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 「私はこの館を作った者によって、此処へ連れてこられたのだ。その前の記憶(メモリー)ははっきりとしない」

 俺達は地下の不思議空間から地上へと移動し、この館のサロンとおぼしき部屋で、各々ソファーやカウチに腰を下ろして情報を出し合う事にしたのだった。
シャアは現在が何年なのかを知らなかったし、俺達は彼が何者なのかをハッキリさせたかった。

「メモリー? 記録って事? あ…シャアは人間じゃないって事か?」
「アムロったら。一般的なホモサピエンスが、さっきアムロの言った様なカプセル状の中に納まるわけ無いでしょ? どう考えたって無理があるわ」
「うっ!……そ、そりゃ、そうだけどさ。どう見たって人間に見えるだろ?」
「そうねぇ。妖怪や幽霊じゃないわねぇ」
「ララァのシックスセンスに引っかからないんだからね。でも、人間じゃあ、無い」
「そうだな。そも、私は地球上の生命体ではない。かなり昔に、太陽系だったか? …の外から、この星に飛来した者だ」
「「ET??」」
「それに、この姿も実際の私の姿とは微妙に異なる」
「じゃ、なんでその姿なんだ? その姿は実体じゃなくてホログラムみたいなものって事か?」
「いや。血肉はある。だが、本来の姿ではない」
「では、何故、そのスタイルになっているのです?」
「これは、アムロが描いた理想の姿なのではないかと思う。そもそも、この星に飛来して最初に出会った男は、私をfe’maleとしたからな」
「「女性??」」
「ああ。とは言え本当の女性になれるわけではないから、その者との間に子孫が残せるわけではない。だが、私は君達にはありえない能力があるので、私を得た男は随分と羽振りが良くなって行ったがな」

カウチに陣取ったシャアは、ゆったりと身体を横にしており、まるでまどろむ金色の獅子の様だった。
開け放した窓から入り込む風が、金糸をさらさらと揺らしている。それだけを見ているなら眼福で済むが、話す内容が突飛過ぎて、それを満喫している余裕は無かった。

「その姿が俺の理想像って…。俺、ヘテロだけど…。いや! 今はそれの追求は置いといて。…ありえない能力って? ララァだって一般的な人が持ち得ない能力を持ってるけど?」
「あら、そんな事は無いのよ? アムロ。昔は皆持っていたはずなの。生活の中で退化して行っただけよ」
「でも、現代人はほとんど持ってないだろ? 現に俺やカイさん、ブライトさんや親父は皆無だからな」
「いや。君の中にも能力がある。今、それは埋もれていて、本人ですら気が付いていないだけだ。そうでなければ私と曳かれ合う筈が無い」
「いいや。それは無い。ってか、俺の事はこの際置いといて。あんた…シャアの能力ってなんだったんだ?」
「私の能力は、この星の言葉で言うなら予知と透視、テレパシー、非常時には念動力も発揮できる」
「ESPとPKって事か」
「それぞれなら、有している方々はいらしゃいますよ。でも両方となると少ないでしょうね」
「もし、それを有している者がいるとしたら、そやつは私の同胞かその血を継ぐ者だろう」
「で、あん…シャアの能力を利用して財を築いたってわけか…」
「そうだ。どう動けば利を益られるか、危険を回避できるかが事前にわかるのだからな。面白いように儲けていたな」
「なのに、なんだってあんな所で寝てたんだ?」
「そうですわね。それほど利便がよろしい方なら、片時も離さないで傍に置いといた方が有益でしょうに」
「…あの…さぁ。そういった即物的な言い方。ララァに似合わないから止めてくれる?」
「あら? 私、意外と即物的でしてよ。あまり情に流されやすいと、あちらの方々に同情してしまって困りますもの」
「そ、そういうものなの? ……まぁ、それは置いといて」
「先ほどから置いておく事案が増えている様だが、それはいつ拾い上げるのかね」
「うっ、うるさいなぁ。追々拾い上げるよ。…忘れてなけりゃ…。それより、なんであそこで眠ってたと言うか封印された様になっていたのかって事だよ」
「この国に来たのは、あの館を建てた男とだった。彼は私の能力を利用して、この国のTOPとの交渉を有利に進ませるつもりでいた。当初はそれで良かった。だが、私の身体的理由で生命活動を停止せねばならない事態となったのだ」
「活動停止?」
「そうだ。我々は一定期間活動を続けると休眠状態にならねばならない。所謂、充電期間と言った感じか。一定の期間が過ぎたら彼が私を起こす手筈になっていた筈なのだ」
「それは、いつ頃の話?」
「……西暦1938年…だったと記憶している」
「あ〜〜、そりゃ無理だわ」
「無理?」
「うん。その翌年にこの国、戦争を始めたから…。1939年から1945年まで世界中と戦争してたから、外国人は強制的に国外追放した筈だよ。起こしたくたって起こせない事態に追い込まれちゃったんだ」
「この土地は外国人居留地でしたから空襲にも遭わなかったんです。館は無事だったのに、不幸な事に貴方を起こす方が伝言を残されなかったのでしょうね」
「……そうか。私は自分の技術を使って休眠中の生命維持装置を作り出したのだが、あまりに長すぎて維持装置もほとんど休止状態で充分になってしまっていたのだな」
「でも、それが何でいきなり動き出したんだ?この館の変異って、シャアの生命維持装置が活動を開始した事が原因だろう?」
「そうだろうと推察する。そも、異変はいつから始まったと言われているのかね」
「記録によりますと、25年前からだそうですよ」
「「25年前…」」
「あら、いやだ。二人してハモってますわぁ」

ララァが俺とシャアが異口同音で言葉を発したのを可笑しそうに茶化したが、俺はその数字に引っかかりを覚えた。

“25年前って、俺が生まれた年って事か?”


俺は、先ほどからシャアが口にする俺との繋がりが、こんなところにあった事に悪寒を感じた。
                           2011/06/20
作品名:A I 作家名:まお