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敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯

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最善と次善、そして決して許されないこと



「つまり艦長は、石のためにクルーが命を投げ出すのを防ごうとして、古代に荷を捨てろと言ったというわけか?」

と島が言う。対して新見が、

「まあ、かもしれないという話ですが」と応えて言った。「あの状況では、真田副長の制止を聞かずに、加藤二尉や他のタイガーパイロットが飛び出してしまっていたかもしれません。ひとりが出ればきっと何機も続いたでしょう。置き去りになると承知の上で……」

「まあな」

「艦長はそれを嫌って、古代一尉に荷を捨てろと言ったのではないでしょうか。〈タイガー〉が行けば必ず〈ゼロ〉を救けられたというものではなかったんです。〈ゼロ〉と〈タイガー〉とコスモナイト、全部一度に失うよりは、荷を捨てさせて難を逃れるべきと艦長は判断した――」

「〈ゼロ〉はスピード重視の戦闘機だったな」と太田。「あれがカラ荷で全速を出せば、ガミラスの機はついてこれなかったはずだ。古代は楽に敵を振り切り〈ヤマト〉に帰ってくることができた――」

「うん」南部が頷いて、「タイガー乗りが救おうとしたのは古代じゃなくてコスモナイトだ。貨物ポッドを捨てたなら、外に飛び出す理由はなくなる」

「わかるが、しかしそれだけかな」島が言った。「ひょっとしたら艦長は、古代のために死ぬ人間をあそこで出したくなかったんじゃないか?」

相原が、「うん? 何それ」

「つまりさ、今、古代のやつは、この船の疫病神になっちまっているだろう。あの状況で〈タイガー〉が救けに行って置き去りになれば、たとえあいつがコスモナイトを持ち帰っても疫病神だ。タイガー乗りは行くなと言われて行ったってのに古代のせいで死んだことになっちまう。またまた古代のせいじゃないのに古代のせい。よくよく船の疫病神……〈ヤマト〉のために必要な石を持って帰ってきたって言うのに……」

「そりゃまあ」

「艦長はそれを避けようとしたんじゃないのかな」

「いや、待った。それは結果論じゃないか?」と徳川。「古代が荷物を捨てていれば、命令に従ったからだと言うのにやはり疫病神だろう。船のために必要な石を持って帰ってこなかった……あいつのために波動砲の修理ができないということになる」

「うーん……ですが、それを言うのであれば、どちらに転んだとしても……」

「とにかく、あれが指揮官として、あのときできた最善の選択だった――そうじゃありませんか?」と新見。「あの状況で古代が荷を持って帰還するのは、本来望めなかったはずです。コスモナイトの回収は無理と思えばあきらめて次善の策を取るべきで、艦長はそう決断された。けれども古代が命令を遂行不能と見ると、すぐさま別の手を考えた」

「そうなるのかな」と太田。

「戦場は思い通りに事が運ぶ場所ではありません。状況は急変を重ねるもので、臨機応変に先を読んで対処できねば戦いに勝つことはできない。しかしこれが言うは易くで、並の指揮官なら何もできずに〈ゼロ〉も〈タイガー〉もコスモナイトも失うことになっていたか、〈ヤマト〉そのものが沈んでいたか……」

「もしくは、〈ゼロ〉とコスモナイトを見捨ててサッサと逃げていたかだな」徳川が言った。「その場合、地球に一度引き返すことになっていたろうな。しかしそれは……」

「決して許されないことだ」真田が言った。「〈ヤマト〉はイスカンダルへ行く船ではなくなってしまう。次はエリートの逃亡船として宇宙へ出ることになる」

それで全員が黙り込んだ。そうなのだった。誰もがよく理解していた。この旅に途中の一時帰還は断じて許されないものと考えなければならない。コスモナイトが要るのなら一度地球に戻ればいいことじゃないか、と――そういうわけにはいかないのだ。

そしてもちろん、クルーが死んでも補充はできない。古代が死に、タイガー乗りも何人か死ねば、地球に戻って補充しよう――そういうわけにすらいかない。まだ太陽系にいる今でもだ。

〈ヤマト〉はそういう旅に出た。一度戻ってクルーとコスモナイトを補充し、地球を再び出るとしたら、そのとき〈ヤマト〉はもはや人類を救う船ではなくなっている。

次に宇宙へ出るときの〈ヤマト〉は、人類の存続と地球の自然を戻す計画を打ち捨てて、民を見離しごく一部のエリートだけが太陽系から逃げ出す船に変わっているのだ。これはそういう旅なのだ。イスカンダルを目指すのは、一度きりしか認められない。

この艦橋だけでない。今〈ヤマト〉に乗っているクルーの誰もがそれを胸に刻んでいた。だから、途中で何があろうと、コスモクリーナーを手にせぬ限り地球に戻るわけにはいかない。

南部が言う。「イスカンダルなんてそもそもアテにならない話と言われてるんだもんな」

「そうだ」と真田。「地球政府の要人の中には、サーシャに感謝するどころか、〈コア〉を百個くれなかったと言って恨んでいる者が少なくない――いや、ほとんどがそうだろう。むしろ、そんな者らのせいで一個しかもらえなかったのに……」

「『船一隻でマゼランへ』というのがそもそも無茶ですからね」斎藤が言った。「ひょっとして、艦長があの古代というのを航空隊の隊長にしたのは……」

「なんです?」と相原。

「いや、その」斎藤はたじろいだように、「ちゃんとわかって言ったわけじゃないんだが……」

なんだ、という顔に一同がなったとき、ゴンドラが上から降りてきた。古代がひとり乗っている。