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モータープール

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三.



 イシルドゥアの死から八年が過ぎた。
 新国王・ヴァランディルの即位式に参列した後、裏庭の回廊を歩いていたエルロンドに声をかけた者があった。
 聞き覚えのある声に振り向くと、そこには先程まで神妙な面持ちで儀式に望んでいたヴァランディルが立っていた。正装のままで息を切らせている姿に、エルロンドは呆れて肩を竦めた。
「一国の主となった者が、いつまでも子供のように走ったりするものではないぞ。せめて着替えくらいは済ませてきなさい」
「す、すみませんすみません」
 イシルドゥアの息子ではあるが、性格はアナリオンの方に似ている気がする。末息子だからだろうか。
 ヴァランディルはシャツの内側から紙包みを取り出すと、まだ小言を続けそうなエルロンドの手にそれを握らせた。
「なんだ、これは?」
「父からです。中身は私も存じませんが、私が成人した折に、エルロンド様にお返しするようにと。それと」
 飾り鎖のついた鍵を一つ。
「これも貴方にと父が残したものです、北の塔の鍵。行ってやって下さいませんか」
 言葉を残した男は、既にこの世にはない。断る理由もないので、エルロンドは静かに頷いた。
「…まだ、父を憎んでおいでですか」
 エルロンドは答えなかった。すると、ヴァランディルは軽い息を洩らし、
「それはよかった」
 と言った。不審の目を向けたエルロンドに、彼はただ微笑むだけで、あとは父に聞いて下さい、そう言うように、かつて城を訪れた時にエルロンドにあてがわれていた北の塔を指した。

作品名:モータープール 作家名:gen