さらば… イスカンダル 3
イカロス
「ここがイカロスか。」
岩盤の中をくりぬきヤマトを中に収めるとまた岩盤を貼り付け表からはドッグとはわからない。ヤマトには次期乗組員となる予定の訓練生がすでに乗り込んでいて各々の訓練をしていた。ここは訓練学校の一部となり分校扱いとなっていた。
サーシァはすでに小学生ぐらいになっていた。当初の予定の英語と日本語はすでに日常生活に困らない程度になっていた。守は月基地の真田のラボで二週間、イカロスの真田のラボで二か月生活した後地球に戻り藤堂の右腕、参謀として働くことが決まっていた。
サーシァは守がいなくなった後、山崎と真田、佐渡とアナライザーで面倒を見て中学生ぐらいになって身長の成長が収まったら訓練生に合流させようという事になっていた。(佐渡とアナライザーはひと月程の予定で戻りその後は佐渡が通いで様子を見るようになっている。)
「サーシァ」
守がサーシァを呼んだ。サーシァは見た目は小学生だが精神年齢は高校生ぐらいに達していた。
「はい。」
サーシァはすぐ守の所へ来た。
「今日の勉強は終わったかい?」(守)
「えぇ、終わったわ。明日の分の予習をしていたの。」(サーシァ)
「そうか、サーシァは勉強熱心だな。」(守)
「そう?面白くって…あ、何か…私に?」(サーシァ)
「あぁ…そろそろきちんと話しておかなくてはいけないな、と思ってね。」
守が優しい目でサーシァを見る。
「もうすぐ、お父様は地球へ行かなくてはいけないんだ。」
サーシァの眼が大きく開いた。
「多分…サーシァの思っている通りで…一緒に地球へ行く事は出来ない。」
瞬く間にサーシァの眼から涙が落ちる。守はサーシァを抱きしめた。
「サーシァは“真田 澪”として訓練生になるんだ。真田の叔父さんの姪と
してね。お父様がお母様と結婚した事…そしてサーシァが産まれた事は
地球で公表できない事なんだ。もしそれが漏れた後、サーシァが犯罪に
巻き込まれたりしたら…考えたくない事だがお父様の仕事と言うのは最悪
の事を考えないといけない仕事なんだ。お父様がイカロスを出たらサーシァは
真田澪として訓練生になる。そして卒業したら地球へ戻って来れる…
そしたら一緒に暮らそう。お父様も時々イカロスへ来るから…」
守も涙目になっている。
「お前を誰よりも愛している…愛しているから危険な目に遭わせたくな
いんだ。」
サーシァは声もなく泣いている。
「お父様にはお前しかいないんだ。少しの辛抱だ…地球で一緒に暮らすために
お父様もガマンするから…サーシァも…な。離れててもお父様はお前の
事、忘れたりしない…。」
守は強くサーシァを抱きしめた。
「今すぐ地球へ行くわけじゃない…サーシァが訓練生になるまではお父様が
ちゃんと近くにいる…」
「お父様…」
守はいつまでもサーシァの美しい金髪をそっとなでていた。
作品名:さらば… イスカンダル 3 作家名:kei