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コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ

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節分!!




 月ももうすぐ変わろうかと言う頃、コンビニにやって来た本田さんとうさぎさん。
 今年も節分を本田さん宅で開催すると言う。去年の大騒ぎで今年はやらないんじゃないかと思っていたので、

「今年もやるんですか?」

と、確認のために訊くと、本田さんはにっこりと笑った。

「去年は酷い目に遭いましたので、今年はルールを変更することにしたんですよ」

にこりと笑いつつ、本田さんは隣に立つうさぎさんを横目に睨む。うさぎさんは視線を合わせぬようそっぽを向いている。

「…去年は、…本当に酷かったですもんね…」
「…ええ。本当に…」

本田さんが溜息を吐く。

 去年の節分、俺は初参加だったのだが、非道かった。豆撒きなどという可愛いものではなく、日頃の恨みつらみをぶつけ合う豆撒き合戦と言うか…。
 本田さんが届いた配達の品を受け取りに玄関に立った隙にそれは勃発した。発端はハンバーガー君が眉毛さんに豆をぶつけたことからだった。それに眉毛さんがブチ切れ応戦し、それにエキサイトしたうさぎさんが乱入。いつ脱いだのか、股間に薔薇を装着した髭さんも参戦。眉毛さんに恨みでもあるのか、親分さんがハンバーガー君の味方に付き、逃げまわる眉毛さんを追い掛け、豆を投げ散らし、豆を避けようと正月前に張り替えた障子を眉毛さんが盾に取り、障子には穴が。眉毛さんが「大英帝国舐めんな!!EUなんか脱退してやるんだからな!!」と叫び始め、ムキムキさんが目に余る状況に止めに入ろうと試みるが、うさぎさんがムキムキさんを挑発する始末。親分さんが矛先を変えて、ムキムキさんに絡み始め、それに便乗して髭さんもムキムキさんに絡む。それにキレたムキムキさんが真っ先にうさぎさんをスープレックスで沈め、向かってくる親分さんをラリアットで倒し、ヘッドロックで髭さんを沈めた。その間、ハンバーガー君はひたすらニコニコ顔で眉毛さんを追い掛け回していたのだが、いきなり、硬直し、ダラダラと汗を掻き始めた。何事だ?と盾にした卓袱台の陰から、様子を窺うと、そこには鬼の形相の本田さんが寿司桶を手に立っていた。
 ムキムキさんのプロレス技で沈められた三人は襖に大きな穴を開け、うさぎさんは足を突っ込んで気絶してるし、ハンバーガー君の豪快な豆撒きにより障子には散弾銃、ぶっ放したような小さな無数の穴が空き、畳にには踏み潰された大豆の残骸が粉となり、酷い有様になっていた。

「一体、これは何ですか?説明していただけますか?」

額に青筋立てつつ、にっこりと笑う本田さんは般若もびびって逃げそうな程に恐ろしい。気絶していた三人は速やかに叩き起こされ、何故か六人で正座。俺も正座した方がいいのかと思ったが、本田さんに寿司桶を手渡された。
「先に食べてください」
「いや、俺も止められなかったし、同罪じゃ…」
しょぼんと言うか、今から落ちるであろう本田さんの雷に戦々恐々な面々が縋るように俺を見るので困った。
「この人達が暴れ始めたら、止めるのは上司だって無理ですよ。…で、この惨状の発端は誰ですか?…まあ、見当は付きますが…」
じとりと本田さんはハンバーガー君を睨む。ハンバーガー君は首を竦め、そっぽを向いた。
「…菊、すまない。止めるつもりがこんなことになってしまって…。襖は俺が責任持って直す」
悲痛な面持ちでムキムキさんが言う。それに本田さんは溜息を吐いた。
「ルートヴィッヒさんが責任を感じる必要はありませんよ。大方、ギルベルトさんとそのお仲間、二人の所為でしょう?」
じろりと本田さんはうさぎさんと親分さんと髭さんを見やる。うさぎさんはさっと視線を逸らし、下手な口笛をピューピュー吹き、親分さんと髭さんは我関せずな顔をしている。本田さんはまた大きな溜息を吐いた。
「…あの、本田、」
それに恐る恐る、眉毛さんが口を開く。それにつっと本田さんは冷たい視線を向けた。
「何ですか、アーサーさん」
「俺がアルの大人気ない挑発に乗ったからこうなったんだ。本当にごめん!」
その冷たい視線に怯えつつ、謝る眉毛さんに本田さんは視線を緩めると、うさぎさん、髭さん、親分さん、ハンバーガー君と視線を返して見やり、厳かに口を開いた。
「…素直に謝ってくるなら、許そうと思ってましたが、ギルベルトさん、アントーニョさん、フランシスさん、そして、アルフレッドさん…」
本田さんの声が一段と低くなるのに、四人は肩を竦めた。
「罰として、責任持って、障子と襖の張替え、散らかした豆の回収と掃除をする。歳の数だけ炒り大豆を召し上がって頂く…、お好きな方をお選びください」
掃除は兎も角、歳の数だけ、豆を食うって、大変なんじゃ?…本田さんを伺うとニコニコしている。それと反対に三人は青ざめ、何故かハンバーガー君は元気になった。
「800粒、食うのかよ?」
「え?俺なんか、軽く1000粒になっちゃうんだけど」
「俺もやで」
「400粒なら、楽勝なんだぞ!」
嬉々とするハンバーガー君に本田さんは悪魔の微笑を浮かべて言った。
「箸を使って、一粒づつ食べて頂きます。食べ終わるまで、寝かせませんし、正座で反省して頂きまます。逃げられると思わないでくださいね。本物の鬼に来て欲しくはないでしょう?」
箸に慣れ親しんでいない、正座の文化もない面々にそれはかなり厳しい。そして、最後の本田さんの言葉に四人はgkbr。…早朝から、障子、襖の張替え、掃除、片付けをすることに相成ったのだが、四人はそれでも素直に謝らなかった為、本田さんが近所の評判の寿司屋から出前で取った海鮮ちらし寿司は振舞われず、本田さん、俺、ムキムキさん、眉毛さんで頂くことになった。四人には本田さん特製の五目煮と具が干瓢のみの恵方巻きが振舞われたのは本田さんの温情だろう。…五目煮は俺らにも出されたが、美味しかった。…が、自業自得の結果とはいえ四人のジト目光線が凄かった記憶しかない節分だった。

「ルール変更って、どうするんですか?」

去年のことを思い出しつつ、訊ねれば本田さんが口を開いた。
「制限時間以内に箸でどれだけ豆を皿に移すことが出来るかにしようと思っています」
「…あー、それなら、障子に穴が空くことはなさそうですね。節分の趣旨からズレますけど」
「いいんですよ。どうせ、何かにかこつけてあのひとたちは騒ぎたいだけなんですから」
本田さんの言うことはもっともと言うか、多分、そうなんだろうなと思う。
「でも、皆さんに箸は大変じゃないですか?」
「正月の時にこのことは早々に申し渡してありますから、練習はなさってるんじゃないですかねぇ。それに皆さん、箸使いはそこそこお上手ですよ。アルフレッドさんは握り箸ですけどね。…本当は恵方巻きの早食い大会にしようかと思ってたんですけど、ルートヴィッヒさんに喉に詰まらせたら大変だと却下されてしまいましたよ」
心なしか物凄い残念そうに本田さんが言った。
「…恵方巻きの早食いですか。確かに喉に詰まりそうかも…」
そうならなくて良かったと心の中でムキムキさんに感謝しておく。…この日のうさぎさんは本田さんの不要な怒りを買いたくないからか、いつもの喧騒ぷりは形を潜め終始大人しかった。





 んで、節分の日がやって来た。