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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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鉄は熱いうちに衝く




「う、お・・・・・・??」
桐嶋に切られたところがまるで焼き鏝でも当てられたように熱い。
ジュワワワ〜。
みるとダブルの装甲が少しずつだが溶け始めていたのだ。
「なん、だ・・・・・・?」
「これは、一体・・・・・・?」
苦しさよりも驚きが先行する。
「・・・・・・・」
その様子を静観していた桐嶋は。

「・・・・・・・ク、クハハ・・・・・・、シャハはハはハハハはーーーーっ!!」

気でもちがったように笑い出した。
「て、てめー、何をやりやがった!?」
ダブルは自分のなかに芽生えた焦りを打ち消すために叫んだ。
その叫び声をスイッチにしたかのように桐嶋は笑いをピタっと止める。
「『てめー』? 随分と乱暴な言葉を使いやがりますじゃねーか、コラ? 口の利き方には気をつけたほうが良いかと。私の機嫌を損ねるとその分早く死ぬことになりやがりますぜぇ?」
それは無機質な瞳。
言葉は乱暴で敵意に溢れているのに、瞳からは何も感情が窺えない。
ジュワワワ〜。
「うぐぅぅ!?」
しかしダブルの傷の痛みだけはその言葉に呼応するように痛みを倍増させる。
「クサリヘビって言葉を知っていますか?」
苦しんでいるダブルをよそに桐嶋は言葉を続ける。
「まぁクサリヘビって単語自体は毒蛇の種類の総称なのですがね。その構成種は皆同じ系統の毒を持っているのですが、これがかなり危険な毒でして」
何がそんなに楽しいのか桐嶋はくつくつと愉快そうに笑いながら喋る。
「『出血毒』。毒を注入された箇所から強力な消化酵素によって血管などの細胞を腐らせるタイプの猛毒です。その毒に傷つけられた血管からは出血が止まらず、血清でも打たないかぎり症状が修復されることはない」
桐嶋はダブルにとって絶望的な事実を本人を前にして楽しそうに告げる。
「私のこのナイフには、私の体内で分泌された出血毒がたっぷり塗りこまれている。貴方達を切り刻んだ、このナイフにね」
桐嶋は自分が手に持っているナイフを手の中で弄ぶ。
毒蛇の牙。
何故かそんな単語を想起させる、まがまがしい不吉なフォルム。
「そしてその毒性のレベルは、私の心理状態に連動しています。私の気持ちが落ち着けば毒化は起こりませんが、私の感情が怒りや闘争心で満たされれば毒は活性化し獲物の体を溶かし始めます。―――今の貴方ように、ねっ!」
ドガンっ!!
桐嶋はダブルの顔を思いっきり蹴り上げた。
「ぐはっ!!」
ドサリ。
毒のせいで思うように体に力が入らないダブルはその蹴りをまともに喰らい、そのまま倒れる。
「お返しです。・・・・・・ああ、これって確か大当たりですか? 景品はどこに行けば頂けますかね?」
きょろきょろとワザとらしい動作で周りを見回す。
ぺきぺきぺき。
そしてついでにダブルを踏みつける。
「ぐあああ!!」
「ああ、おやおやすみません。ワザとでした。シャハはハはハハハ!」
ダブルを踏みつけた状態で高笑いする桐嶋。
「て、めぇ、だんだん本性を現してきやがったな・・・・・・っ!」
ダブルは非情で残虐な攻撃を繰り出す桐嶋を睨みつける。
「本性? ああ、この好戦的なテンションのことですか? いやいや、これは違うのですよ。実は私の頭にもまわっているのです、―――このヴァイパーの毒がね」
「な、んだと?」
よくみると桐嶋の目の焦点があっていない。感情的にならない平坦な性格だから自然と目も虚ろになるのではないか、と勝手に解釈していたダブルだったが、桐嶋の目のまどろみはダウン系の麻薬中毒者のそれだった。
桐嶋はまどろんだ視線のまま自分の話を続ける。
「これがヴァイパーメモリを廃棄処分にしなくてはならなかった要因でしてね。毒の効力が強化されると、使用者の体内にまでも毒が分泌され、脳ミソがやられてしまうのです。まぁ私は適合性がかなり低かったので精神を狂化する程度で済んでいますが、過剰適合者がこのメモリを使った場合には、毒の分泌は凄まじいですから、発狂してものの数秒で廃人にしてしまうでしょうね」
己の精神を抂化することによってメモリの能力を強化する。
ヴァイパーメモリの真の特異性はそこにあった。
そしてそれは、文字通り人間には有毒すぎる特異性。
「使用者を壊すメモリ、だって・・・・・・?」
ダブルの驚愕した表情が気に入ったのか桐嶋はなおも楽しそうに言葉を続ける。
「しかし、そんなピーキーチューンなメモリも考え方と使い手次第。私のような適合率が極端に低い人間、適合不足者とでも言い換えましょうか。そう言った人間が使えばこのメモリはリジェクトメモリでありながらリジェクトメモリでなくなる。ミュージアムの研究者ですら不可能と判断した事象を私の知恵とアイデアが可能にしたのです!」
動けないダブルに演説でもするように桐嶋は言葉を続ける。
「私はミュージアムでは通常のガイアメモリの研究をしていませんでした。何故か? それは私が特別な人間でミュージアムでも私の能力はあまりにも高すぎた。だからミュージアムは私をないがしろにし、結果滅びの一途をたどった! 全くもって愚かな組織です! この私を手放すなんて、救いようのない愚者だ!」
桐嶋は両手を広げて声を高らかにする。
「故に私は証明しなくてはなりません! 私が優秀で私を手放したミュージアムが愚かであることを! そのためにサイレント・キーパーを結成した! ミュージアムの成し得なかった世界征服をするために! ククク、シャーーーハはハはははぁぁぁーーー!!」
何かのブレーキが外れたように笑う桐嶋はどこからどうみても狂人だった。
今は無きミュージアムへの異常な執着心と歪んだ反骨心が生んだ巨悪の残滓。
その狂人に対してダブルは、

「いや、ミュージアムはてめーを捨てて正解さ」
「確かに。科学者として君はあまりに無能すぎる」

真っ向から否定した。
「・・・・・・・ああ? 何か蚊の鳴く声が聞こえましたが、気のせいでしたか?」
そう言ってダブルのほうへ振り向いた桐嶋の目は脳ミソが狂化したせいで恐ろしいほどの殺意で輝いていた。
「ミュージアムが廃棄処分と烙印を押したヴァイパーメモリを実戦で使えるまで性能を引き出せたのはこの私の知恵とアイデアです! それにケチをつけるってのはどういう了見ですか、ゴラァァ!」
常人ならそれだけで心臓麻痺でも起こしてもおかしくないほど歪んだ怒気と殺気を桐嶋は放つ。
それをまともに受けてもダブルの眼から光が消えることはなかった。
「もし、本当にてめーが優秀な科学者だったら、ヴァイパーメモリを使える人間を見つけ出すことじゃなく、メモリの欠点を改良していたはずだ」
「!?」
「それをしなかったテメーは諦めたんだ。自分には手に余るってことでな」
「この、減らず口を・・・・・・っ!」
「あと、もう一つ捕捉だ。ミュージアムは別に世界征服なんか企んでいないよ。・・・・・・あの組織は、家族を取り戻したかっただけなのさ・・・・・・君はミュージアムの表層だけを知って全てを理解したつもりになっている。それはきっと、真理を探究する科学者としては哀しいことなんじゃないのかな?」
「訳の分からないことを言ってんじゃねーですよ!!」
桐嶋は吠えた。