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For the future !

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二年目八月下旬 帰国




オーストラリアから日本へのフライト。
凛は通路側の席で機内で放映されている番組を視聴していた。
ふと、何気なく、隣の窓側の席にいる遙のほうを見た。
その遙の頭が凛のほうにある。
まぶたが閉じられている。
眠っているようだ。
凛は眼を細めた。
英語の勉強のために、機内放送の洋画を字幕なしで、遙に見させていた。映像でストーリーがなんとなくわかるだろうし、英語を聞き取ろうとするだろうと思ったからだ。
しかし、遙は眠ってしまった。
まったくコイツは……。
凛は眉を鋭くする。
遙を起こそうかと思った。
だが、やめておく。
いま遙が眠っているのが寝不足のせいなら、その原因に心あたりがあった。自分のせい、だ。夜、ついつい盛りあがってしまって、早寝の習慣のある遙をかなり遅くまで付き合わせてしまった。
それに、すぐそばにある寝顔が、こう思うのはものすごく恥ずかしいのだが思ってしまうものはどうしようもない、たいへん可愛らしいので。
凛はしばらく遙の寝顔を眺めたあと、まえの座席のほうに眼をやり、そして、視線を感じた。
まえの座席の日本代表としては先輩になる男の選手が、凛のほうを見ていた。
ニヤニヤしている。
凛は不機嫌な表情を向けた。
「なんっスか?」
「いやー、微笑ましいなって」
先輩は眠っている遙を見て、それからまた凛を見た。
はァッ!?
そう声を荒げそうになって、凛は思いとどまる。
大きな声をあげると遙を起こしてしまいそうだから。
凛はムスッとした表情で口を引き結んだ。
先輩は凛が言い返さなかった理由を察した様子で、ますますニヤニヤした。

それからしばらくして、凛も眠った。
その凛の頭は自然に遙のほうへとかたむいた。
身を寄せ合うようにして眠るふたりの光景を、凛のまえの座席の先輩は撮影した。
そして、その画像をツイッターに掲載した。
そのツイートは、リツイートが一万を超えた。




成田空港に到着したのは、夜遅い時間だった。
それでも、空港には多くの報道陣やファンが集まっていた。
彼らが待っているところまで行くまえに大勢のひとたちが来ていることは聞かされていたが、実際にそこまで行くと、その多さと熱気に驚かされた。
その驚きを、凛も遙も顔には出さないようにする。
凛と遙はやたらとカメラを向けられ撮影され、その名を呼ばれる。
なんだか妙な気がした。
遙は無表情で歩きながらボソッと言う。
「まるで珍獣扱いだな」
「たしかにそんな感じだな。でも、なんで俺たちが珍獣扱いなんだ……?」
考え始めた凛のまわりの選手たちは軽く吹き出した。
ふたりとも自分たちが大人気になっているのに気づいていない。それどころか珍獣扱いされていると思っている。それが、おかしいのだ。おもしろいので、だれも訂正せずにいる。
少しして凛が思いつく。
「わかった。ハル、おまえのせいだ。おまえが壮行会で変な言動したからだ」
「それなら、凛、おまえのせいだ。おまえが早脱ぎ対決したせいだろう」
「あれは、おまえが俺を挑発したからじゃねぇか」
「俺のせいじゃない。おまえのせいだ」
「いーや、おまえのせいだ」
言い争いを始めたふたりのまわりで、日本代表選手たちはこみあげてくる笑いをかみ殺していた。




ひさしぶりの東京の遙の部屋。
今は、深夜だ。
凛は居間で荷物をおろすと、その場に無造作に腰をおろした。
つられたように、遙が凛の向かいに座った。
それを見て、凛は移動する。
遙の隣へと。
しばらくの沈黙のあと、凛は口を開く。
「やっと帰ってきたって感じだな」
「……そうだな」
遙は同意し、その表情が少しやわらいだ。






作品名:For the future ! 作家名:hujio