはない。
”彼女”は見覚えのないこの土地で、どこへ向かって歩いて行けばいいのか迷っているうちに、ふと自分が何者かすらわからないことに気がついた。

(私……誰?)
だが、記憶をなくした”彼女”の頭のどこにも自分の名前はなかった。
自分が何者か、なぜここにいるのかが抜け落ちている。
”彼女”は自分が持っている物を調べてみた。
しかし黒い珠と”オーブ”があるだけで、手掛かりになりそうなものは何もなかった。

自分のことを思い出すのをあきらめた”彼女”は、とりあえず歩き出した。
そこに居続けることに耐えられなかったのである。
だが数歩歩き出すと、”オーブ”が光りだしどこからか声が聞こえてきた。
「ギルドラスの罠にかかってはなりません。さあ元の世界へ戻るのです」
”彼女”の体が淡く光りだしあたりが暗くなる。
”彼女”はどこかへ運ばれていった。

 そのころマリアたちはギルドラスと相対していた。
「セーラに何をしたの!」
「別の平行世界に飛ばしてやったのだ。青い珠の力と記憶を封じてな。おまえたちもあの者と会ったときのことを覚えているのではないか?」
「それじゃあ……」
「セーラはまた三匹のスライムと戦うところから始めているのか!」
「言っておくが、これからおまえたちの村に向かっても無駄だぞ。世界が違うからな。ハーハッハッハッ」
マリアはセーラのこの悲しい運命の環を断ち切ってあげたいと思った。

 そのとき突然セーラが戻ってきた。
「セーラ!」
マリアが驚きセーラに抱きつく。
しかしセーラは無表情に話し始めるのであった。
「みなさん。みなさんのおかげで私は記憶をすべて取り戻すことができました。私の本当の名前はアルテナ。初めてギルドラスと戦ったとき、私は無限のオーブを持っていなかったため、虚無のオーブにより平行世界へ飛ばされました。その後も記憶をなくした私は何度も同じ道を辿り、ギルドラスの次元の迷路から抜け出せなかったのです」

 アルテナは続ける。
「でもそれは無駄ではありませんでした。虚無のオーブの魔力に打ち勝つ力を持つ精霊エルナがいるこの世界に来ることができたからです」
「ばかめ。また過去へ飛ばしてくれるわ」
ギルドラスは再び闇の霧を吐き出した。
しかし無限のオーブの光が霧を消していく。
「ならば青い珠の力を吸いつくしてやる」
だが青い珠は無限のオーブによって強化されており、虚無のオーブはエネルギーを吸い取ることができなかった。
「ギルドラスの魔力は封じられました。いまこそ奴を倒すときです」
アルテナたちはギルドラスへ向かっていった。

「なめるな!」
ギルドラスはスカラとバイキルトを唱え、さらにその体からあやしい霧が噴き出しあたりを包んだ。
ギルドラスは打撃攻撃をしてくる。
四人のHPが削られていくが、霧にかき消されてベホマが使えない。
アルテナは天空の剣を使い、すべての魔法効果を打ち消した。
すかさずマリアが全員を回復させる。
 ギルドラスはジゴスパークを唱えた。
一行は大ダメージを受け瀕死状態になる。
アルテナはベホマズンを唱え、四人のHPを全回復させた。
そしてこちらもギガデインで応酬するが、虚無のオーブに吸い取られてしまう。
やはり虚無のオーブを破壊するしかない。
アルテナは賭けにでた。
無限のオーブを空に掲げると、白い光がギルドラスに向かう。
同様に、虚無のオーブからは黒い光が出て白い光とぶつかりあう。
二つの光の力は均衡していたが、徐々に白い光が押されていった。
「くっ、ギルドラスの力がこんなに強いとは……」
黒い光は無限のオーブに迫ろうとしていた。

 その時マリアが呪文を唱え始めた。
「セーラ! あたしの力を全部あげる!」
カイが止める間もなく、マリアはメガザルの呪文を唱え、そして地面に崩れ落ちた。
マリアの力が青い指輪を通して無限のオーブに満ちていき、白い光は黒い光のパワーを上回った。
ついに黒い光が消え、白い光が虚無のオーブを照らす。
虚無のオーブは砕け散った。
「マリア、なんてことを……」
カイがマリアを抱き起すと、なんとマリアは生きていた。
どうやら、メガザルは人に対して使わなければ術者が死なないようである。
これでもうギルドラスに力は残っていない。
四人は全力でギルドラスを叩いた。

 ギルドラスを倒した、と思ったとき四天王が現れた。
「ギルドラス様、我らの体をお使いください!」
「よくぞ来た。その体遠慮なくもらうぞ」
ギルドラスと四天王が融合していく。
そして巨大な一体の魔物になった。
ギルドラスはイオナズンを二回唱えてくる。
マリアは祈りの指輪でMPを回復しながらベホマラーで回復するが間に合わない。
アレフも賢者の石を使う。
そしてアルテナの打撃とカイのメラゾーマで攻撃する。
一進一退の攻防が繰り広げられたが、やがてギルドラスの体が崩れだした。
一行は息を飲む。

 ギルドラスの体は再構成され別な姿になった。
カイがメラゾーマを撃つが効果がない。
どうやら打撃しか効かないようである。
逆にギルドラスはパルプンテを使ってきた。
山のように大きな魔人が恐ろしい笑い声を上げながら現れた。
魔人はアルテナたちにダメージを与え、笑いながら帰って行った。
マリアがベホマラーを唱えるとともに、カイがアルテナとアレフにバイキルトをかけ、打撃で攻める。
幸いパルプンテによる致命的な効果はなかったため、ギルドラスを一方的に叩いた。
再度ギルドラスの体が崩れ始める。

 ギルドラスの体はまた別な姿になった。
アレフが切りかかるが、まるで手ごたえがない。
今度は魔法しか効かないようである。
ギルドラスは痛恨の一撃の連続攻撃をしてくる。
マリアがベホマで、アレフが賢者の石で回復する。