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The British Museum

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Episode 2



「えーっと…キミはチェスの駒かい?」
「あぁ。見れば分かるだろう?」
「キミ、どこから来たんだい?」

白のナイトはデスクに乱雑に置かれたパンフレッドを指さして言った。

「大英博物館からだ。」

ますます分からなくなってきた。
何で大英博物館のチェスの駒が自分の上着のポケットから出てくるのだ。

ん?そういえばこの駒見たことがある。

「もしかしてルイスのチェス駒…?」
「そうだ。」

大英博物館のチェス盤といえば、The Lewis chessmen―ルイスのチェス駒―である。
中世ヨーロッパのチェス駒で、それぞれ8個の王と女王、16個の僧正、15個の騎士、
徴兵役の12個の城将、そして19個の歩兵があることが知られている。
一部はスコットランド国立博物館に保管されているが駒はそれぞれ異なった形をしている。
スコットランド北西の離島で発見されたが、その由来についてはまだ明らかになって
いない。馬に人が乗っているように彫られたそれは、その様式からスカンジナビアか
ノルウェーのものだと考えられている。
小さい頃はその奇怪な容貌が好きで、お気に入りの展示物だった。
博物館に行く度に必ず見に行っていたから、見間違えるはずがない。
保管された当初は赤く着色されていた駒もいくつかあったようだが今ではもう剥がれ
落ちてしまっている。
このナイトは赤だったのだろうか、それとも 元々艶やかな乳白色だったのだろうか。

「お前、名前はなんていうんだ?」
「俺かい?俺はアルフレッド・F・ジョーンズだ。」
「そうか。では、Mr.ジョーンズ…」
「アルフレッドでいいよ。」
「…アルフレッド、何を考えて俺を持ち出したのか知らないが、
今すぐ俺を大英博物館に返せ。」
「え?持ち出すって、俺はそんな泥棒みたいなことしないんだぞ!
それに、あそこはもう夜遅いし閉館してるんじゃないかい?」
「つべこべ言わずに、俺を早くもとの場所に戻せ。
俺は王と女王を守る神聖なるナイトだ。こんなことをしている間に
何かあったら俺はもう…」

訳が分からないアルフレッドだったがナイトの切羽詰まった様子に可哀想になり
さっき彼を出した上着を羽織った。

「OK、事情はよくわからないけど困っている人は見過ごせないんだぞ。
何てったって俺はヒーローだからね。」

財布をポケットに突っ込み、ナイトを反対側のポケットに入れてやり、
数時間前まで自分もいた大英博物館へ向かった。



作品名:The British Museum 作家名:Sajyun