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For the future !

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二年目九月上旬 日本学生選手権水泳競技大会(インカレ)前



夜、遙は大学の合宿棟にいた。
パンパシフィック選手権が終わってゴールドコーストから日本に帰国し、東京で借りている部屋で過ごしたのはつかのまのことで、今は日本学生選手権水泳競技大会に向けて合宿中だ。
日本学生選手権水泳競技会は、Inter College Swimming Championshipsを略してインカレと呼ばれることの多い大会で、個人戦ではなく各大学の団体戦である。
今年の会場は横浜国際プールで、競技日程三日間、男女個人十三種目、リレー三種目が行われ、予選・B決勝・決勝のうちB決勝と決勝で順位ごとにポイントが割り振られ、その合計ポイントで総合順位が決まる。
合計ポイント上位八大学がシード校となり、シード校のみ学生の応援席がプールサイドに与えられ、スタート台側から男子昨年一位、女子昨年一位という順に八位まで並ぶ。
各大学が威信をかけて戦う団体戦であり、日本一を目指して、各チームはしのぎを削る。
遙は昨年の一年生のときと二年連続で出場選手に選ばれた。
個人種目ごとに各大学からエントリーできる人数は限られているので、その少ない枠を遙が得たぶん、試合に出場できない者が、先輩であっても、この大会で多くが引退する四年生であっても、出るわけだが、出場しない者たちは応援に力を出し尽くす。この応援が出場選手の最後のひと踏ん張りに影響して好記録につながるとも言われている。
インカレはそういった熱い大会なのだ。
遙は帰国して、アジア大会の宣伝の意味もあってマスメディアからの取材を受けたりテレビ出演したりしたあと、大学の水泳部の合宿に合流し、パンパシフィック選手権で金メダルを獲得したことを盛大に祝われた。
息つく暇もないようなスケジュールだ。
しかし、それはインカレに参加する学生だけではない。
ワールドカップに出場する選手たちは、ゴールドコーストから成田空港に帰国後すぐに中東の国カタールの首都ドーハへと旅立った。ワールドカップのドーハ大会は八月末頃に二日間の日程で行われたが、九月初めにはドバイ大会がやはり二日間の日程で行われた。
それらの大会に出場しない選手たちは、アジア大会に向けて国立スポーツ科学センターでしっかり練習している。
さらに、インカレの翌日から静岡でアジア大会代表選手の合宿が行われる予定だ。
その合宿のあとは、静岡から東京にいったんもどってきて一泊し、翌日には今回のアジア大会の開催地である韓国の仁川へ旅立ち、同日に選手村に入村する流れとなっている。
だが、今は、眼のまえにある大会に集中しなければいけない。
インカレに向けた今日の練習は終わった。夕食も済ませたし、あとは寝るぐらいなのだが、寝るには少し早い時刻なので、水泳部員たちは仲の良い者と話をしたりふざけあったりしている。
遙は話の輪に加わらず、寝起きしている部屋で自分の荷物のまえに座って明日の準備などをしていた。
ふと、大学の水泳部のユニフォームであるジャージのポケットが振動する。
携帯電話が鳴っている。
遙はポケットから携帯電話を取りだした。
着信の相手の名前は、松岡凛。
凛はインカレには出ない。ゴールドコーストから帰国後は、遙の借りている東京の部屋から国立スポーツ科学センターに通って練習したりしている。
つまり、遙とは別行動している。
遙は電話に出る。
「はい」
いつもの感情のこもらない声。
『よお』
少し明るい凛の声。
その声を聞くと、なんだか妙にくすぐったいような気分になった。そんなことを一切顔には出さないが。
遙がインカレに向けて大学の合宿に参加してから、凛には会っていない。
でも、ほぼ毎日、携帯電話でやりとりしている。
凛が電話をかけてくる。
だから、それがわかっているから、携帯電話を持ち歩く習慣のない遙がジャージのポケットに入れていたのだ。
俺かけるから、ちゃんと持っとけ、なんか緊急事態とか起きたら連絡取れないと困るだろ、と凛に言われていたし。
それでも、合宿に参加したばかりのころは、カバンに入れっぱなしにしていて、着信にあとで気づいて、留守番電話から凛に携帯持ち歩けって言っただろと低い声で文句を言われた。そのあと電話でも文句を言われた。
何度も文句を言われるのは、面倒くさい。だから、だ。それ以外の意味はない。
ちなみに、まわりにいる者たちは素知らぬ顔をして話を続けたりしているが、いつものラブコールがかかってきたと思っている。もちろん、遙はそれに気づいていない。
『調子はどうだ?』
「特に問題ない」
『そォか』
いつもと代わり映えにしないやりとり。
しかし、どうしてだろう、ちょっと胸が温かい。
それを声に出さないようにして、遙は問いかける。
「そっちはどうだ?」
『ああ、まぁ、調子はいいかな』
少し歯切れの悪い返事。いつもと違って。
「なにかあったのか?」
『いや。それより、おまえ、もう寝るのか?』
「ああ」
いきなり凛が話題を変えてきたのに一瞬戸惑ったが、遙は肯定する。
『じゃあ、このあと寝る以外になんかしなきゃならねぇことがあるってワケじゃねぇよな?』
「ああ」
『じゃあ、外に出てこられねぇか?』
え、と遙は思った。
凛が続ける。
『今、おまえの大学の近くまで来てる』
「それを早く言え」
つい強い調子で言いつつ、遙は立ち上がり、部屋の外へと歩き出した。


作品名:For the future ! 作家名:hujio