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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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特殊手錠KANNO ユニット NO.78!




フィリップが検索した住所は街外れの森の近くにある廃工場だった。
鉄骨や大型の金属部品を加工していた会社。
不況で経営が立ち行かなくなり、十数年前に社長が夜逃げしたか首を吊ったかといった話で一時は街で噂になった廃工場。
経営者がいないのだから取り壊すしかないのだが、敷地があまりにも広く取り壊すにも莫大な金が必要となるため今の今まで放置されていた。
経営者のいない工場の生産ラインは当然の如く止まっていた。
何年も人の手が入っていない建物の外壁はところどころが剥がれており、屋根にはいくつもの穴が空いて雨漏りを起こしている。
人の手では運べない大きな金属を運ぶために設置したであろう大型の機械の数々はその天井からの浸水にやられてすっかり錆付いてしまっている。
廃工場は夜の空気を纏い、その様相はさながら巨大なウォークスルータイプのお化け屋敷を想起させた。
「ここが、フィリップが調べてくれた住所か・・・・・・」
「い、いかにも、という感じだな・・・・・・ぶるる」
その廃工場の前に男が二人。
一人は1950年代調の渋めのスーツを着こなし、ハンフリー・ボガートばりのソフト帽を被っている青年。
もう一人は黒くて細身なスーツに短い髪の線は細いサラリーマン風の青年。
左翔太郎と真倉俊だった。
あれから翔太郎は、とりあえず病院にいる亜樹子に『これから真倉と敵のアジトかもしれない場所へ潜入捜査へ行く』と簡潔に報告をし、彼の愛機であるハードボイルダーでこの廃工場に来ていた。
「し、しかし探偵。本当にこんな人気のない不気味なところに犯人がいるのか?」
「人気がなくて不気味だから、悪いことをしやすいんじゃねーか」
翔太郎は少し呆れがちに真倉に返答する。
「というかお前、まさかこの後に及んでビビってないよな?」
「ま、まさか! 街の平和を守る警察官であるこの俺が、こんなボロっちい工場に恐れをなすなど、」
ばさばさばさっ!
「うお!?」
工場の入り口付近からカラスが飛び立つ。
それに驚いて思わず後ろに跳んでしまう真倉。
「・・・・・・おい」
「ちっげ、今の、今のナシ! 不意打ちだったんだから仕方ないって!」
「・・・・・・はぁぁ」
深い溜め息をついて天を仰ぐ翔太郎。今さらながらにこの真倉という男をつれてきたことを後悔する。
(せめてジンさんもいりゃあ、二人で身を守り合ってもらっている間に敵を倒せるかもしれねぇのに・・・・・・)
刃野はこの廃工場には来なかった。
『ジンさんは来ないんすか!?』
『ああ、別件で調べたいことがあってな。あっはっは。わりぃな、終わったら俺もすぐ行くからよ』
『マジっすか・・・・・・』
『あ、くれぐれも無茶はすんなよ? 目的はあくまで調査だからな。中の様子をみたら深追いせずにすぐに退避するんだぞ』
ヨロシクネー、と軽い調子で事務所を出て行った刃野。
「あんだけ焚き付けておいて自分は来ないとか、マジでどんだけだ、あの人・・・・・・」
さらに真倉の話ではまだ敵アジトとしての確証がないため警察の増援はないらしい。結局捜査には翔太郎、刃野、真倉の3人で当たらなければならない。
そのうちの一人はすでに現場に来れなくなってしまっていて。
「うお、暗くて前が見えん! ひぇ、何か頭触った、と思ったらでかいくもの巣!?」
もう一人は潜入捜査なのにえらい大声を出していた。
「・・・・・・」
こっそり忍び込むつもりが真倉の無駄大きい声と動きでえらい目立ってしまっている。
「うひゃっ! な、なんか足元でバキバキ言ったぞ。ま、まさか人間の骨、かと思ったら材木じゃん。なっはっはー、なんだ! ビックリさせおってー!」
「うるっせーぞ、マッキー! 潜入捜査なんだからもっと静かに、」
「あ、こら探偵、そんな大声を出すな! 敵に気づかれてしまう!」
「お前が、言うかぁぁぁあああ!!」
ぎゃあぎゃあ言い合いながら廃工場に入る二人
おそらく敵は二人が侵入したことに気づいているだろう。
ひとしきり大声を出し合い、ぜーぜー、と肩で呼吸する二人。
(ダ、ダメだ・・・・・・やっぱこいつと捜査なんて無理だ・・・・・・やっぱり足手まといになりそうだし、何より俺のハードボイルドなイメージが崩れる・・・・・・っ!)
実際には周りの人々にハードボイルドとして認知されていない翔太郎だったが、これ以上捜査のリズムが崩れることは避けたかった。
翔太郎は、すーはー、と深呼吸をし心を落ち着ける。
「・・・・・・あー、真倉刑事? ここからは私めが一人で行きますから、刑事はどうぞここの入り口付近でお待ちになって下さい」
わざと丁寧な口調になり、真倉の自尊心をくすぐる作戦に出た翔太郎。
褒め殺して言うことをきかそうというのだ。
「ぬう・・・・・・」
単純な真倉はそれに悪い気がしないのか、さっきの言い合っていたのとは打って変わって、黙って翔太郎の話に耳を傾ける
翔太郎は、しめた、とばかりに必要以上にへりくだる。
「この程度の事件、真倉様のお手を煩わせる必要もないかと。ここは真倉様の助手である私めにお任せ頂きたく存じます」
そう言って翔太郎は深々と頭を下げる。
「ふぬう・・・・・・」
そんな翔太郎の態度になにやら思案顔の真倉。
どうやら本当に翔太郎の言うことに耳を傾けているらしかった。
「・・・・・・」
冷静に頭を使った翔太郎の作戦。
真倉俊という男の性格の穴につけこんだ見事な話術。
自分のプライドを捨てたその戦略は、
(く、屈辱だぜぇぇ・・・・・・っ!)
翔太郎の精神に思っていた以上のダメージを与えていた。
(くそ、なぜ俺があのマッキーごときに『様』をつけて呼ばにゃならんのだ! 理不尽すぎるにもほどがあるぞっ!)
ちょっとかしこまり過ぎたか、と自分の行動を激しく後悔する翔太郎だった。
「・・・・・・」
それに相変わらずの思案顔の真倉は。
「・・・・・・分かった」
ようやく重い口を開いた。
「わ、分かってくれたか!」
下げていた頭を上げ、ぱぁ、と顔を明るくする翔太郎。
これで真倉がアジト内に入らずに待機していてくれれば、フィリップの体調が回復次第、ダブルに変身をして敵を倒すことが―――、
「お前が、そこまで俺を尊敬していたとはな!」
・・・・・・はい?
真倉は腕を組み偉そうに胸を張る。
「よかろう! そこまで言うのならば仕方がない! この真倉様の風都署仕込みの捜査術をきっちりレクチャーしてやろうではないかっ!」
「・・・・・・え、何だって?」
思わず自分の耳を疑いそうになる翔太郎。
それを大丈夫、分かっているぞ、とでもいうように手で制す真倉。
真倉はすっかり調子にのっていた。
「ふっふっふ。光栄に思えよ、探偵。俺が直々に人にものを教えるということはまずないからな」
それは真倉が風都署内で一番下っ端でこれ以上ものを教えられる人間が下層にいないだけだった話だが、あえて真倉はそれに触れない。
「お前は俺のあとからついてこい。ドーパントでも完全誘拐犯でも俺にかかればぽぽぽぽ−んだということを思い知らせてやるっ!」
「ちょ、待て、それじゃ意味ねーだろ。おいコラ、どんどんなかに入っていくな!」